このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

終わらない歌 鹿猫


二人は走った。
息を切らし、その姿が見えなくなるまで走った。
角を曲がり、足を止めて塀に寄りかかり、息を整えてまた走った。

「ジェームズッ!…どこまで…行くんだッ!?」

セブルスが叫んだ。

「海ッ!!…昼になればシリウスと、リーマスが迎えに来る!」

ジェームズは楽しそうにセブルスと並んだ。

誰もいない大通りに出ると、二人は足を緩めた。

奇妙な可笑しさが込み上げてきて、どちらともなく笑っていた。
セブルスが体を折って笑っている。ジェームズも座り込むと通りの真ん中に仰向けに寝転がり、大声で笑った。

「…はあッはあッ…セブ…海どっち?」

「はあッ…あ、あっちだ…」

二人は顔を見合わせてまた笑った。

「行こう!!」

「ああ!」

セブルスはジェームズに手を伸ばして起こした。

夜明け前の冷えた空気が気持ちよかった。



「ジェームズ、なぜ分かった…?」

セブルスは並んで歩きながら、今までのいきさつを思い返していた。

なぜ会いに来なかったのか、なぜ絶妙なタイミングで現われたのか。疑問は次から次へと浮かんでくる。

「うん、君への愛さ」

ジェームズはゆるやかなカーブを描く道路を、歩きながら言った。
はぐらかされたのを感じたセブルスはジェームズを睨みつけた。

周りの空気は夜明け前の青に染まっている。
ジェームズは鼻のわきをポリポリ掻いた。

「ごめん…実は君をずっと見てた。これでね」

ジェームズはシャツの中から、鎖を引っ張り出すと、そこにぶらさがっている小さな眼鏡レンズ大の鏡を見せた。

「さすがに僕も超能力者じゃないからさ…これはジェームズJrの鏡とつながっていて、君の元へ手紙を届けさせるたびに、君の様子を写して、それを見てた…」

ジェームズは決まり悪そうに言った。

セブルスは低い声で聞いた。
「まさか…声も?」

「…うん」

ジェームズは完全に縮こまっている。

セブルスはジェームズJrに話しかけた内容を思い出し、恥ずかしさで顔が赤くなった。
6/8ページ