拍手御礼集

鹿猫 お散歩


よく晴れた午後、ジェームズは今日もセブルスを探していた。
とはいっても、図書館か温室に行けば見つけることができる。

セブルスは図書館にいた。
陽の当たらない北側の机で、ぼんやりと空を見上げている。
憂鬱そうな顔…曇った漆黒の瞳。

「ふむ」

ジェームズはセブルスの目の前に勢いよく座った。
少し驚きつつも不機嫌な顔が自分を睨みつける。

「デートしよ?」

手を差し伸べる。

「あいにく今忙しいんだ」

溜息混じりの答えが返ってきた。

忙しいのに、憂鬱で何も進まない。進めなきゃいけないのに進まない。
白紙の羊皮紙をセブルスは見つめた。

「1時間付き合って」

「1時間もか!?」

「君は何時間そこにいたのさ?白紙の羊皮紙と」

ジェームズが強引にセブルスの手を引いた。

二人は何も持たず、ただ校庭を、森を、遊歩道を、湖の淵を歩いた。

二人は何もしゃべらなかった。
ジェームズが歌を口ずさんだ。

セブルスは訝しそうにジェームズを見上げた。
ジェームズは楽しそうな顔で、前を見つめたまま歩き続ける。
それはとても楽しそうで、幸せそうだった。
リズムよく、わざと髪の毛を揺らすように歩いている。

セブルスはその顔を見て、同じように前を見て歩いてみた。

自分の揺れる体が髪を揺らす。風を感じる。
背中が日差しを浴びてポカポカしている。
セブルスは楽しくなった。
隣にいるジェームズもきっと同じ顔をしているのだろう。

ジェームズはちらりとセブルスを見た。
黒髪をなびかせて、前を見つめている。自分の歌う歌に合わせて歩いている。
その顔は晴れ晴れとしていた。
とたんにジェームズは嬉しくなった。



その顔が見たかったんだ


想いが止まったら歩こう

体を無視しちゃいけない

心が止まってしまったら歩こう

体が教えてくれる

風が応えてくれる

顔を翳らす髪を払いのけてくれる

僕たちの体は生きることしか考えていない

だから、心が止まったら

体に教えてもらおう

さあ、歩こう!
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