8.5.声帯
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とある平日の午後3時
昴さんは朝から出かけていて
哀ちゃんは学校
暇を持て余していた私は博士と一緒にティータイムでもしようと
朝からチーズケーキ作りに取り組み
3時になった今、阿笠邸の扉をノックした
「博士ー!!こんにちは!!
3時のおやつにチーズケーキでも食べませんかー!?」
すると中からドタバタと音がした後
扉が開き阿笠博士が顔をだした
「おぉ!!桜くん!
今日は仕事は休みなのか?」
「はいっそれで阿笠博士と一緒にティータイムしたくて⋯
一緒にどうですか?」
チラリと箱に入ったチーズケーキを阿笠博士に見せると
たちまちその顔が輝いた
「おお!!美味しそうじゃの〜!!
ちょうど休憩したいと思ってた所なんじゃ!!」
「やった!お邪魔しま〜す」
博士に案内されて中に入り
カウンターにチーズケーキの入った箱を置けば
ふとローテブルの方に何かの道具が散らばっているのが見えた
「?博士、あれは⋯?」
「あぁ、新一から蝶ネクタイ型変声機の調子が変だと言われてな
今修理していた所なんじゃ」
「蝶ネクタイ型変声機⋯」
確かにテーブルの上には
いつもコナン君がつけている赤の蝶ネクタイが置かれていて
「お皿と⋯それから紅茶もいれるかの〜」
博士が食器を用意してくれている間に
そのテーブルに近づき蝶ネクタイ型変声機を手に取る
「⋯⋯博士ー!!これって修理終わってるんですかー!?」
「ん?ああ!!もう終わっとるよ!!」
「へー⋯」
蝶ネクタイをひっくり返してみれば
そこにはダイヤルが着いていて
カチリ、とスイッチを押して
口元に持っていき、小さく声を出してみる
『あー⋯ぬわっ!?』
すると変声機から発せられた声は小五郎さんの声だった
「す⋯凄い⋯」
今まで特に違和感なくコナン君が使う所見てたけど⋯
これって⋯めちゃくちゃ⋯凄い⋯
⋯っていうかこれがあれば⋯
ゴクリと喉を鳴らした後
食器を持ってきた博士に食い気味に詰め寄った
「は、博士!!これって新一君の声はどうやって出すんですか!?」
「え!?新一ならここをこうして⋯」
博士がダイヤルを何度かカチカチと合わせた後私に渡してくれて
それをさっきと同じく口元に持っていく
『は⋯博士⋯⋯おぉ!!新一君の声だ!!』
そうだ、これがあればっ⋯
私は素早くスマホを取り出すと録音ボタンを押した
「⋯桜くん?」
「ふぅ⋯」
軽く深呼吸をした後
蝶ネクタイ型変声機を使ってスマホに録音されるように口を開いた
『あかねは⋯俺の許嫁だ!!』
『かごめはおれと会うために生まれてきてくれたんだ』
『おれにはお前が必要だ⋯そんなこともわかんねぇのか』
『犬夜叉!おすわり!!』
「あ、これはかごめちゃんの台詞だ
つい流れで言っちゃた⋯
しかしこれ⋯
凄い!!楽しい!!」
「えっと⋯桜⋯くん⋯?」
博士の若干引いたような声を無視して
私はまた変声機に向かって声を出した
『男にゃあ⋯どうしても⋯戦いを避けちゃならねぇ時がある⋯
仲間の夢を笑われた時だ!!!!』
『私はLです』
『さぁ!!殺してみろ!!』
『まぁぁじょぉぉ子ぉぉさああああああああん!!』
「桜くん!?」
「え、どうしたんですか?博士、」
「い、いや···桜くんがついにおかしくなったのかと⋯」
「え、ついにってなんですかそれ
それよりも!!博士!!これ凄いですね!!
やっぱり博士って天才ですよ!!」
「え⋯そ、そうかの〜?
いやぁ〜桜くんは見る目があるのぉ〜」
「んでんで!!哀ちゃんの声はどうやってだすんですかっ!?」
「哀くんの声なら⋯⋯ほれ、これで出せるはずじゃ」
「わぁい!!ありがとうございますっ」
博士に変声機を調節してもらい
また私は声をその変声機に向かって出した
『命は捨てても⋯男を捨てる気はなかったわい!ぼけーー!!』
『ごめんなさい。こういう時どんな顔すればいいのか分からないの』
『なんだかんだと聞かれたら!!』
「⋯あ、これコジロウいないと掛け合いできないや⋯」
「⋯桜くん⋯さっきから一体何を⋯」
「え?あー⋯ちょっと私の青春のバイブルを録音したくて⋯」
「せ、青春⋯?」
「⋯⋯博士、ちなみに昴さんの声はどうやったらいいんですか!?」
「え、えっと⋯」
蝶ネクタイ型変声機を持って博士に目を見開きながら聞くと
博士はたじろぎながらも変声機を調節してくれた
『あー⋯おぉ⋯昴さんだ⋯』
こ、これがあれば⋯
私はゴクリと息を飲み
再度スマホの録音ボタンを押した
『安西先生⋯バスケが⋯したいです⋯』
『俺の生徒に手を出すな!!』
『越前、お前は青学の柱になれ』
『卍解、千本桜景厳』
この世界に来て聞くことができなかった台詞がこうも簡単に聞けることができ
自然と顔がにやける
「ふふ⋯うへへへへっ⋯」
「⋯⋯(桜くん怖い⋯)」
「あ⋯そういえば⋯」
元の世界で良く聞いてた⋯
昴さんの声の人の歌で⋯どうしても聞きたい歌がある
その歌は面白くて良く聞いてて⋯
今でも脳内再生は余裕だ
全部歌える自信がある
全部歌ってもいいけどさすがにアカペラは恥ずかしいよな⋯
けど、その歌の『一部分』なら全力で⋯
言える!!
「こんな台詞は絶っっ対、昴さんから聞けないもんね⋯
よーしっ!!」
もう一度録音ボタンをおして
大きく深呼吸した
ガチャ
「博士〜修理終わった⋯」
『イケメンビーーーム!!』
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「え、あの、コナン君、
なんで携帯出してるの
なんで無言でボタン押してるの
どこに電話かけてるのぉぉ!?」
「昴さんに」
「うぎゃああああああ!!やめて下さいいいいい!!」
入口で私に冷めた目を向けながら
電話をかけようとしていたコナン君にダッシュで駆け寄り
そのスマホをガシリと掴んで懇願する
「待って待って!!誤解!!誤解だから!!
決して悪い事に使おうとか思ってないから!!」
「⋯⋯」
「ぐぅっ⋯コナン君の視線が冷たいっ⋯」
「⋯博士、なんで桜さんにこれ渡したんだよ」
「いや修理の為に置いとったら
いつの間にか桜くんが手に取っててのお⋯
それで新一の声はどうやったらだせるのか聞かれて⋯」
「しゃらっぷ!!博士!!」
ぐるりと顔を後ろに向けて
博士に余計な事は言わせないとばかりに話に入り込むも
ばっちりコナン君に聞かれていたみたいで⋯
「俺の⋯声⋯?」
その声にゆっくりとコナン君の方を見れば
「え⋯⋯っと⋯」
「詳しく話してくれるよね⋯⋯
桜さん、」
ニッコリと笑うコナン君が居た
『あかねは⋯俺の許嫁だ!!』
『かごめはおれと会うために生まれてきてくれたんだ』
『おれにはお前が必要だ⋯そんなこともわかんねぇのか』
『男にゃあ⋯どうしても⋯戦いを避けちゃならねぇ時がある⋯
仲間の夢を笑われた時だ!!!!』
『私はLです』
『さぁ!!殺してみろ!!』
『まぁぁじょぉぉ子ぉぉさああああああああん!!』
「⋯⋯削除、」
「いやぁぁぁ!!やめてぇぇぇっ!!
聞く前に消さないって約束したじゃない!!」
「こんなもん消すに決まってんだろ!!
第一人の声で遊んでんじゃねぇよ!!」
「だって!だって!!私の青春のバイブルなんだもんっ!!」
「ば、バイブル⋯?」
「この世界に来てからずっっと聴けてなかったんだけど⋯
今日、やっと⋯夢が叶ったの⋯
だから消さないで下さいいい!!」
「⋯削除、」
「うわあああ!!」
私の悲痛な訴えも虚しく
コナン君は削除ボタンを押して録音した音声は消えてしまった
「うえええっ⋯本当に消したぁぁっ⋯」
「ったく俺の他に灰原や昴さんの声まで録音して⋯
こんなの録音してどーすんだよ」
「こんなのなんてとんでもない!!
名台詞だよ!!!?何度でも聞きたいに決まってんじゃん!!
ちなみに最後の昴さんの台詞は着信音にするつもりでした!!」
『イケメンビーーーム!!』
「⋯⋯それはやめてあげて⋯」
「え、だめ?」
「駄目、
⋯とにかく!!全部消すからなっ!!」
「えええええ!?」
「それとも2人にこの事教えてもいいんだぜ⋯?」
「それだけはやめて下さいお願いします」
それから悲しくもコナン君に全ての録音を消された後
長々とお説教をされ
夕方になりとぼとぼとと工藤邸に帰った
夜
「昴さーんお風呂空きましたよ〜」
お風呂から上がった後、リビングで本を読んでいた昴さんに声をかけると
「そうですか、では入ってきますね」
本を閉じて昴さんが立ち上がる
するとズボンのポケットから何かが落ちた
「あれ、昴さん何か落ちましたよ⋯?」
それは黒の手帳で
広い上げようとすると
何か、写真のようなものが手帳からはみ出していて
それが手帳からはらりと落ち
その写真が何か分かった瞬間
私の身体は石のように固まった
これは⋯
これはっ!!!?
バッとその写真を取るよりも早く
昴さんの手がその写真を広い上げて
そっと自身の胸ポケットへと写真を入れる
「⋯⋯」
「⋯⋯では、行ってきますね」
「待って待って待って!!」
そのままリビングを出て行こうとした昴さんの腕にしがみつき歩みを止めさせた
「なんで⋯
なんで昴さんが⋯
その写真を持ってるんですか⋯」
昴さんが持っていたのは⋯
元の世界で撮った
私のコスプレ写真
「ふむ⋯バレてしまっては仕方がありませんね⋯
実はコナン君から貰ったんですよ、これ」
スっと胸ポケットから写真を取り出した昴さん
それに飛びつこうとしたら腕を上に上げられ奪い取る事ができなくなった
「くっ⋯ってか⋯コナン君!?なんで!?」
「以前コナン君に桜さんと出会った時の事を聞いて⋯
その時に話に出た『写真』が気になって見せて貰ったんです
それで色々と交渉しまして⋯⋯ね?」
「ね?じゃないですよ!!ね?じゃ!!
交渉ってなんですかそれ!?何を交渉したんですか!?
てかなんでコナン君はそんなあっさり人に見せてんのよおおおお!!!!
昴さん!!今すぐその写真燃やして下さい!!」
「それはできませんね⋯
それに⋯お互い様⋯ですよね?
桜さん?」
「⋯⋯へ?」
写真を取るためジャンプを繰り返していた動きをピタリと止め
昴さんの顔を見る
すると昴さんはニッコリと笑った
⋯あ、その笑顔あの時のコナン君そっくりだ
「聞けば⋯桜さん、
この変声機のようなものを使って僕の声で遊んでいたとか⋯」
昴さんのその言葉にギクリと肩が跳ねた
「うわあああ!!!違う違う違うんです!!
遊んでなんかいません!!
てかコナン君昴さんに言わないって言ったのに!!
それよりも!!私はコナン君に録音全部消されたんですよ!?
こんなのフェアじゃありませんんんっ!!」
写真を取り返そうと昴さんの腕にしがみつき
ぐぐっと背伸びをしながらそう言うと
「⋯ふむ⋯それもそうですね⋯では⋯」
グッと昴さんに正面から抱きしめられ
私の耳元に昴さんの唇が近づく
「ぇ⋯⋯」
微かな息遣いを感じたと共に
ピッと機械音が聞こえて
「君が望むのなら⋯
可能な限り、こうやって囁いてやるさ」
私は腰が抜けて
その場にへたり込んでしまった
『声帯』
「哀くん、携帯が鳴っておるぞ」
「あぁ⋯ありがとう博士、」
「⋯⋯哀くん⋯その待ち受け画面⋯」
「あら、可愛いでしょ
桜さんのコスプレ写真」
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