終わらない歌 鹿猫
二人は走った。
息を切らし、その姿が見えなくなるまで走った。
角を曲がり、足を止めて塀に寄りかかり、息を整えてまた走った。
「ジェームズッ!…どこまで…行くんだッ!?」
セブルスが叫んだ。
「海ッ!!…昼になればシリウスと、リーマスが迎えに来る!」
ジェームズは楽しそうにセブルスと並んだ。
誰もいない大通りに出ると、二人は足を緩めた。
奇妙な可笑しさが込み上げてきて、どちらともなく笑っていた。
セブルスが体を折って笑っている。ジェームズも座り込むと通りの真ん中に仰向けに寝転がり、大声で笑った。
「…はあッはあッ…セブ…海どっち?」
「はあッ…あ、あっちだ…」
二人は顔を見合わせてまた笑った。
「行こう!!」
「ああ!」
セブルスはジェームズに手を伸ばして起こした。
夜明け前の冷えた空気が気持ちよかった。
「ジェームズ、なぜ分かった…?」
セブルスは並んで歩きながら、今までのいきさつを思い返していた。
なぜ会いに来なかったのか、なぜ絶妙なタイミングで現われたのか。疑問は次から次へと浮かんでくる。
「うん、君への愛さ」
ジェームズはゆるやかなカーブを描く道路を、歩きながら言った。
はぐらかされたのを感じたセブルスはジェームズを睨みつけた。
周りの空気は夜明け前の青に染まっている。
ジェームズは鼻のわきをポリポリ掻いた。
「ごめん…実は君をずっと見てた。これでね」
ジェームズはシャツの中から、鎖を引っ張り出すと、そこにぶらさがっている小さな眼鏡レンズ大の鏡を見せた。
「さすがに僕も超能力者じゃないからさ…これはジェームズJrの鏡とつながっていて、君の元へ手紙を届けさせるたびに、君の様子を写して、それを見てた…」
ジェームズは決まり悪そうに言った。
セブルスは低い声で聞いた。
「まさか…声も?」
「…うん」
ジェームズは完全に縮こまっている。
セブルスはジェームズJrに話しかけた内容を思い出し、恥ずかしさで顔が赤くなった。