黒い花 猫と鳥


「また派手にやられたのう」

ダンブルドアはセブルスを椅子に座らせ、スツールに傷ついた足を乗せさせると、自分も椅子に座り傷をしげしげと眺めた。

三頭犬の存在は極秘の為、ポンフリーに頼むこともできない。
それでなくても、セブルスは一人で治療するつもりだった。しかし、足を引きずるセブルスをダンブルドアは目ざとく見つけ、校長室へ連れて行った。

「うむ、骨は大丈夫みたいじゃが、肉がの…」

ダンブルドアは飄々といいながら、薬品瓶から液体を垂らした。
痛みが少しずつ消えてゆく。
セブルスは無言でその様子を眺めていた。

「セブルス」

ダンブルドアは真面目な声色で言った。

「君は死に急いでいるように見えるが、いかに?」

セブルスは何も答えなかった。
ダンブルドアはそれを肯定の意味でとらえた。

「セブルス、君に危険な任務ばかりを任せる身でこんなことを言えた義理じゃないんじゃがの、もう少し自分の命を大事に考えてはくれんかの…?君が死んだら、ワシはジェームズに恨まれてしまうじゃろう…」

ダンブルドアはジェームズの言葉を思い出していた。

ー…ダンブルドア、僕に何かあったらセブルスを頼みます。
どうか守ってください。
彼がいつも笑っていられるように…


ダンブルドアは自嘲げに微笑んだ。

「そうでなくとも、もう恨まれておるのう」

セブルスはジェームズの名を聞いて、うつむいた。

「あなたには分かりません」

責めるように言った。


ー最愛の人を亡くす苦しみを。
…自分よりも大切な人がいなくなる痛みを…ー


ダンブルドアは目を上げずに弱々しく呟いた。

「ワシにも分かる…」

セブルスはダンブルドアを見たが、その青い目はセブルスの傷を映すだけだった。
「遠い昔の話じゃがな…」

ダンブルドアは珍しく心を開いたような優しい口調だった。

「ワシにも分かるんじゃよ、セブルス」

一瞬だけ目を上げた。

セブルスは心臓を鷲掴みにされた気がした。

その目は憂いに満ち、明るく人々から親しまれているはずの青が凍ってしまったような、褪せたアイスブルーの寂しさと美しさを漂わせていた。
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