罪と罰と幸せと 鹿猫


卒業前。

ジェームズは自ら毒を飲み、ダンブルドアに対峙していた。
一時間程でそれは体内を破壊する。

「そこまでするとはのう…」

ダンブルドアは全く動じた素振りを見せていない。

「ええ、どうやらあなたを動かすには、このくらいしないといけないみたいでね」

ジェームズは挑発的に微笑んだ。
ダンブルドアの杖が空を切った。
ジェームズが校長室の床に打ち倒れた。

「軽々と命を弄ぶでない」

「僕は本気だ。運命の女神に会わせてください」

「会ってどうする?」

「暗殺します」

ダンブルドアは笑った。

「ダンブルドア…あなたは僕に女性と結婚し、家庭を築けとおっしゃいましたね?それは要するに子をもうければいいってことですよね?だったら、僕はセブルスと子をもうけます。あなたは知っているはずだ、それを可能にする方法を」

ジェームズは立ち上がり、毒が回り始めた体を支えるように近くの壁に手を付いた。
肖像画となった歴代校長達が息をのんでその場を見ているのがわかった。ダンブルドアはジェームズの目をじっと見ていた。

「子が欲しいなって言われたんですよ…」

ジェームズが呟いた。

「寝言だったんですけどね…言われたんですよ…。ダンブルドア、人が人に出会い恋に落ち、それが叶い愛し合う。これってどのくらいの確率だと思いますか?人が人に出会って愛し合い、魂が一つになる。これって奇跡だと思いませんか?ダンブルドア、僕はその奇跡をやっと手に入れたんです。それだけでどんな運命にも打ち勝てる自信がついたんです。ここまできたなら僕はこの先に進む。それだけです」

校長室は暑くはなかったが、青ざめたジェームズの額から汗が一筋流れた。

ダンブルドアは知っていた。
たとえジェームズがこの場に倒れたとしても、世界を救うと予言された子はもう一人いることを。そしてその親となる生徒達が順調に子をもうけるということを。
けれども…。
目の前に苦し気に胸を押さえ、かろうじて立っている男がいる。
あれだけの毒を飲み、立っていられるはずはないというのに、その目は自信に満ち揺るぎない光を放っている。
ダンブルドアはついに表情を緩め、微笑んだ。

「解毒剤を飲むがよい、ジェームズ・ポッターよ」
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