5.反射
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アクアを封印してから⋯
哀ちゃんは何かと私に話しかけてくれて
何だか哀ちゃんとの距離が近くなったような気がしていた
もしかして⋯少しだけ私の事認めてくれたのかな⋯
「⋯なんて、ね」
⋯だったら、いいな⋯
哀ちゃんの事を思い出し思わずニヤニヤしていると
「⋯何かいい事でもあったんですか?」
「うぎゃあ!?」
いきなり後ろから声をかけられて変な叫び声を上げてしまった
「び、びっくりした⋯昴さんいつの間に⋯」
「声をかけても返事がなかったので⋯」
「あ⋯すみません⋯つい熱中して⋯」
今私が居る場所は工藤邸の書斎
その書斎にある椅子に座りミステリー小説を読んでいた
「気に入る小説はありましたか?」
「はいっ!どれも凄く面白くて⋯ページを捲る手が止まらなくて困っちゃいます」
「それは良かったですね⋯
ところで桜さん僕は今から少し出掛けてきますけど⋯」
「⋯もしかして⋯哀ちゃん?」
今日の朝洗濯物を干しているとちょうど哀ちゃんが博士の家から出てきて
どこに行くのか聞くと少年探偵団の皆で公園でサッカーをすると言っていた事を思い出し
本を閉じながらそう言えば昴さんはフッと笑った
「⋯さぁ?少しドライブに行ってくるだけですよ
桜さんも⋯一緒に行きますか?」
その微笑みに何故か身の危険を感じ
首を思いっきり横に振る
「おや、それは残念ですね」
「わ、私の事はいいんでドライブ楽しんで来てください」
椅子から降り、読み終えた本を棚に戻しながらそう言い
違う本を選ぼうと振り返った瞬間
「ぇ⋯」
入口の所に居た昴さんがすぐ目の前にいて
驚いて少し後退りすれば背中が本棚に当たり足が止まる
「昴さ⋯」
気がつけば顔の両方に昴さんの手があって⋯
あの日⋯シージュで閉じ込められた時と同じように壁ドンなるものをされていた
けれどあの日とはまた違う空気を感じ、思わず息を呑む
すると昴さんはズイっと顔を私に近づけ、まるで内緒話をするかのように囁いた
「⋯君は⋯一体、どこまで知ってるんだ⋯?」
その声は昴さんの声ではなくて⋯
「⋯赤井⋯さ」
赤井さんの目は開かれていて
まるで私を見透かすようにしてグリーンの瞳がこっちを見つめている
「ボウヤから君が先を知ってる事も⋯思い出せない事も聞いている
だが⋯君はどこまで知ってるんだ?」
その赤井さんのその言葉にふとある考えが浮かんだ
「⋯⋯もしかして⋯あの時の会話⋯聞いてました?」
「⋯⋯」
あの時⋯とは私がアクアを封印した日
哀ちゃんと2人で話した時だ
「⋯無言は肯定と捉えても⋯?
⋯いや⋯まぁ、赤井さんが哀ちゃんを守る為に盗聴してたのは知ってましたから別に怒ったりしませんけど⋯
⋯まさかあの時間に起きてるなんて⋯」
ジッと私を見るグリーンの瞳からそらさないように
私もその瞳を見つめた
「赤井さんが知りたいのは⋯
過去、ですよね?」
その時赤井さんの眉がピクリと動いた
「⋯それは⋯
明美さんの事⋯?」
私がそう言うと
赤井さんの目が⋯鋭くなった気がした
けれど目の前の人は何も言わない
「⋯私は確かに色んな事を知ってます
⋯けれど全てが分かるわけじゃないんです
あの時あの人は何かをしていた事は分かる···
けれどその時に何を考えてたか⋯何を思っていたか⋯そこまでは⋯分からない
結局は⋯深い所までは分からないんです⋯
だから私も明美さんが考えていた事は分からない⋯
けど明美さんの事が分かるのは志保ちゃん以外でただ1人⋯
貴方じゃないんですか⋯?」
「⋯⋯」
赤井さんは何も言わずに壁についた手を私の肩に置いた
「⋯ごめんなさい⋯」
目を見ていられなくなり、視線を下げる
するとずっと黙っていた赤井さんが口を開いた
「⋯何故キミが謝る」
「⋯時々⋯思うんです
私がもう少し早くここに来れていれば⋯
助けられる命が⋯あったんじゃないかって⋯
⋯いや⋯こんな事言うのは···自分の命をかけた人に失礼ですよね⋯
それに、先を思い出せない私がいたって⋯何の役にもたてない⋯
⋯ごめんなさい⋯」
「⋯謝るな」
ふと赤井さんの手が私の両頬を包み込み上を向かされた
「⋯君は謝ってばかりだな⋯」
「⋯赤井さん⋯」
その綺麗なグリーンの瞳が私の眼を覗き込み
その瞳に目を奪われていると
「⋯宮野明美は⋯死んだ、」
「っ!!⋯」
赤井さんのその言葉に
ズキリと胸が痛み思わず胸元を握りしめる
するとそれを見た赤井さんがそっと親指で私の頬を撫でた
「⋯だがそれは君がここに来る以前の話だ
君が背負う必要はない」
「そう⋯ですね⋯そうかもしれない⋯
でも、哀ちゃんや⋯赤井さんがその重さで潰れちゃわないように⋯
私にも⋯その重さを分けて欲しいんです」
私がそう言うと赤井さんは少し不思議そうな顔をした
「彼女は分かるが⋯俺⋯?」
「哀ちゃんはもちろん大好きですけど⋯
私、赤井さんのファンなんです
だから⋯赤井さんの事も大好きなんですよっ」
そう言って二ッと笑えば
赤井さんはキョトンとした後
「それは⋯光栄だな⋯」
そう言ってフッと笑った
「⋯さっ!そろそろ哀ちゃんの所に行ってあげて下さい
って言っても遠くから見守るだけでしょうけど」
赤井さんの手に自分の手を添えながら苦笑いすれば
彼は反対の手で自分の首元に手を当て変声機のスイッチを入れた
「⋯分かりました、では行ってきますね」
「わっ⋯」
昴さんは1度私の頭を撫でた後振り返って出口の方へ歩きだす
「⋯昴さん!今日の夕飯は何がいいですか?」
私のその言葉に昴さんは1度立ち止まり少し考える仕草をした後微笑みながら言った
「⋯じゃあ肉じゃがでお願いします」
「⋯昴さん肉じゃが好きなんですか?
何か最近肉じゃがの頻度が高いような⋯」
「桜さんの肉じゃがが美味しいからですよ
そうだ、今度作り方教えて下さい
たまには僕も料理を作りますので」
「そんな⋯でも私でよければいつでも教えますよ」
「それは良かった、ではそろそろ行きますね」
昴さんが部屋を出ていった後
体の力が抜けその場に座り込む
「本当に⋯何で⋯今来たんだろう⋯私」
もう少し前なら⋯もっと⋯守れたかもしれないのに
私の力じゃ微々たるものかもしれないけど
それでも⋯未来は変わっていたかもしれない⋯
「⋯駄目だな⋯私」
哀ちゃんに過去は変わらないって言ったのは私じゃない⋯
「⋯しっかりしないと⋯」
コナン君や哀ちゃん、その周りの人達
もちろん⋯
「赤井さんだって⋯守ってみせる
絶対⋯
絶対、大丈夫だよ」
その無敵の呪文が私にも使えるのなら···
どうか⋯私に皆を守る力と勇気を下さい