拍手御礼集

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寒々とした月明かりの差し込む小さな部屋に逃げ込んだセブルスは、両手で顔を覆い泣き崩れていた。

ー…同じだ、あの日と全く同じだ。

“セブルス!マイハニ~!お誕生日おめでと~!!”
ジェームズが屋敷しもべ妖精を捕まえ、部屋を飾り付け、テーブルを料理でいっぱいにした。
リーマスの好みに彩られたケーキも…。
おそらく長年仕えている屋敷しもべ妖精の作ったものだろう…。


セブルスは涙が止まらなかった。
ずっと封印してきたジェームズとの思い出だった。
あれから自分の誕生日も、クリスマスも何もかも忘れてきた。記憶を閉ざし、閉心術の中で生きてきた。
それなのに…。


「先生…」

震える肩に手が伸ばされ、背中を辿り、そっと抱き締められた。

ハリーは気遣うように囁いた。

「厨房で屋敷しもべ妖精が言ってました。ずっと昔、父さんに同じ要求をされたって…。すいません…あなたの大切な思い出を…でも、僕…」

ハリーはセブルスの傍に膝をつき、漆黒の髪に頬を寄せた。

「みんなあなたをお祝いしたくて仕方ないんです。僕も…。ママ…?」



「…先生と呼べ」

くぐもった声が聞こえた。
ハリーはセブルスが応えてくれたことが嬉しくなった。

「ママン!マム!」

「先生だ…!」

セブルスはハリーの肩口に頭を付けた。

思い出が辛く悲しいものから、あたたかなものへと塗り重ねられてゆく。
ジェームズからハリーへ、愛しい者が目の前にいる。ルーピンの笑顔、シリウスが振っていた尻尾。

涙は悲しみから、あたたかい幸福に変わっていく。

“楽しいことはさ、一人より二人、もっともっとみんなで!”

ジェームズの声が聞こえた気がした。
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