黒い花 猫と鳥


「あなたにも別れが?」

セブルスは素直に尋ねていた。
ダンブルドアは微笑んだ。そして恥じらうようにうつむくと、セブルスの足に包帯を巻きながら、遠い記憶を見つめた。

「ああ、ワシは最も愛した者を失った…それもこの手で…」

ダンブルドアはそこまで言うと、巻き付けていた包帯を切った。
セブルスはその後を待ったが、いきなり傷のある足を叩かれた。

「痛ッ…!!」

眉間に皺を寄せてダンブルドアを睨み付けた。

ダンブルドアはにこにこしながら立ち上がった。

「じゃから、ワシにもその痛みは…同じものではないにしろ、分かるんじゃよ」

優しく言いながら、机の引き出しに薬品瓶の入った箱をしまった。
セブルスは破れたズボンの裾に杖を当て、呪文を唱えて直すと、立ち上がった。

「…ありがとうございました」

セブルスはダンブルドアに一礼すると、扉に向かった。

「セブルス」

ダンブルドアは机の前に立って、セブルスに静かな声で呼び掛けた。
セブルスが振り向いた。

「ジェームズは君を守ったんじゃ。ジェームズのもう一つの運命は…そばにいるものが命を落とすというものだった。じゃからジェームズは…」

セブルスは哀しげに微笑んで言った。

「同じことです…」

「彼のいない世界に何の喜びもありません」


ダンブルドアは頷いたのか溜息をついたのか分からないような仕草をしたあと、いつもの調子で言った。

「セブルス、その目は慎んだほうがよい。妙な気を起こさせる」

セブルスは不意を突かれてきょとんとした目でダンブルドアを見た。

ダンブルドアがくすりと笑った。

「…くそジジイ」

セブルスは少し顔を赤らめ、扉を閉めた。
ダンブルドアは懐かしそうに微笑んだ。



「セブルス…ワシらは失うものが大きすぎた。…ワシらでこの時代を終わらせよう…」

ダンブルドアはセブルスが去った後の扉を見つめながら、呟いた。







end.
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