終わらない歌 鹿猫
夏の夜は短い。
静けさもまた短い。
太陽が眩しく外を照らしているのを気配で感じながら、セブルスはいつフクロウが来てもいいように、カーテンを閉めたまま窓を開けた。
カーテンが風であおられるたび、明るさが部屋に忍び込んだが、セブルスには忌々しく見えるだけだった。
今日もまた父が怒鳴っている。
よく毎日毎日、怒鳴る内容があるものだとセブルスは感心さえ覚えるが、きっと自分のせいなのだという確信もあった。
「セブルス、今日もあのバカ鳥は来るのか?」
昼の憂欝なテーブルでトビアスが切り出した。アイリーンがトビアスを上目遣いで睨んだ。
セブルスは曖昧な返事をした。
「答えろ!!」
トビアスが癇癪を起こした。
「…来ます」
来て欲しかった。せめて会えないなら、フクロウでもいい。会いたかった。
「フンッ!」
トビアスは憎々しげに窓を見た。
「今度こそ、とっ捕まえてやる」
「あなた、あなたじゃ俊敏なフクロウは捕まえられなくってよ」
アイリーンが馬鹿にしたように呟いた。
「何だと?」
トビアスが低く唸った。
ァイリーンは笑った。
「魔法使いの使者が愚鈍なマグルなんかに捕まらないって言っているのよ!」
アイリーンはセブルスの入学騒動以来、すっかり開き直ったらしい。あんなに縮こまっていた姿が、今では対等に喧嘩するまでになった。
セブルスは二人のやりとりにうんざりして、席を立つと階段を上った。
背後でまた食器の割れる音がした。
ー…出て行きたい。父の声も、母の声も、最後には泣く姿を僕は見たくない。父の罵る声を聞きたくはない。早く、早くどこかへ…ジェームズのところへ…でもなぜだ?なぜジェームズは会いに来ない?…僕は何を待っているんだろう…こんなところに閉じこもって…ー