3.包囲
名前設定
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扉を開けると⋯
「⋯⋯」
「⋯⋯」
眼鏡を掛けた細目のイケメンが
ソファに座ってコーヒーを飲みながら本を読んでいた
「⋯⋯」
「⋯⋯」
⋯パタン
思わず扉を閉じ、その場に立ち尽くす
え⋯?今のは何だ?幻覚?
いやいやそんな馬鹿な
何でこの家に男の人が⋯しかもコーヒー飲みながら本って!!
めっちゃ寛いでるじゃん!
なにこれ、不法侵入で警察に連絡すべき?
いやでも待てよ⋯あの人どっかで⋯
⋯あれ⋯?
眼鏡を掛けた⋯
細目のイケメン⋯
そして工藤邸⋯
「まさかっ!」
再度その人物を確認しようと扉を開ければ
「⋯初めまして」
「ひぃっ!!!」
目の前にその男の人が立っていた
いきなりの事にびっくりして扉をまた閉じようとしたら
その手をガッシリと掴まれる
「あばばばっ」
「貴方が八月一日桜さんですか?」
「な、わた、名前っ!?」※なぜ私の名前を!?
「貴方の事はコナン君から聞いてますよ」
「はっ!」
そうだ!コナン君!
「あ、あの!で、電話!」
スマホを確認してもいいかと片手でジェスチャーすれば
察してくれたのかその手を離してくれた
すぐさま鞄からスマホを取り出し画面を開く
するとコナン君からメッセージがきていた事に気づいた
«今日から沖矢さんが一緒に住むからよろしくね!»
それだけ!!!!?
コナン君に詳細を確認しようと電話をかけると
数回のコール音の後コナン君の可愛い声が聞こえた
『もしもし?桜さん?どうし⋯』
「どうしたのじゃないわよっ!!!
いったいどういう事!?
帰ってきたら男の人が家にいるし!」
『へ⋯?だって桜さん知ってるって⋯』
「だから思い出せないって言ったでしょ!?」
『あ⋯そういえばそうだった
じゃあ沖矢さんの事知らないんだね』
「いや⋯今見て思い出したんだけどさ⋯」
『ならいいじゃん!』
「良くないよ!!!
何で連絡してくれなかったの!?
そのせいで私⋯私っ⋯」
熱唱しながら家に入ってきた事を思い出し
顔が沸騰したかの様に熱くなりガクリと膝をつく
『いや、連絡したじゃん』
「あ⋯そうだった⋯
いやいや!そのメールもどうかと思うよ!?
たった一言じゃん!
とにかくコナン君の口からちゃんと説明がないと許さないから!
今からこっちに来て!」
『え!?今おっちゃんと蘭と外に出てて事件に巻き込まれてんだよ⋯』
さ、さすが死神の異名を持つ子⋯
「それが解決してからでもいいから来てね!
来なかったら今度会った時ほっぺた撫で回してやるんだから!」
『え!?ちょ⋯!』
コナン君が何か言ってたけどそれを遮って通話をきる
「⋯⋯話は済みましたか?」
「ぁ⋯」
話しかけられてすっかりその存在を忘れていた事に気づいた
「あ⋯えと⋯すみません⋯
今コナン君から連絡きていた事に気づいて⋯
いや、その連絡もたった一言だったんですけどね⋯」
「そうですか⋯」
「と、とにかくコナン君が後で来るみたいですから
それまでお茶でも飲んで⋯」
キュルル⋯
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯先に夕飯にしましょうか」
「っっっ!!!!!!!」
もうやだ、穴があったら入りたい⋯
自分のお腹を呪いたくなったのは初めてだ
その後自分も手伝うと言った沖矢さんを無理矢理椅子に座らせ
テーブルに食事を並べる
よかった⋯昨日作り置き多めに作っといて⋯
作り置きしていた肉じゃがにおひたし
私だけならまだしも沖矢さんがいるので
せめてもう1品欲しいと思い
冷凍の鯖の味噌煮を温めた
「い、いただきます⋯」
「いただきます」
2人で向き合って食事をする
ついお箸を止めて食事をする沖矢さんをガン見してしまった
この人が⋯沖矢昴⋯いや
赤井⋯秀一⋯
凄いな⋯全然変装だなんて分からない
それに声も置鮎ボイスだし⋯
やっぱりあのハイネックの下にはあのチョーカーが着いてるんだろうか⋯
「⋯何か?」
「え!?あ、いや⋯お口に合うかと心配で⋯」
ガン見していた事に気づいたのか沖矢さんが不思議そうにこっちを見る
咄嗟にそう言えば沖矢さんは口元を緩めた
「ええ、とても美味しいですよ
やはり家庭の味と言うものは素晴らしいですね」
「あ⋯いや⋯そんな⋯」
不意にそんな事を言われてつい頬が赤くなる
イケメンにイケボでそんな事言われればそら誰だって赤くなりますわ
若干の気まずさを感じながら食事を終え
後片付けをした後、2人でソファに向き合って座り珈琲を飲む
「⋯⋯」
「⋯⋯」
けれどさっきから沈黙ばかりで会話が全然ない
な、何だこの変な空気⋯
コナン君早く!お願いだから早く来て!
「⋯あの」
長い沈黙を破ったのは沖矢さんだった
「は、はいっ」
「貴方の名前は確か八月一日桜さんでしたよね?」
「あ、はいっ!自己紹介が遅れてすいません⋯」
「いえ、いきなりで桜さんも驚いていましたからね」
「ほんとですよ⋯⋯って
名前⋯」
「あぁ、これから一緒に暮らしていくんですし
苗字呼びは他人行儀だと思ったので名前で呼ばせて貰ったのですが⋯
嫌でしたか?」
そんな滅相もない!
ってかここに住むのは確定なのね!
「あ、いや、ちょっと驚いただけです」
「そうですね⋯僕だけ名前呼びだと不公平なので
僕の事も名前で呼んでいいですよ」
「いや、でも⋯」
「嫌、でしょうか⋯?」
私の言葉に沖矢さんは眉根を寄せて困ったような顔をした
何だその顔!?
イケメンだからって何でも許されると思うなよ!
セクシーなんだよ!
その言葉と顔にあっさりと折れ
ついうつむき加減で名前を呼んだ
「そ、そんな事ないです!
じ、じゃあ⋯昴⋯さん⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
部屋にまた訪れる沈黙
「?昴⋯さん?」
昴さんを見上げれば彼はコーヒーカップをソーサーにコトリと置いた後
私の目を真っ直ぐ見た
「何故僕の名前を?」
「え?だって名前で呼んでいいって⋯」
「⋯僕はまだ、自己紹介をしていませんよ」
「⋯⋯え」
し、しまったぁ!!!
そ、そういえばバタバタしていて忘れてたけど沖矢さん本人から名前聞いてないじゃん!
冷や汗がツぅっと背中を流れる
「あ、その⋯コ、コナン君から⋯聞いて⋯」
「通話を聞いていましたがコナン君が言っていたのは『沖矢さん』
一言も『昴』とは言ってませんよ」
何で通話聞いてんだこの人!
「え、えと⋯通話じゃなくてメールで⋯」
「貴方がメールを確認した時に『偶然』画面が見えたのですが
そこにも『沖矢さん』としか書いてなかったはずですが?」
だから何で見てんのこの人!?
絶対偶然じゃないよね!?
「そ、その⋯」
「それから⋯貴方は先ほど食器を並べる時に
僕のお箸の持ち手を左側に置きましたね?」
「それが何か?
⋯⋯あ、」
「そう、僕は左利きです
食事の時に貴方が右利きなのは確認済みなので
つい自分と同じ向きに置いてしまったとは考えにくい
それに貴方が家に帰ってきてから食事をするまで僕が左利きを示すような行動をする事はありませんでしたし
コナン君からそんなメッセージや通話はなかった
貴方は⋯
知っていたんじゃないですか?」
こ⋯恐っ
何この追い詰められる感じ!
凄いデジャブなんだけどっ⋯
「ぅ⋯そ⋯れは⋯」
言葉に詰まっているとふと昴さんが口元を緩めた
「フッ⋯貴方は非常に分かりやすい」
「⋯え?」
「気づいてますか?
貴方⋯僕と会ってからここばかり見ているんですよ」
そう言って昴さんが指を指したのは
自分の首元
「っ⋯⋯」
こ、これは⋯やばい
言葉を返せずにいると
「⋯ん?」
ふと昴さんが私の後ろを見た
「え⋯ど、どうしたん⋯ですか?」
もしかしたら話が反らせるかもと思い尋ねれば
昴さんが立ち上がる
「今貴方の後ろに何か黒いものが⋯」
「えっ!!!!?」
ま、まさかゴキブリ⋯!?
恐怖を感じ勢い良く立ち上がると
テーブルに置いていたコーヒーカップが倒れ
地面に落ちる
「やばっ!」
慌ててそれを取ろうとしたが間に合わず
カップの割れる音が部屋に響いた瞬間
「え⋯」
部屋が⋯白い何かに包まれた