拍手御礼集

鹿猫(甘切)







時折ジェームズは意味も分からず抱き締めてくる。
もちろんあいつの行動はいつだって意味が分からない。分かり過ぎるから分からない素振りを僕はする。




「ジェームズ…邪魔だ」

今日も本に没頭する僕の邪魔をするように、それでいて邪魔にならないよう配慮して背中から抱き締めてくる。

僕が抗議してもジェームズは黙っている。

こういうときは必ず何かあった時だと僕は知っている。

ジェームズは隠すことが下手だ。

本人は完璧なつもりなのだが、可哀相なことにそれらが滲み出てしまう。

ー「君の前だからだよ」

ルーピンはそう言うが、この馬鹿の全てにおける派手さを考えると、やはり誰が見ても分かるのではないかと思う。

「…ジェームズ、うっとおしい」

本当は何を考えているのか、何があったのか聞きたかった。

「…寒い」

「今日は暖かいぞ…」

「寒い…」

「外は春だ…」




「好きだよ…セブルス…」





だから嫌なんだ。

本の文字が分からなくなる。
特に今日みたいな“誘い”といった響きが全くない声が。

何かに怯え、不安そうな、すがるような声が。


だから僕は…。



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