罪と罰と幸せと 鹿猫
「…そうだ」
セブルスは大きく息を吐き、壁に背中を預けた。
ハリーが膝をついたまま這っていき、その胸に耳を押し当てた。
「…この音だ…」
ハリーは目を閉じた。
「…ああ」
セブルスはそっとハリーの頭を撫でた。その目は天井に設置されたちいさな明かり窓を写していた。埃にまみれ、青い空がくすんで見える。
「すまない…」
セブルスがぽつりと呟いた。
「…やっぱり後悔しているんですか…?僕のこと…」
「…違う…お前と一緒にいられなかったことだ。育てることができなかった。一緒に生きられなかった。ジェームズとリリーも…。一緒に死ぬこともできなかった」
「一緒に生きられなかった…」
セブルスはハリーの頭を撫でた。
「一緒に死ぬこともできなかった…」
遠い空を見つめた。
ハリーは涙が溢れた。
「僕がここにいます」
声が震える。
「僕はあなたの子だ…。そして父さんとリリーとあなたの愛を受けた子だ…。僕は幸せです。だから…」
ハリーは顔を上げ、立て膝をつくとセブルスの頭を抱いた。
セブルスはハリーの胸に顔を埋め、背中に腕を回し強く抱き締めた。
「お母様~♪」
「来るなポッター!!何だその呼び方は!」
ハリーは勢いよくセブルスに抱きついた。
「は~な~せ~!放さんか!」
セブルスが逃げようとして歩き出す。ハリーがそのままずるずると引きずられている。
周囲の生徒たちは、ハリーが新たなスネイプ攻撃を開始したと思った。
「ママ~ン!」
「先生と呼べ!ハリー・ポッター!」
「はい!マイマザー」
「……」
ージェームズ、やはり貴様の子だな…
セブルスは教科書でハリーの頭を叩きながら微笑んだ。