リディクラス⁉ 全員
セブルスは扉に寄り掛かり、今にも崩れそうにシリウスを見つめている。
その目は切なげに潤み、時折コホコホと咳き込む仕草をする。
唇を妖しく開き、ゆっくりとシリウスに歩み寄りながら両腕を伸ばした。
「わああああ!」
シリウスが叫びながら飛びのいた。
「…シリウス~」
リーマスはその様子を額に青筋を浮かべながら見ている。ジェームズがニヤニヤしながら、壮絶に色っぽいセブルスに迫られる姿を眺めていた。
シリウスは杖を握り締めた。
「リ、リ…リーマス!!」
「リディクラスだよ!シリウス!!」
「リーマス!助けてくれ!!」
ふらりと寄ってくるセブルスと距離を取りながら、抱きつかれないようじりじりと下がりリーマスに助けを求めた。
リーマスは不機嫌な顔でそっぽを向いた。
シリウスはセブルスをじっと見つめながら、わけの分からないことをブツブツ呟き出した。
「…克己心だ…シリウス…己に打ち勝つんだ…」
セブルスがついにシリウスの首に両腕を絡めた。
「ひいいいい」
シリウスが固まった。
しなやかな腕が首に絡み付く。黒髪が頬を擦り、鼻をくすぐった。
耳に濡れた唇が触れ、息を吹きかけられる。
そのままゆっくりと正面に顔を向け、狼狽し腕を宙にさまよわせているシリウスの顔を見上げた。
セブルスはその瞳を覗き込み、目を細めるとふわりと笑った。
その瞬間、シリウスの中で何かが音を立てて崩れた。
宙をさまよっていた腕が、ガバッとセブルスの身体を抱き締めた。
「克己心はどうしたー!!!」
リーマスがシリウスの後ろ頭を思い切りはたいた。