想いを込めて
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3月14日、今日は世間でいうホワイトデーで、ちょうど1ヶ月前のバレンタインに多くの女の子が自分の想いと共にチョコレートを渡し、受け取った側がその返事とお返しを贈る、という日だ。今ではその文化も少しずつ薄れ友チョコや義理チョコといったものも含め新しい形のイベントになりつつあるが、それでもやはり一定数この《バレンタイン》というものに後押しされ想いを告げる子もいるのだろう、朝からソワソワと落ち着かない様子の女の子を何人か見た。かくいう私も、2月14日のバレンタインデーに大切な恋人へ想いを込めたチョコレートをあげた身であるため、今日は朝から落ち着かない気分でいる。なにしろ今日は私と、恋人である寿三郎にとって初めてのホワイトデーなのだ。もう既に恋人同士であるとはいえ、バレンタイン楽しみにしといてな、なんて大好きな彼に言われては期待してしまうのも仕方のないことだろう。
しかし約束の放課後、彼はなぜかすごく深刻な表情で黙ったままこちらを見つめている。
朝は、放課後楽しみにしといてな!と笑顔で言ってきたのに、この数時間で一体なにがあったのだろうか。
「その…今日ホワイトデーやろ?バレンタインのお返しなんやけど、、」
「…………」
やっと口を開いたかと思えばまたすぐに黙り込んでしまう。
何か言いたげなものの口を開かない彼に痺れを切らし、どうしたの?と尋ねれば彼は恐る恐るといった様子でこちらに視線を向ける。
「…っやっぱりあかん!」
するとまたすぐに逸らし、そのまましゃがみ込んでしまった。素直な性格の彼がここまで何かを言い淀むのも煮え切らない様子なのも初めてで、よっぽど深刻なことなのだろうと不安になる。お返しを家に忘れてきたのだろうか?いや、それくらいのことなら別に何も問題はない。この1ヶ月で私のことを好きじゃなくなってしまったとか、そんなことだったらどうしよう。でも朝はそんな様子じゃなかったな。なんて色々と悪い方向にばかり考えてしまう。しかし、いつまでもぐるぐると考えていたって仕方がない。それならそれで、ちゃんと彼の口から聞かなくては。
どんなことでも、頑張って受け止めよう。そう腹を括って彼に近づく。
ビクッと肩を揺らし不安げに眉を下げ、目を潤ませてこちらをみるじゅさがなんだか捨てられた子犬のようで愛おしくて仕方がない。彼の前にしゃがみこんで目線を合わせる。
「ねぇじゅさ、私は大丈夫だよ。じゅさが決めたことならなんでも受け止めるし、何があっても怒ったりしないよ。だから、教えて?」
出来る限り優しい声を心掛けて、ゆっくりと語りかければ、一度ぎゅっと固く結んだ後、こくりと頷き彼はようやく重い口を開いた。
しかし、彼から返ってきたのは思ってもみない答えだった。
「…あんな、俺、ほんまにそういうの疎くて、プレゼントの意味とかなんも調べんで、その…お返しにマシュマロ選んでもうたんよ。」
うん?彼は今なんて言った?マシュマロ?驚きで空いた口が塞がらない状態の私をみて怒っているとでも思ったのか、じゅさは続ける。
「そうやんな、やっぱ嫌やんな…。すまん、でもほんまに知らんかったんやで!?だだ、はなが好きそうなかわええマシュマロ見つけて、これなら喜んでくれるんちゃうかなって思っただけで、意味とかはなくて…」
だんだんと声が尻すぼみになりまた黙り込んでしまった彼を横目に頭を巡らす。
確かに、マシュマロを贈る意味は決して良いものではなく、それは私も知っているが、それにしても…
「…そんなこと?」
別れ話などではなく良かった、と安堵しつつも、思わず素っ頓狂な声をあげてしまえばじゅさはいやいや!と大きな声をあげる。
「そんなことちゃうやろ!俺、ついさっきそのこと知って、はなになんてもの渡そうとしとったんやってめっちゃ落ち込んだのに」
「ごめんね。でも私にとってじゅさから何を貰うか、は別に重要じゃないんだよ。」
確かに、彼からバレンタインの日に期待していてと言われて今日をずっと楽しみにしていた。でもそれは、何か高価なものや特別なもの、良いものが欲しいとかそんなことではもちろんなくて。ただ、彼が私だけのために、私のことだけを考えて贈り物を選んでくれる時間とか想いとか、そういったものが形に表れるからこそ価値のあるものになるのだ。そのもの自体に価値があるわけではない。
それを、じゅさにはどうしても分かって欲しい、と説明すれば彼は急に私の腰に腕を回してぎゅっと抱きしめてくる。
「っほんまに、はなには敵わへん。好きや…」
耳元で言われる好き、という言葉に胸がどきりと大きな音を立てたのに彼が気づいていませんように、と願いながら私も彼の背中に腕を回して抱きしめ返す。
暫くの間そうしていたが、でもやっぱり納得できへん!とじゅさが突如大きな声をあげてパッと離れた。
「来年はもっとちゃんと調べて、めっちゃええもん選ぶから。…でもそれやとその次からハードル上がってまうなぁ」
当たり前のように来年、そしてその先の話をする彼に胸がぎゅっと締め付けられる。彼の頭の中では、来年も再来年もその先もずっと、彼の隣には私がいるんだ。それが嬉しくて、愛おしくて。たまらなくなって衝動のままに彼に飛びつきその頬に口付ければ、彼は顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに笑って、そのまま唇にお返しをくれた。この時間が、この瞬間こそが1番の贈り物なんだよと、これから先一緒に過ごす長い長い時間の中で、いつか教えてあげようと心に誓った。
その後、実はマシュマロだと思っていた彼からの贈り物がギモーヴであったと分かるのはまた別のお話。
しかし約束の放課後、彼はなぜかすごく深刻な表情で黙ったままこちらを見つめている。
朝は、放課後楽しみにしといてな!と笑顔で言ってきたのに、この数時間で一体なにがあったのだろうか。
「その…今日ホワイトデーやろ?バレンタインのお返しなんやけど、、」
「…………」
やっと口を開いたかと思えばまたすぐに黙り込んでしまう。
何か言いたげなものの口を開かない彼に痺れを切らし、どうしたの?と尋ねれば彼は恐る恐るといった様子でこちらに視線を向ける。
「…っやっぱりあかん!」
するとまたすぐに逸らし、そのまましゃがみ込んでしまった。素直な性格の彼がここまで何かを言い淀むのも煮え切らない様子なのも初めてで、よっぽど深刻なことなのだろうと不安になる。お返しを家に忘れてきたのだろうか?いや、それくらいのことなら別に何も問題はない。この1ヶ月で私のことを好きじゃなくなってしまったとか、そんなことだったらどうしよう。でも朝はそんな様子じゃなかったな。なんて色々と悪い方向にばかり考えてしまう。しかし、いつまでもぐるぐると考えていたって仕方がない。それならそれで、ちゃんと彼の口から聞かなくては。
どんなことでも、頑張って受け止めよう。そう腹を括って彼に近づく。
ビクッと肩を揺らし不安げに眉を下げ、目を潤ませてこちらをみるじゅさがなんだか捨てられた子犬のようで愛おしくて仕方がない。彼の前にしゃがみこんで目線を合わせる。
「ねぇじゅさ、私は大丈夫だよ。じゅさが決めたことならなんでも受け止めるし、何があっても怒ったりしないよ。だから、教えて?」
出来る限り優しい声を心掛けて、ゆっくりと語りかければ、一度ぎゅっと固く結んだ後、こくりと頷き彼はようやく重い口を開いた。
しかし、彼から返ってきたのは思ってもみない答えだった。
「…あんな、俺、ほんまにそういうの疎くて、プレゼントの意味とかなんも調べんで、その…お返しにマシュマロ選んでもうたんよ。」
うん?彼は今なんて言った?マシュマロ?驚きで空いた口が塞がらない状態の私をみて怒っているとでも思ったのか、じゅさは続ける。
「そうやんな、やっぱ嫌やんな…。すまん、でもほんまに知らんかったんやで!?だだ、はなが好きそうなかわええマシュマロ見つけて、これなら喜んでくれるんちゃうかなって思っただけで、意味とかはなくて…」
だんだんと声が尻すぼみになりまた黙り込んでしまった彼を横目に頭を巡らす。
確かに、マシュマロを贈る意味は決して良いものではなく、それは私も知っているが、それにしても…
「…そんなこと?」
別れ話などではなく良かった、と安堵しつつも、思わず素っ頓狂な声をあげてしまえばじゅさはいやいや!と大きな声をあげる。
「そんなことちゃうやろ!俺、ついさっきそのこと知って、はなになんてもの渡そうとしとったんやってめっちゃ落ち込んだのに」
「ごめんね。でも私にとってじゅさから何を貰うか、は別に重要じゃないんだよ。」
確かに、彼からバレンタインの日に期待していてと言われて今日をずっと楽しみにしていた。でもそれは、何か高価なものや特別なもの、良いものが欲しいとかそんなことではもちろんなくて。ただ、彼が私だけのために、私のことだけを考えて贈り物を選んでくれる時間とか想いとか、そういったものが形に表れるからこそ価値のあるものになるのだ。そのもの自体に価値があるわけではない。
それを、じゅさにはどうしても分かって欲しい、と説明すれば彼は急に私の腰に腕を回してぎゅっと抱きしめてくる。
「っほんまに、はなには敵わへん。好きや…」
耳元で言われる好き、という言葉に胸がどきりと大きな音を立てたのに彼が気づいていませんように、と願いながら私も彼の背中に腕を回して抱きしめ返す。
暫くの間そうしていたが、でもやっぱり納得できへん!とじゅさが突如大きな声をあげてパッと離れた。
「来年はもっとちゃんと調べて、めっちゃええもん選ぶから。…でもそれやとその次からハードル上がってまうなぁ」
当たり前のように来年、そしてその先の話をする彼に胸がぎゅっと締め付けられる。彼の頭の中では、来年も再来年もその先もずっと、彼の隣には私がいるんだ。それが嬉しくて、愛おしくて。たまらなくなって衝動のままに彼に飛びつきその頬に口付ければ、彼は顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに笑って、そのまま唇にお返しをくれた。この時間が、この瞬間こそが1番の贈り物なんだよと、これから先一緒に過ごす長い長い時間の中で、いつか教えてあげようと心に誓った。
その後、実はマシュマロだと思っていた彼からの贈り物がギモーヴであったと分かるのはまた別のお話。
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