罪と罰と幸せと 鹿猫
「セブルス顔色悪いよ」
リーマスがセブルスの顔を覗き込んだ。
「ああ…」
セブルスはめまいを抑えるように目を閉じた。
「眠いんだ…」
グラグラする頭を支えるように机に肘を付き、額を押さえた。
その時、温かい手が肩に回され誘導されるように隣の身体にもたれた。
「大丈夫…?」
ジェームズの声が聞こえる。セブルスはそのまま目を閉じた。
素直にジェームズに寄りかかる様子に、シリウスとリーマスが目を丸くした。
セブルスの体調の変化は明らかだった。
まず食欲がなくなった。紅茶しか受け付けない。そして毎日身体が鉛のように重く、階段を上るだけで疲れを感じた。
ジェームズはその変化を心配よりも、口元をほころばせて見ていた。
「ジェームズ…僕に何をした?」
人気のないテラスでスコーンを紅茶で無理やり喉に流し込みながら、セブルスはジェームズを睨みつけた。
体調の悪さを嬉しそうに見ている事実が、ジェームズを犯人だと証明していた。
「うん…そうだね…セブルス、じゃあ…選んで。遠回しに言うか、ストレートに言うか」
ジェームズは急にかしこまってセブルスの言葉を待った。
「…?僕は回りくどいのは嫌いだ。はっきり言え」
「分かった」
ジェームズはタオルを用意した。
「セブルス、君は妊娠している」
「ぶッ!!!」
セブルスが紅茶を噴き出した。
ジェームズが用意したタオルを差し出した。
「ゲホッゲホッ…ジェ…ムズ…貴様今何と?」
「だから君は妊娠してる。僕の子を身ごもっている」
「僕がか!?」
「うん、そう。セブルス・スネイプ、僕の恋人、僕と愛し合う運命の人。君の身体に僕と君の子供が宿っている」
セブルスは椅子を倒して立ち上がった。その目は驚きに見開かれ、震える手が口元を押さえた。それは吐き気ではなく、心臓が飛び出すのではないかというほどの驚きのせいだった。
「セブ…」
ジェームズが不安そうに真っ青な顔を見上げた。
セブルスは開いた本も荷物もそのままに、テラスを飛び出した。
「セブルス!!」
ジェームズが急いで立ち上がり、その後を追った。
北側の温室にセブルスは駆け込んだ。
走っただけで足がフラフラする。