7.友人
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「⋯ん⋯⋯ぁ⋯」
目を開けると
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯おはようございます、桜さん」
「⋯な!?すば!?うぇ!?」
昴さんの顔がすぐ近くにあり
思わず狼狽えて布団を顔まで被ってしまった
「すみません⋯驚かせてしまいましたね」
その声に恐る恐る布団から顔を出すと昴さんは優しく微笑み
私の頭を撫でてきた
「あ⋯いや⋯私こそすみません⋯」
その優しい手つきが何だか気恥ずかしくて
ゆっくりと身体を起こす
ふとカーテンの隙間から覗く窓の外を見るとまだ外は暗かった
「また昴さんが運んでくれたんですよね⋯毎度のことながらすみません⋯」
「僕がしたくてやっているだけですから気にしなくていいんですよ」
「⋯ありがとうございます⋯」
「それにしても⋯」
「へ⋯」
昴さんは両手で私の頬を包み込むと自分と私の目線を合わせた
その目は僅かに開かれていて
目を逸らす事ができずに見つめ返す
「⋯もう、目が覚めないかと思ったぞ」
「⋯え?」
その言葉に疑問を感じ目を丸くすると
昴さんは親指でするりと私の頬を撫でた
「⋯君は丸一日眠っていたんだ」
「⋯⋯え⋯⋯えええっ!?」
その言葉に驚いてスマホで日付を確認すれば
確かにキッドの件から1日経っていた
「な⋯なんで⋯
最近は魔法を使う事に慣れてきて眠る時間が短くなってきてたのに⋯」
「⋯何か心当たりは?」
「うーん⋯あ、でも⋯昨日いつもより多くカードを使ったんです
もしかしてそのせいかな⋯⋯ふぇ⋯くしゅん!」
少しだけ寒気を感じくしゃみをすると
昴さんが近くにあったティッシュと体温計を渡してくれた
「あ、ありがとうございます⋯
体温計⋯?」
「体温が少し高いようなので計って下さい
昨日誰かが桜さんを助けてくれてくれて公園のベンチに寝かせてくれたようですが⋯
そろそろ10月も終わろうとしている時期に公園のベンチは寒かったようですね⋯」
昴さんから体温計を受け取りながら
昨日1度目を覚ました事を思い出した
「あ⋯そういえばあの時私にかかっていたジャケット⋯」
「あぁ、あれならクローゼットにしまっていますよ
持ち主に心当たりでも?」
「はい⋯多分、ですけど⋯今度会った時に返そうと思います」
すると体温計が鳴り取り出して見ると37.4℃と表示されていた
「んー⋯微熱だけどこれぐらいならまだ大丈夫かな⋯
よかった、今日は休みだったけど明日は仕事だから⋯」
「駄目ですよ」
「⋯へ?」
昴さんは座っていた椅子から立ち上がると私から体温計を取り
表示を確認した後、私のベッドに腰掛けた
「昴さん⋯?」
「念の為明日は休んで下さい⋯いいですか?」
「え、いやでも⋯このぐらいなら全然平気で⋯」
全てを言い終わる前に両肩を昴さんに掴まれ
「え⋯」
ドサリ、と身体がベッドに沈んだ
「昴⋯さん⋯?」
「⋯心配させた罰だ、明日も休め」
「で、でも···」
「⋯行くと言うなら⋯
その口、塞いでしまうぞ」
「なっ⋯!?」
ズイっと昴さんの顔が近くなり
更に昴さんがゆっくりと顔を近づけてくる
「ちょ⋯昴さっ⋯」
両手で昴さんの肩を押して距離を離そうとするけどビクともしない
「あっ⋯あのっ⋯!」
そしてお互いの鼻先が微かに触れた瞬間
「っ!!!!
わわわっ!分かりましたから!行かない!行かないですからっ!!」
半ば叫ぶようにしてそう言えば昴さんの動きがピタリと止まった
「⋯本当だな?」
「は、はいぃ!」
「⋯いいだろう」
昴さんはゆっくりと身体を起こして私の頭を1度撫でた後、ベッドから降りた
「夕食ができてますけど⋯食べれそうですか?」
「は⋯はい⋯」
「では準備してきますね、落ち着いたら降りてきて下さい」
「はい⋯あ⋯あのっ!」
扉に手をかけて出ようとした昴さんを引き止める
「どうしました?」
「あの⋯心配してくれて⋯ありがとうございます」
「⋯⋯」
「それだけ、いいたくて⋯引き止めてすみません⋯」
「いえ⋯下で待ってますね」
昴さんは柔らかく微笑むと扉を開けて出ていった
「⋯⋯はぁ⋯」
それを確認した後ため息をついてまたベッドに仰向けに倒れる
昴さん⋯心臓に悪いですって⋯
「くそー⋯イケメンめ⋯」
ボヤきながら近くに置いてあったカード用バッグを取る
昨日封印したカードを確認しようとしてバッグを開けたら
「⋯あれ?」
中から1枚の紙が出てきた
「これ⋯」
それには電話番号とメールアドレスが書いてあって···
多分⋯いや確実に快斗君だろうな⋯
快斗君に連絡をとるためスマホの画面を開いた所でふと手を止めた
「⋯昴さん⋯待ってるよね⋯」
少し迷った後先に夕食をとるため紙をポケットに入れた後立ち上がった
次の日
「⋯どうしよう」
結局夕食の後快斗君に連絡をしようと思ったけど
時間が遅かった為その日は連絡しなかった
「電話の方が早いけど⋯今授業中だよね⋯」
時間を確認した後メール作成画面を開いた
《こんにちは、八月一日桜です
黒羽君で間違いないですか?》
「んー⋯無難にこんな文でいいか⋯」
もしかしたら快斗君じゃないかもしれないし⋯
少し迷った後送信ボタンを押した
「⋯なんか、緊張するな⋯」
そわそわしながら返信を待つ間
快斗君のジャケットを取り出そうと立ち上がった瞬間
ブー⋯
「わっ!」
携帯が鳴り慌てて見れば快斗君からではなく蘭ちゃんからのメールだった
「蘭ちゃん?」
《桜さんこんにちは!
今朝梓さんから体調が悪くて休んでるって聞いたんだけど⋯大丈夫?
今日はテストで学校は午前中だけだから
様子を見に帰りに園子と一緒に家に行くね!》
「蘭ちゃん⋯」
《蘭ちゃんありがとう!体調は大分良くなってるよ〜
テスト頑張ってね!2人に会えるの楽しみにしてます♪》
そう打って送信した瞬間
ブー⋯
「あ⋯」
また携帯がメールの受信を知らせ開いてみたらさっき私が送信したアドレスからだった
《桜さんこんにちは、快斗です
電話で話したいので電話をかけてくれませんか?》
その文章を読んで紙に書かれていた電話番号を入力してコールボタンを押した後、恐る恐る携帯を耳に当てる
すると直ぐに通話状態になった
「⋯もしもし?」
『⋯桜さん?快斗です』
「やっぱり快斗君だったんだ⋯」
『あぁ、連絡くれて良かったよ』
「あの⋯快斗君⋯色々話したい事があるんだけど⋯」
『俺も話したい事あるけど⋯悪ぃ今休み時間でさ
あんまり時間がねぇんだ』
「あ⋯そうだよね⋯」
『桜さんいつが休み?』
「え?えっと⋯今度の土曜日かな⋯」
『土曜日か⋯よし、じゃあ今度の土曜日
11時に錦座4丁目の⋯あのビルの下で待ってる』
「え?」
『直接会って話した方がいいだろ?』
「それもそうか⋯うん、分かった」
『じゃあそろそろ切るな』
「あ!ちょっとまって!」
『ん?どうした?』
「快斗君⋯助けてくれてありがとう⋯」
『桜さん⋯女性を助けるのは紳士の嗜みですから⋯なーんて、な』
「ふふっ⋯それじゃあ授業頑張ってね」
『あぁ、またな』
通話を切った後携帯を握りしめる
「快斗君にも本当の事⋯話さないとな⋯」
複雑な思いを抱えながら、昴さんから安静命令がでているため
ベッドに座って読みかけの本を開いた