僕らの王様ゲーム戦争 鹿猫、犬狼
「すごいゲームがあるんだ!!」
ジェームズはドアを開けるなり叫ぶと、談話室に飛び込んできた。
息を切らし、両腕でジタバタしているセブルスを押さえるように引きずっている。
「ポッター!!放せ!!僕は寮へ帰るんだ!」
セブルスが必死にジェームズの背側にあるドアに手を伸ばした。
「帰るの?帰るなら今ここでおやすみの長~いキスをしないとね」
ジェームズは大きな声で言った。
談話室で就寝前のひとときを楽しんでいた生徒たちが一斉に立ち上がり、逃げるように自室へと向かって行った。
セブルスは唸りながら、ずるずるとジェームズに引っ張られてシリウスとリーマス、ピーターの元へ歩いて行った。
シリウスたちは三人でトランプの最中だった。
「何だよジェームズ、ゲームって?」
シリウスがジェームズを見上げた。
ジェームズは二人掛けソファーにセブルスを座らせると、腰に手を回して隣に座った。
「王様ゲームだ」
ジェームズが三人を見回して囁いた。談話室にはすでに誰もいないにもかかわらず、ジェームズは秘密情報を漏らすように声のトーンを落としている。
三人は顔を見合わせた。
セブルスが真っ青になってソファから立ち上がった。
シリウスが面白そうにセブルスのローブを乱暴に引っ張り、ジェームズの隣に座らせた。セブルスが逃げるようなゲームなら面白い。
「何だよそれ」
シリウスが聞いた。
シリウスもジェームズも両親が魔法使いのため、マグルの文化には疎かった。リーマス、ピーターも多くの友人を持つわけではなく、やはり知らないようだ。セブルスは幼馴染のリリーから聞いていた。
ジェームズが再びセブルスに手を回して説明に入った。
「うん。王様ゲームっていうのはね、あ、このトランプで代用しよう。このキングがそのまま王様。他に〈1〉〈2〉〈3〉〈4〉このキング合わせた5枚のカードを裏にして、みんな一枚ずつ引く。引いたら見せない。キングを引いた人が王様になって「王様だあれだ」の掛け声で名乗り出るんだ。王様はそこから命令を一つ出せる。ただし、誰かにではなくて、たとえば2番が3番に土下座しろ、とかね。2番を引いた人は3番の人に土下座しなくちゃいけないんだ。何度も言うようだけど、王様は絶対だから拒否はNGだよ」
ジェームズはそこまで言うと、反応を確かめるように三人の顔を見渡した。
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