口紅
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「あー⋯
64点?」
「ひっっく!!
普通気を使って高くつけない!?」
「はぁ!?お前が自分の格好に素直に点数つけろって言ったんだろーが!!」
「だとしてももうちょっと高くつけるでしょーが!!」
「残念だがこれが俺の素直な点数だ
ありがたーく受け取りな」
「こんのっ⋯ノンデリ男っ!!
そんなんだから千速ねぇに振られるんだよ!!」
「んなっ!?
ハギに告れねぇでモジモジしてるおめーに言われたくねぇわ!!」
「なぁんですってぇっ!?」
澄み渡る青空の中
私、八月一日桜とその幼なじみ松田陣平は
いつものように言い合いの喧嘩をしていた
それは4日前の事
「ねぇ、陣平」
「あ?何だよ?」
授業の間の休み時間
眠そうにノートを顔に乗せた陣平に声をかけると
陣平はチラリとノートを上げ私に視線を寄越した
「⋯あのさ、今度の日曜日空いてる?」
「日曜?別に何もねぇけど⋯」
「じゃあさ⋯
ちょっと付き合ってよ」
「ったく⋯
今度ハギをデートに誘いたいから
その前に予行練習させろって⋯
まずハギをデートに誘ってからにしろよ!!」
「それができないから困ってるんだよ!!」
グサリとくる言葉にわっと顔を覆えば
陣平からジトーっとした目で見られた
そう、私は小学生からの付き合い⋯所謂幼なじみの
萩原研二に片思いをしているのだ
きっかけはそう、小学4年生の夏
「やーいやーい!!来れるもんなら来てみろ!!」
「待てぇぇ!!このクソザルっ!!」
陣平のバカと喧嘩した私は陣平に散々煽られてムキになり
木の上に登った陣平を追いかけようとして木に登ろうとしたら
ズルッ
「ぁ⋯」
足を滑らせて木から落ちた
痛みを覚悟してギュッと目を閉じたけど
ふわりと誰かに優しく抱き抱えられ⋯
恐る恐る目を開ければそこにいたのは
研二だった
「ったく、桜は女の子なんだから⋯
そんな危なっかしい事すんなよな」
そう言って微笑みながら私の頭を撫でた研二に
私は恋に落ちた
そしてそれから月日は流れ
高校3年になっても
私は研二に告白できないでいた
「てかそもそも何で64点なのよ!?」
「はぁ?
そんなに知りたいなら教えてやるよ!!
先ずそのフリルの沢山付いたミニスカ!!
お前普段はロンスカとかジーパンとか綺麗め系の服着るくせに似合ってねぇんだよ!!」
グサッ
「そんで上のフリルのついたブラウスも然り
お前の雰囲気と全っ然合ってねぇし」
グサッ
「おまけに何だその化粧?
千速の真似かもしれねぇがその真っ赤な口紅合ってねぇって!!」
グサッ
「グッ⋯
自分で自覚していただけに尚更その指摘が刺さる⋯」
「へへっ3ノックダウン
俺のKO勝ちだな!」
「クソ腹立つなこいつ」
「つか、おめーそういう系統の服は苦手だって言ってたくせに
なんでんなもん着て来たんだよ」
「そ、それは⋯
よく研二と話してる同じクラスの男子が
『研二は可愛い系の子が好きなんだぜ』って言ってたから⋯」
近くにあったベンチに座りながらそう言うと
陣平は「ふーん⋯」と言いながら隣に座った
「⋯それ、誰から聞いた?」
「え?誰って⋯ほら、よく研二と話してる⋯えっと⋯
田中君と佐藤君だっけ?」
「あー⋯やっぱあの2人か⋯」
「え、やっぱって何?」
意味ありげな言葉に食いつくと
陣平は少しうっとおしそうに眉をひそめた
「⋯おめーは別に気にしなくていいんだよ」
「はぁ?何それっ
陣平が意味深な事言うからじゃんっ」
「つかそれより⋯
おめーの事だから化粧ポーチ持ってきてんだろ?
出せよ、口紅だけでも変えりゃ少しはマシになるだろーからな」
「おっ流石陣平ちゃ〜んっ
分かってんじゃ〜ん」
手先が器用な陣平に化粧をしてもらうと綺麗に仕上がるから
たまにこうやって頼んでるんだよね
陣平に化粧ポーチを渡せば慣れた手つきで中からリップを数個取り出し
リップの色味を見比べた後1つを手に取り蓋を開けるとリップブラシをそれにつけ
私の方を向いた
「おい、先につけてるやつとらねーとできねぇだろうが」
「あ、そうだった」
さすがにメイク落としは持ってないから⋯ティッシュでいっか
そう思い持っていたポケットティッシュで擦ろうとしたら
「だーっ!!待った待った!!」
陣平にガシリと手を掴まれた
「ティッシュで擦ったら赤くなるだろうが!!」
「え?そんな事ないよ?陣平が思ってるより私肌頑丈だから」
「ったく⋯このガサツ女は⋯」
「なんですって」
「いいからジッとしてろ」
陣平の言葉にカチンときそうになったけれど
大人になれ⋯と軽く深呼吸してジッとする
すると陣平はティッシュを持ち優しく私の唇を撫でた
「⋯ふふっ」
「⋯あんだよ」
「いや、ちょっとくすぐったくて」
「ったく⋯今から塗るから動くんじゃねーぞ」
陣平がグイッと顎を掴み
リップブラシを持って私の方をジッと見る
同じくジッとして陣平の顔を見つめた
⋯陣平、こうやって黙ってればイケメンなんだから⋯
ちょっとは物静かになればいいのに
そしたら千速ねぇも振り向くんじゃないのかな
「⋯お前何か今失礼な事考えてねぇか」
「えっ!?な、何でもないよ!?」
ジトーっと陣平から睨まれて
その視線から逃れる様に目を閉じる
「それより、早くしてよね」
「わぁってるって
今してっからジッとしてろ」
と陣平がそう言ったその時
「⋯なーにをしてんのかな?
陣平ちゃんに⋯桜ちゃん?」
研二の声が
背後から聞こえた
「!?け、研二っ!?」
パッと目を見開いて振り返れば
そこには穏やかに、ニコニコと微笑む研二がいて
「あ、えと、そのっ⋯こ、これは⋯」
まさか研二をデートに誘う前の予行練習
なんて言える訳がなくしどろもどろになっていると
「このバカ女がひでー面してたから化粧で手直ししてやってたんだよ」
と陣平が言った
「あんたねぇ!?ひでー面って何よ!?」
「ひでー面はひでー面だろ!?」
「はいはい喧嘩しない」
いつものように喧嘩する流れになろうとしたら
これまたいつものように研二が間に入って仲裁する
ガルガルッとお互い睨み合っていると
ふと研二が陣平の持っていたリップを手に取った
「これ、桜ちゃんの?」
「ああ、桜のやつ似合わねーくせに千速がよくつけてる真っ赤なリップ塗っててよ
似合ってねーからコレに塗り替えたんだよ」
「本当あんた一言余計だよね」
ギロッと陣平を睨むと
研二が私の方を振り返った
「あー⋯なるほどね
でも陣平ちゃん、これは俺の好みじゃねーかな」
「あん?ハギこれくらいの色の方が好きだろ?」
「まぁ確かにこれ系統の色は好きだけどちょっと色が濃いというか⋯
ああ、そうだ」
と研二がそこまで言った所で
グッと私へ顔を近づけたと思ったら
チゥッ
「⋯うん、丁度よくなったな」
そう言って、
私のリップの色がついた唇を微笑ませた
『口紅』
「あ、それから陣平ちゃん今度の学食奢りな」
「はぁ!?何で俺が」
「制服以外で桜の滅多に見れないミニスカを1番に見たのと
桜の唇に触れた罰って事で」
「ぐっ⋯ったく、そんなに大事ならさっさと告ったら良かったじゃねーか」
「まあまあ、桜が俺の事考えて悩んでる姿が可愛くってさぁ〜」
「⋯⋯俺も人の事言えねぇけど⋯
お前もいい性格してるよな⋯」
「陣平ちゃんが褒めてくれるなんて嬉しーっ」
「⋯⋯」
「あ、そうだ
桜に変なこと吹き込んだのってやっぱ田中と佐藤?」
「ああ、そうらしいぜ」
「やっぱそうか⋯あの2人桜の事狙ってたからなぁ〜⋯」
「⋯つか、そろそろソイツ、離してやれよ
⋯⋯気絶してるぞ」
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