罪と罰と幸せと 鹿猫
「うん、心配はいらない。大丈夫だよ…卒業前に何日も何日も話し合った。それで僕は今ここにいる」
「そうか…」
「リリーも君を愛してる。だから僕の我侭を聞いてくれた。ところで君の身体、女にはならないんだね」
沈みそうな雰囲気を切り替えるように、ジェームズはセブルスの胸を触った。
セブルスはその気遣いを傷つけぬよう、胸に当てられた手を掴んだ。
「女になったらお前に犯される」
「…つまんない」
本当につまらなそうなジェームズを見ながらセブルスが笑う。
ジェームズはセブルスの体を押し、壁際に寄せると自分はベッドの縁側に横になった。
「ね、もう少し君の体が落ち着いたら、あの二人にも言うべきかな…」
ジェームズが呟いた。
「そうだな…」
セブルスは目を閉じながら考えた。
たった一つ、リーマスのことだけが心配だった。きっとリーマスも同じことを願っているに違いない。
セブルスはホグワーツにある自分専用の薬品棚を思い浮かべながら、眠りに落ちていった。
セブルスの体調の悪さは二ヶ月ほども続き、ようやく落ち着いたのは初冬に差しかかった頃だった。
「ジェームズ…遅くないか?」
不安そうにまだ少しも膨らまない腹を見つめてセブルスは呟いた。
「うん…時間はかかるんだ…もしかしたら普通の倍くらい」
「何だと!?」
「そんなに早く会いたいの?」
「そ…そうではないが…いや、それもあるが、いろいろと不便だ…」
「大丈夫!君は元々体が細いし、服だっていつも長いローブを着ているじゃないか」
「そういう問題なのか…?」
「ほらまたすぐ心配する」
ジェームズはダイニングの椅子に座ったまま、その膝の上にセブルスを座らせた。そのまま肩甲骨と肩甲骨の間に耳を当て、セブルスの鼓動を聞き、手の平を下腹部に当てた。
「ジェームズ…」
セブルスが俯いた。
「知ってる?子供は小さな小さな種子のような時から、人の形になってこの世に出るまで全て記憶しているんだって。全て…。ただみんな忘れちゃうんだけどね…だから心配したり、不安になっちゃダメだよ…」