罪と罰と幸せと 鹿猫
ハリーはスネイプの手首を掴み、杖を取り出せないようにした。
スネイプはほぼ同じ背丈になったハリーを冷たい目で見下ろしている。
「僕はあなたの子だ」
「手を離せ…グリフィンドール10点減点…」
「ロンから聞きました。そういう魔法があることを、憂いの篩で、あなたと父さんが恋人同士だったことも知りました」
「馬鹿も休み休み言え、グリフィンドール…」
「何点でも減点すればいい。寮の得点なんてなくなればいい。教えてください、僕を産んだのはあなたでしょう?」
スネイプが目を逸らした。
「貴様はリリー・エバンズの子供だ」
「ロンが言ってた。この魔法はかけた人間が非業の死を遂げ、かけられた者も周囲の人も不幸にするって…それで父さんは死んだんだ…子供も親から引き離されるって…」
「そんな魔法は存在しない!」
「アーサー・ウィーズリーも知っていた。存在します!だから僕は生まれた。だから父さんは…父さんは死んだんだ…!父さんは馬鹿だ!僕を生むために馬鹿なことをしたんだ!あなたを不幸にし、自分も死んで…!僕なんか生まれなければよかった!!」
スネイプがハリーの頬を打った。
「馬鹿者!何ということを…!ジェームズをそんな風に言うな!」
スネイプの目に光が宿り、涙が零れ落ちた。
「どんな想いでお前を…私たちがどんな想いでお前を生んだと思っているんだ!」
握った拳が震えた。
そして、ハリーの強い眼差しに我に返り、息を飲んだ。
ーやられた…。
スネイプはその場に力なく崩れた。
水を打ったような沈黙が流れた。
その緩やかな波紋に乗るように、ハリーが静かに言葉を紡いだ。
「…ひどいこと言ってごめんなさい…やっぱり僕を産んだのはあなたですね…“セブルス”…」
ハリーはうなだれたセブルスの側に膝をついた。