終わらない歌 鹿猫
セブルスは部屋へ戻ると、窓を思い切り閉めた。そして、家中を早足で歩き回るとそこら中の窓を閉めて回った。
涙が溢れる。
ー…聞いておけばよかった。あいつの住んでいる場所を…会いに来ると言ってもう10日以上だ…僕は何を待っているんだろう。ここは僕の家、僕しかいない世界だ、僕しか知らない世界だ。ジェームズはきっといつものメンバーと楽しんでいるに違いない。…僕は独りだ…ー
涙が止まらなかった。
セブルスは唇を噛んで、自分の部屋に戻ると、震えるため息をついて、部屋の真ん中に立っていた。
どのくらい時間が経ったのか、辺りはすっかり暗くなっていた。
時間を見ることもせず、セブルスは無気力にベッドに横たわっていた。
その時、階下から母の悲鳴が聞こえた。いつもとは違うその声に飛び起き、階段を下りた。
トビアスが火掻き棒を振り回してフクロウを追い掛け回している。
すでに何回か擦ったらしく、部屋には羽根が飛び散っていた。
セブルスは迷わずトビアスの腕を押さえ込んだ。
「放せっ!この!悪魔!!」
トビアスが怒鳴った。
その言葉を聞いてアイリーンが激怒して叫んだ。
「人でなし!!自分の子供になんてことを!」
セブルスはトビアスに振りほどかれ、壁に体を打ち付けた。
「フンッ!!どうせこんな手紙を出す輩だ!こいつの飼い主だって、ろくでなしの悪魔なんだろうよッ!!」
トビアスがフクロウを睨み、怒鳴りながら嘲笑った。
ジェームズのことを罵られ、セブルスの中で何かが弾けた。
杖を取り出し、それを父トビアスに向けた。
「ダメだ!セブルス!」
どこからかジェームズの声がした。
セブルスの動きが一瞬止まった。
その瞬間ドアが勢いよく開き、ちょうど良い具合にドアに背を向けて立っていたトビアスの後頭部を直撃した。
トビアスがばったり倒れた。
セブルスとアイリーンが呆気にとられてトビアスを見下ろした。一瞬にしてその場が静まり返った。
「ジェームズ!!」
ドアの向こうにジェームズが立っていた。
夏休みにもかかわらず、シャツにズボンという制服姿をしている。ただネクタイだけがなかった。
「こんばんは」
ジェームズが、驚いて固まっているセブルスの母親に行儀よくお辞儀した。
「…こんばんは」
セブルスの母アイリーンはつられて頭を下げた。