罪と罰と幸せと 鹿猫
ハリーはずっと考えていた。
あの感覚…スネイプに抱き締められたときに感じた懐かしさ。心臓の音。自分と同じだと感じたのは気のせいだとは思えない。もしかしたらスネイプが父親なのかもしれない。
目の色は緑だ。母親がリリーでスネイプが父親…。
ーいや、僕のこの顔は父さん…つまりジェームズ・ポッターに生き写しだ…。やっぱり父さんはジェームズで母さんはリリー?…違う…父さんはジェームズ…母さんは…
ハリーは辿り着いた自分の結論に首を振り、笑った。
ーそんなことありえない。スネイプは男だ。それに父さんとスネイプはお互いに憎み合っていたってみんな言ってる…
「ハリー?」
ハーマイオニーの声に我に返った。
「…うん。僕と同じ心臓の音をした人がいたんだ…」
それだけしか言えなかった。
もしかしたらスネイプが母だなどという答えはあまりに酔狂すぎる。
ハリーは努めてそれを忘れようとした。そして、様々な出来事がそれを可能にした。ハリーはそのことをほとんどの時間忘れていった。
数年後、憂いの篩で二人の姿を見るまでは。
セブルスはひどい吐き気と闘っていた。
「セブ…大丈夫?」
ジェームズがセブルスの背をさする。
「最悪だ…これじゃあ何も手につかない…くそッ」
妊婦にも関わらず、全く色気のない悪態をついている。ジェームズはくすくす笑った。セブルスが恨めしそうに顔を上げ、睨みつけた。
「セブ…もう少しおとなしくなるかと思ったけど…っていうか何も手を付けなくていいよ。今は休んで」
「そうは…ッ…いかない。本も読みたいし…実験したいことも…」
「僕は君と愛し合いたい」
「死ね」
ジェームズはセブルスを抱き上げるとベッドにそっと横たえた。
セブルスが溜息をついて額に手を当てた。
「だるい…ジェームズ…リリーはどうしてる?」
セブルスは眠気が訪れながらも自分を見下ろしている男を見た。
卒業後、ジェームズはセブルスと契りを結んだ。