罪と罰と幸せと 鹿猫
ー僕の身体にジェームズの子が??
セブルスは両手で顔を覆い、その場に膝をついた。
「セブ…」
ジェームズが扉に立っていた。
いつものハチたちは繁殖のためにいなくなっている。
荒れた雑木林のような温室の中心辺りにセブルスはうずくまっていた。
かける言葉も見つからず、ジェームズはその背中を黙って見つめた。
沈黙を破ったのはセブルスの静かな声だった。
「何を引き換えにした?」
「…え?」
ジェームズは固まった。
「答えろ…何を引き換えにした?」
セブルスがゆっくり立ち上がった。ジェームズは下を向いている。
「何も…引き換えにはしていないよ…セブルス」
ジェームズは弱々しく呟いた。
「嘘をつくな…ジェームズ、これは大罪だ。自然への冒涜だ。大窃盗だ…それを得るのに何も失わずにいられるわけがない。貴様がダンブルドアからその方法を聞き出した事ぐらい予想はつく。答えろ、何を引き換えにした?」
ジェームズは目を閉じた。
「言えない…」
「ジェームズ!」
セブルスはジェームズに掴みかかった。
「まさか自分の命じゃないだろうな!ジェームズ!」
セブルスの目から涙が溢れ零れ落ちた。ジェームズは黙ったままだった。
「答えろ…ジェームズ…」
セブルスは泣いていた。
「嫌だぞ…ジェームズ…そんなのは…嫌だ…」
「セブ…泣かないで…」
ジェームズは自分の胸にすがりつくセブルスの震える肩を抱き締めた。
「大丈夫…大丈夫だから…僕は死なないから…セブ…」
ジェームズは泣きじゃくる細い身体を抱き締め、その背中をさすっては優しく叩いた。
「ごめんね…セブ…いつも勝手で…」
ジェームズの腕の中でセブルスが頷く。
「世界をさ…敵に回さないといけなくなるって言われたよ…僕たちは真直ぐに生きる人たちから疎まれる。澄んだ正しい者たちから糾弾される。数多き人々から光を奪われる。僕たちは嘲笑され、祝福ではなく呪いを受ける。当然の報いとして…」
「かまわない」
「僕たちは世界から馬鹿者扱いされる。それだけの罪を犯す。たくさんの人たちを…」
「かまわない」