あなたとサラダ 鹿猫、犬狼
セブルスは玄関の方へ歩いて行ったが、出迎えるのも気恥ずかしく思い、すぐに引き返そうとした。
突然前から抱き締められた。
思わずジェームズの腕の中で驚いて大声を上げる。心臓が止まるのではないかと思った。
「ただいまハニ~♪僕を出迎えてくれるつもりだったんだね?」
ジェームズが嬉しそうにセブルスに頬をすり寄せた。
「ポッター!!玄関から入ってこい!!僕を殺す気か!?」
セブルスが叫んだ。驚きのあまり、呼び方も口調も学生時代に戻っている。ジェームズはおかしくてくすくす笑った。
「こうして姿現わししないと体がなまっちゃうんだよ」
そう言うとセブルスの顔を見下ろし、愛しそうに微笑んだ。
「ただいまセブルス」
「……」
セブルスが顔を赤くした。そして小さな声で「おかえり」と言った。
ジェームズは自然な動きでセブルスに口付けた。
「ね、ね、今日は何?」
ジェームズは子供のようにそわそわしながら、セブルスの周りをうろついている。セブルスはうっとおしそうに横目でジェームズを睨みつけた。
「鳥だ」
セブルスが素っ気なく言った。
バットに漬け込まれた鳥肉を見つめながら、フライパンを火にかけた。
油が敷かれ、パチパチという音をジェームズは面白そうに覗き込んでいる。
セブルスはジェームズに近づかれ、鼓動が早くなるのを抑えながら言った。
「ジェームズ、邪魔だ…テーブルでワインでも開けて待っていろ」
ジェームズはおとなしくテーブルに向かうと、杖でワインの栓をトカゲに変えた。
頭を突っ込んだ状態のトカゲは懸命に頭を抜こうとしている。ポンとよい音がして頭が外れると、トカゲは元のコルクに戻った。
「セブルスも飲む?」
ジェームズがセブルスの背後で言った。
「ああ、注いで置いといてくれ」
ジェームズがセブルスの肩を叩いた。振り向くとグラスを持っている。ジェームズはグラスを仰いでワインを口に含むと、セブルスの顎を持ち上げた。
口付けながら、ワインを流し込む。
唇を離すと、ジェームズはわざと逃げるようにテーブルに戻った。
「…馬鹿者」
セブルスが頬を染めた。