終わらない歌 鹿猫
「お前は…どこにでも現われるんだな…」
ジェームズの胸からくぐもった声が聞こえた。
「うん…」
ジェームズは優しく耳元で囁き、セブルスの顔を見ようと、両手で頬を包みこみ、黒髪をそっと掻き上げて黒曜石のような瞳を見つめた。
「僕はどこにでも現われるよ。君が泣いていたら受け止めるために。君が笑っていたら一緒に笑うために。君が寂しがっていたら君を抱き締めに。セブルス、僕は君を連れ出すよ。君を一人にさせやしない」
その時、朝日が二人を照らした。
「ジェームズ…」
「ああ…」
「きれいだ…」
セブルスはこんなに綺麗なものを見たことがなかった。こんなに温かな胸を感じたことはなかった。
ジェームズの匂い、体温、存在そのもの。
セブルスはジェームズの胸に頬を寄せて、昇る朝日を見つめた。
ジェームズもセブルスの肩を抱いて、光を見つめた。
「ジェームズ…」
「…ん…?」
「ありがとう…」
「セブ…僕も、ありがとう……一緒にいようね…」
「ああ…」
「ずっと…」
セブルスが顔を上げた。瞳はまだ濡れていたが、その表情は朝日に照らされ、晴れ晴れとしていた。
ジェームズは幸せそうに微笑んで、ゆっくり顔を近付けた。
ー僕たちの夏休みは始まったばかりだ。
end.
題名:ブルーハーツの歌より
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