終わらない歌 鹿猫
「あの…すいません“偶然”ドアを開けたらぶつかってしまいました」
ジェームズは優等生らしい困惑した表情をしていたが、セブルスはその頬が笑いをこらえている時の引きつり方をしていることに気が付いていた。
フクロウが助かったとばかりにジェームズの元へ飛んで行き、その肩にとまった。
「…あ、あなた…」
アイリーンが声を出した。
「ええ、毎日ふくろう便をお出ししてしまって、ご迷惑をおかけしました。僕はジェームズ・ポッターです、初めまして。セブルスの恋…大親友です」
ジェームズは一気に言うと、愛想よく微笑んだ。
「…そう」
アイリーンが勢いに押されて頷いた。
「あの、お父様大丈夫ですか?」
ジェームズがさも心配そうに、うつぶせに倒れているトビアスを見下ろした。
「大丈夫よ」
アイリーンが確認もせず即答した。
「そうですか、よかった」
ジェームズがにっこり笑う。
セブルスは嬉しさと、ジェームズのやりとりの可笑しさと、今まで寂しかった分の悔しさとで訳が分からなくなっていた。
「…ジェームズ、何しに来た?」
セブルスがぼんやりした表情で話しかけた。
「ひどいなセブルス、約束したじゃないか?今夜迎えに行くって」
ジェームズが口をとがらせた。
アイリーンが振り返り、セブルスを見た。
「ああ、お母様、すいません。明日だったみたいです。きっと今夜あたりセブルスからお話があったはずなんですが…気が急いてしまって…」
ジェームズが大げさに嘆いた。
「あの…ジェームズ…」
セブルスはジェームズと母を交互に見やって戸惑った。
「君が選ぶんだ、セブルス」
ジェームズは真顔になってセブルスに言った。