終わらない歌 鹿猫
「きっ貴様は人のプライバシーを考えないのか!?なんという悪趣味!節操のない!!」
早足で、ジェームズの前を歩いた。
「いや…だから、ごめん…」
ジェームズが慌てて追いかける。
セブルスは今まで我慢してきたジェームズへの憤りで、ムキになって歩いた。
「セブルス!」
ジェームズが切迫した声で呼び掛けた。
セブルスの足が止まった。
「どうして…」
セブルスが振り返らずに呟いた。
眼下に青白い砂浜と、水平線の広がる海がよく見えた。
「セブ…」
「どうして会いに来なかった…?」
セブルスは水平線と広い海に圧倒されながら、声が震えていた。
ジェームズは後ろからそっとセブルスを抱き締めた。
「…うん…ごめんセブ…会いたかった…寂しい思いをさせてごめん…。君の、毎日を、家庭を見てみたかったんだ…君は夏休み前、浮かない顔をしてたから…」
ジェームズが静かに呟いた。
セブルスは細く長いため息をついた。
ー…ずっと一人だと思っていた。それをこいつは、共有しようとしていたのか…ー
「なぜ…今日来たんだ…?」
ぽつりと呟いた。
ジェームズの抱き締める腕に力がこもった。
「うん…それはホントに愛かな…胸騒ぎがしたんだ。君が毎日、つらい日々を送っていたのは手紙からでも分かってた。君はいつもたいてい死ねとか去ねとか馬鹿でしょ?」
くすりと笑う。
「…でも、最近文が多かった。まるで…助けを求めてるみたいで…」
セブルスは何もかも見抜かれていた悔しさのような、愛しさのようなものが込み上げてきた。自分がただ待っていたことがひどく悔しく思えた。
振り返り、ジェームズの顔を見ずにその胸に顔を埋め、抱き締めた。顔を見たら、自分が泣いていることが分かってしまう。
ジェームズは、セブルスの頭に自分の頬をすり寄せるようにして抱き締め返した。