手放せないもの
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日は私の大好きな、大切な恋人である寿三郎の誕生日だ。2年前からお付き合いしている私たちなのでもちろん、去年も一昨年も彼の誕生日はお祝いしている。しかし、今年は今までと同じような祝い方はしたくない。というのも、私たちは今年から高校生になり、お金も時間も少しは自由に使えるようになった。更に、今年はじゅさがU-17の合宿に招集され世界大会でオーストラリアまで行っていたために長い期間会うこともできず、つい最近やっと帰ってきたところだ。それもあって、今年は誕生日のお祝いだけでなく労いの意味も込めて去年までよりも豪華なものにしたいのだ。
12時ぴったりに電話をして、お祝いの言葉と今日の昼頃うちに来て欲しいと言うことは伝えてある。家族には今日は夜まで出掛けておいてほしいと伝えてあるし、あとはじゅさが家に着く前に準備をするのみだ。まずは少しでもじゅさに可愛いと思ってもらえるように、買ったばかりの淡いピンクのニットワンピを着て少し化粧をし、身なりを整える。そして近くの美味しい洋菓子屋で注文していたケーキをとりに行き、部屋を風船などで少し飾り付けたらあとは食事の準備だ。豪華にするためにどこか美味しいお店を予約しようか、それとも出前を取ろうかと沢山悩んだが、彼が1番喜ぶのはやはり好物である親子丼と野菜天丼だろうと思ったので、結局その2つを自分で作ることにした。上手く作れるかは分からないが、愛情を込めて作ればきっと彼なら喜んでくれるだろう。食べ切れるようにそれぞれ一人前よりは少なめにして、親子丼と野菜天丼を母に教えてもらった通りに作る。お店のようにはいかないが、私にしては上出来だろう。ちょうど作り終わったところでチャイムが鳴った。エプロンを取るのも忘れて玄関へ向かいドアを開けると、そこには待ち望んでいた人がソワソワと落ち着きのない様子で立っていた。
「じゅさ!いらっしゃい。お誕生日おめでとう」
「おおきに、お邪魔します…って待って!?エプロン姿めっちゃかわええ〜っ!ていうかなんでエプロン!?もしかして何か作ってくれとんの!?」
矢継ぎ早に話すじゅさに思わず笑ってしまう。
「お昼ご飯作ってたの。美味しくできたかわからないけど、じゅさの好きな親子丼と野菜天丼どっちも作ったんだよ」
「っめっっちゃ嬉しい!はなが作ってくれたんやからそんなん美味しいに決まっとるやん、はよ食べよ!」
ここまで喜んでくれるとは、作った甲斐があるというものだ。楽しそうにはしゃぐじゅさを微笑ましく思いながら、先を歩く彼に着いて行った。
母と事前に練習した成果か、じゅさは終始おいしいおいしいと言って綺麗に完食してくれた。食後には先ほど取りに行ったケーキを出す。『寿三郎くん誕生日おめでとう』のプレートが乗ったケーキを見てじゅさは目を輝かせ、沢山写真を撮っていた。合宿で仲良くなった先輩たちに自慢するらしい。全部喜んでもらえたことに安心して、ケーキと一緒に飲むための紅茶を入れてまた席に着く。するとさっきまであんなにはしゃいでいたじゅさが俯いて急に静かになってしまった。
「じゅさ、どうしたの?…もしかして迷惑だった?」
1人で張り切りすぎてしまっただろうか、と不安になって尋ねると彼は勢いよく顔を上げた。
「そんなわけあらへん!ただ、こんなにしてもろて、めっさ嬉しいのに俺はなんも返せとらんなって思て。合宿もあって全然会えへんかったし、愛想尽かされてもしゃあないのにはなのこと絶対離してあげられん」
確かに、今までは彼が部活をサボっていたのもあっていつも一緒にいられたが、高校に上がって彼がテニスに本気で向き合い出してからはデートに行く機会などもかなり減った。私は彼の頑張っている姿を見られて嬉しいし、本気で応援しているのだが、じゅさはそれを思った以上に気にしているのかもしれない。それなら、私の想いを全部素直に伝えよう。彼がいつも私にそうしてくれるように。
「愛想尽かすなんてあり得ないし、私だってじゅさから離れる気なんてこれっぽっちもないよ!!もちろん寂しい時もあるけど、それよりも私はじゅさが頑張ってるところ見れてすごく嬉しいの。ただ、電話とか沢山しちゃうのは許して欲しいな、邪魔だったら無視してくれてもいいから」
「邪魔になんてなるわけないやん!合宿中もW杯の時も、はながメールとか電話で頑張れっていつも言ってくれたから頑張れとったんやで。ほんまはなんべんもサボりたい、やめたいって思ったしはなに会いに行きとうてしゃあなかったけど、はなが応援してくれとる、俺のこと見てくれとるんやって思たから乗り切れてん」
おおきに、と言うじゅさに笑顔が戻ったことに安心する。こうやって不安に思ったことを言い合えるのがどれだけ大切なことか。2人で顔を合わせて笑い合った後、合宿の時のことを聞かせてとせがむ私にじゅさは楽しそうに色んな話を聞かせてくれた。
準備していたことは一通り終わったが、そう言えばまだプレゼントを渡していない。話の途中にちょっと待っててとじゅさに伝えて自室に行き、ラッピングされた小さな袋を持ってリビングに戻って彼に手渡した。
「これ、誕生日プレゼント。開けてみて」
目を丸くして驚くじゅさが愛おしい。
「ここまでしてもろたのにまだあるん?」
「もちろん!それに、これは私へのプレゼントでもあるから」
私の言ったことに不思議そうに首を傾げながらも丁寧にラッピングを解いていくと、彼はまた驚きの声を上げた。
「えっ!ディ〇ニーのチケット!?」
「そう!久々のデートで一緒に行きたいなと思って。楽しみだね」
何よりも悩んだプレゼント。テニスのことは何もわからないし、身につけるものは彼の好みのものをあげられる自信もなかったので、最近デートに行けていなかったのもあり、何か2人で思い出を作れるようなものにしようと某遊園地のチケットにしたのだ。彼が思っていた通りの反応をしてくれたのが嬉しくて、悪戯が成功した時のようににっと笑ってみせると急に視界が真っ暗になる。次の瞬間大好き香りがして、じゅさに抱きしめられているのだと理解した。人よりも少し高い体温の、大きな体に包まれて安心する。そのまま身を委ねて彼の背中に腕を回すと、抱きしめる力が少し強まった。
「っおおきに、、ほんまに好きや。」
声が震えているのは気のせいだろうと気付かないふりをして、彼の腕から抜け出し顔を見上げる。
「私も大好きだよ。生まれてきてくれてありがとう。これからもずっと、1番にじゅさの誕生日を祝わせてね。」
瞳を潤ませながら、心底幸せそうに笑う目の前の彼を私はこれからも一生手放せないのだろう。
12時ぴったりに電話をして、お祝いの言葉と今日の昼頃うちに来て欲しいと言うことは伝えてある。家族には今日は夜まで出掛けておいてほしいと伝えてあるし、あとはじゅさが家に着く前に準備をするのみだ。まずは少しでもじゅさに可愛いと思ってもらえるように、買ったばかりの淡いピンクのニットワンピを着て少し化粧をし、身なりを整える。そして近くの美味しい洋菓子屋で注文していたケーキをとりに行き、部屋を風船などで少し飾り付けたらあとは食事の準備だ。豪華にするためにどこか美味しいお店を予約しようか、それとも出前を取ろうかと沢山悩んだが、彼が1番喜ぶのはやはり好物である親子丼と野菜天丼だろうと思ったので、結局その2つを自分で作ることにした。上手く作れるかは分からないが、愛情を込めて作ればきっと彼なら喜んでくれるだろう。食べ切れるようにそれぞれ一人前よりは少なめにして、親子丼と野菜天丼を母に教えてもらった通りに作る。お店のようにはいかないが、私にしては上出来だろう。ちょうど作り終わったところでチャイムが鳴った。エプロンを取るのも忘れて玄関へ向かいドアを開けると、そこには待ち望んでいた人がソワソワと落ち着きのない様子で立っていた。
「じゅさ!いらっしゃい。お誕生日おめでとう」
「おおきに、お邪魔します…って待って!?エプロン姿めっちゃかわええ〜っ!ていうかなんでエプロン!?もしかして何か作ってくれとんの!?」
矢継ぎ早に話すじゅさに思わず笑ってしまう。
「お昼ご飯作ってたの。美味しくできたかわからないけど、じゅさの好きな親子丼と野菜天丼どっちも作ったんだよ」
「っめっっちゃ嬉しい!はなが作ってくれたんやからそんなん美味しいに決まっとるやん、はよ食べよ!」
ここまで喜んでくれるとは、作った甲斐があるというものだ。楽しそうにはしゃぐじゅさを微笑ましく思いながら、先を歩く彼に着いて行った。
母と事前に練習した成果か、じゅさは終始おいしいおいしいと言って綺麗に完食してくれた。食後には先ほど取りに行ったケーキを出す。『寿三郎くん誕生日おめでとう』のプレートが乗ったケーキを見てじゅさは目を輝かせ、沢山写真を撮っていた。合宿で仲良くなった先輩たちに自慢するらしい。全部喜んでもらえたことに安心して、ケーキと一緒に飲むための紅茶を入れてまた席に着く。するとさっきまであんなにはしゃいでいたじゅさが俯いて急に静かになってしまった。
「じゅさ、どうしたの?…もしかして迷惑だった?」
1人で張り切りすぎてしまっただろうか、と不安になって尋ねると彼は勢いよく顔を上げた。
「そんなわけあらへん!ただ、こんなにしてもろて、めっさ嬉しいのに俺はなんも返せとらんなって思て。合宿もあって全然会えへんかったし、愛想尽かされてもしゃあないのにはなのこと絶対離してあげられん」
確かに、今までは彼が部活をサボっていたのもあっていつも一緒にいられたが、高校に上がって彼がテニスに本気で向き合い出してからはデートに行く機会などもかなり減った。私は彼の頑張っている姿を見られて嬉しいし、本気で応援しているのだが、じゅさはそれを思った以上に気にしているのかもしれない。それなら、私の想いを全部素直に伝えよう。彼がいつも私にそうしてくれるように。
「愛想尽かすなんてあり得ないし、私だってじゅさから離れる気なんてこれっぽっちもないよ!!もちろん寂しい時もあるけど、それよりも私はじゅさが頑張ってるところ見れてすごく嬉しいの。ただ、電話とか沢山しちゃうのは許して欲しいな、邪魔だったら無視してくれてもいいから」
「邪魔になんてなるわけないやん!合宿中もW杯の時も、はながメールとか電話で頑張れっていつも言ってくれたから頑張れとったんやで。ほんまはなんべんもサボりたい、やめたいって思ったしはなに会いに行きとうてしゃあなかったけど、はなが応援してくれとる、俺のこと見てくれとるんやって思たから乗り切れてん」
おおきに、と言うじゅさに笑顔が戻ったことに安心する。こうやって不安に思ったことを言い合えるのがどれだけ大切なことか。2人で顔を合わせて笑い合った後、合宿の時のことを聞かせてとせがむ私にじゅさは楽しそうに色んな話を聞かせてくれた。
準備していたことは一通り終わったが、そう言えばまだプレゼントを渡していない。話の途中にちょっと待っててとじゅさに伝えて自室に行き、ラッピングされた小さな袋を持ってリビングに戻って彼に手渡した。
「これ、誕生日プレゼント。開けてみて」
目を丸くして驚くじゅさが愛おしい。
「ここまでしてもろたのにまだあるん?」
「もちろん!それに、これは私へのプレゼントでもあるから」
私の言ったことに不思議そうに首を傾げながらも丁寧にラッピングを解いていくと、彼はまた驚きの声を上げた。
「えっ!ディ〇ニーのチケット!?」
「そう!久々のデートで一緒に行きたいなと思って。楽しみだね」
何よりも悩んだプレゼント。テニスのことは何もわからないし、身につけるものは彼の好みのものをあげられる自信もなかったので、最近デートに行けていなかったのもあり、何か2人で思い出を作れるようなものにしようと某遊園地のチケットにしたのだ。彼が思っていた通りの反応をしてくれたのが嬉しくて、悪戯が成功した時のようににっと笑ってみせると急に視界が真っ暗になる。次の瞬間大好き香りがして、じゅさに抱きしめられているのだと理解した。人よりも少し高い体温の、大きな体に包まれて安心する。そのまま身を委ねて彼の背中に腕を回すと、抱きしめる力が少し強まった。
「っおおきに、、ほんまに好きや。」
声が震えているのは気のせいだろうと気付かないふりをして、彼の腕から抜け出し顔を見上げる。
「私も大好きだよ。生まれてきてくれてありがとう。これからもずっと、1番にじゅさの誕生日を祝わせてね。」
瞳を潤ませながら、心底幸せそうに笑う目の前の彼を私はこれからも一生手放せないのだろう。
1/1ページ