あなたとサラダ 鹿猫、犬狼
二人がテーブルについた時、ガシャーンという派手な音が聞こえた。
セブルスが音のした方の壁を見ると、壁に大きな耳が付いていた。
「ジェームズ何だあれは?」
セブルスはジェームズにフォークとナイフを渡しながら聞いた。
「盗聴器」
ジェームズは平然と答えた。セブルスはひと抱えもありそうな巨大な耳を呆れたように眺めた。
「盗聴器はもっとこそこそするものじゃないのか…?」
ジェームズは笑った。
隣に住んでいるシリウスとリーマスのやりとりが耳から聞こえてきた。
「リーマス!!何なんだこの飯は!!つーか飯はどこだ!!」
「ここにあるじゃないか!」
「どこにデザートバイキングみたいなテーブルで飯を食うやつがいるんだ!!」
「僕たち」
「あのなリーマス、飯といったら肉だろ?パンだろ?しかもこのチョコレート!高いやつだろ!?聞いたことあるぞこのブランド!!」
「家計はまかせるって言ったじゃないかシリウス!」
「ああ言ったさ!おかげで俺は貴重な土日を潰して牧羊犬のアルバイトだ!朝から晩まで羊のケツを追い回してるんだぞ!!俺が何て呼ばれてるか知ってるか!!世界一賢いワンちゃんだ!!」
「だから僕も働くって言ったじゃないか!」
「いいや!お前はダメだ!働きに行ってみろ、変なヤツがお前を誘うに決まってる!」
ジェームズがグラスを持ったまま肩を震わせて笑っている。
セブルスも笑いをこらえながら、チキンを切り分けていた。
「せめて野菜はないのかリーマス!」
「ここにあるよ」
「なんでトマトが黒いんだー!!」
「チョコレートソースをかけてあるから」
「なんでトマトにチョコレートソースをかけるんだ!トマトをソースにしろ!そして肉を出せ!!あ!リーマスどこ行くんだ!」
「実家に帰る!」
「何だと!」
「僕がこんなにシリウスのためを思って毎日がんばっているのに、ひどいやッ!!」
「ちょっと待て!この料理のどこが俺のためなんだ!?」
「シリウスのバカ!!」
「何だと~!!」
「出ていくから!」
「ああ!勝手にしろ!」
隣からドアを閉める音が聞こえた。しかしすぐドアを開ける音がした。
「何だよリーマス」
「…靴」
「……」
「シリウスのバカー!!」
ドアの閉まる音が聞こえた。ジェームズとセブルスは顔を見合わせた。
その瞬間背後のドアが開いてリーマスが飛び込んできた。