41.欺瞞
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「え?長野?」
とある日
ポアロのマスターが友人と温泉に行くという事で午後からお店を閉める事になり
締め作業をしていたらポアロの外で蘭ちゃんと話をしていた安室さんが
お店に戻ってくるとエプロンを外しながら
「桜さん、一緒に長野へ行きませんか?」
と私に声をかけてきた
「えぇ、なんでも毛利先生が事件の依頼で長野に行くそうなんですが⋯
元々一緒に行く予定だった園子さんが熱を出して行けなくなったので蘭さんも行くのを止めたみたいなんです
ですが依頼主の都合で『4人で来てほしい』と言われていたみたいで⋯
その代理として蘭さんから声をかけられたんですけど⋯
桜さんも一緒に行きませんか?
丁度明日もポアロ休みですし」
「長野⋯」
長野と聞いて思い浮かぶのは諸伏警部の事で⋯
実はファイさんから自分が作った物に加護の力を込められると聞いて
真っ先に作ったのは
諸伏警部へ渡す物だった
ずっと渡したいと思っていたけど
中々連絡する勇気がなくて家の引き出しにしまったままなんだよね⋯
「⋯これも何かの縁かもしれないし⋯」
「?桜さん?」
「いえ⋯小五郎さん達がいいなら私も一緒に行きたいです」
それから安室さんと一緒に毛利探偵事務所へ行けば
隣のいろは寿司で働いている脇田さんもちょうど事務所にやって来て
長野へ行く話を聞くと
「小五郎師匠の弟子としてアッシも是非連れて行って下せぇ!」
と言われ
人数的に1人増えてしまうからどうしようと話していたら
「まぁもしかしたら子供は人数に入らねぇかも知れねぇし⋯
1人ぐらい増えてもいいんじゃねぇか?」
と小五郎さんのその一言で
小五郎さんとコナン君、安室さんと脇田さんと私で
長野へ1泊2日の旅行に行く事になった
小五郎さんが依頼主から貰った特急列車のチケットは指定席で
たまたまその隣の席が空いていた為そこの席を買い
1人だけバラける⋯という事なく皆で座る事ができた
「んん〜っ!!やっぱりいろは寿司のお寿司美味しい〜っ」
初めは安室さんが持っていたトランプで皆でババ抜きをして暇を潰していたけれど
いい感じに空腹になってきたので
脇田さんが探偵事務所に持って来ていたお寿司を折り詰めにして持ってきてくれた為
車内でそのお寿司を皆で食べていた
「うめぇな!この寿司!!」
「確かに⋯」
「寿司桶の寿司を折り詰めにして正解でしたねぇ!」
「まさか今日いろは寿司のお寿司食べれるなんて思ってなかったから嬉しいですっ」
「桜お姉さんいろは寿司のお寿司食べたことあるの?」
「うんっいろは寿司は月1⋯2の楽しみで食べに行ってるんだ〜」
「桜ちゃんは凄く美味しそうに食べてくれるから大将のお気に入りでやすからねぇ」
「だって本当に美味しいんですもんっ」
そう言ってお寿司を噛み締めていると
ふと小五郎さんが脇田さんの眼帯をジトーッと見ながら言った
「ーってかアンタまだ目の出来物治んねぇのかよ?」
「治りかけてたんですけど痒くてかいたら⋯
前より酷くなっちまって⋯
見てみやす?」
チラリと眼帯を外してみせようとした脇田さんに小五郎さんは焦った様に手を振った
「いやいやいや⋯」
「もー駄目ですよ?脇田さんっ
かきたくなる気持ちは分かりますけどそれじゃあ一向に治りませんよ?」
「へへっ、桜ちゃんに怒られるのも慣れちまいやしたねェ〜」
「慣れないで下さいっ」
そんな談笑をしながらお寿司も食べ終わってひと息ついた時
安室さんがふと話を切り出した
「それで?そろそろ教えてくださいよ⋯
依頼の内容を⋯」
「ぁ⋯そういえばまだ聞いてなかったですね⋯」
コナン君を膝の上に乗せて隣の小五郎さんを見ると
「ああ⋯まだ話してなかったか⋯
1か月前に届いた手紙に⋯この妙な紙切れが同封されてたんだよ⋯」
小五郎さんは懐から紙切れを取り出しながら話してくれた
「こ、これは⋯」
「暗号のようですね⋯」
それは6×6の合計36個の四角のマスに
バラバラにカタカナが記された⋯
妙な紙切れだった
小五郎さんの話では
手紙の送り主の名前は日原泰生という人で
なんでもその人の古い友人が長野の山奥の潰れた教会で首を吊って亡くなったらしい
けれどその自殺した理由が全く思い当たらないようで⋯
もしかしたら遺体の足元に落ちていたこの紙の暗号を読み解けば自殺した理由が分かるのではないか
と小五郎さんに暗号解読を依頼して来たという事だった
ただ、暗号の内容によってはもしかしたら自殺ではなく殺人の可能性もあるらしく⋯
それを聞いて、なんとなく胸がザワついた
「ねぇ、小五郎のおじさんはその手紙の人とまだ会ってないんだよね?」
「あぁ⋯手紙とメールを何度かやり取りしただけだ⋯
この電車のチケットと前金50万はもらったがな⋯
まぁ、どーせこれから廃教会で落ち合う事になってるし⋯
自殺の現場を見た後、依頼人の車でホテルに行って詳しい話を聞きつつ⋯暗号解読のシンキングタイムって算段だ!」
「きっと大歓迎ですよ!」
「なんたって眠りの小五郎が来てくれたんですから!」
「だよなぁ!」
「暗号解読⋯か⋯」
「⋯桜お姉さんどうしたの?」
「⋯ううん、なんでもないよ」
本当に、暗号解読だけで済んだらいいけど⋯
そんな私の嫌な予感が
まさか当たってしまうなんて
この時は思いもしなかった⋯
駅に着き
吹雪いている中タクシーで教会がある森の入り口まで送ってもらい
数メートルの山道を雪を踏みしめながら登っていくと
そこには廃れてしまった教会が建っていた
「出迎えないですね⋯」
「ひっくしゅん」
「まだ来てねぇのかな?」
「うぅ⋯さむっ⋯」
マフラーは持ってきたけど手袋忘れたせいで指がめちゃくちゃ冷たい⋯
こんな事なら駅でちょっと時間貰って手袋買えば良かった⋯
なんて後悔しながらハァーッと息を吐いて指を暖めていると
ふと、その手を握られた
「僕も手袋を忘れたので⋯
良かったらここにどうぞ」
「へ、」
抵抗せずに手を引っ張られると
その手はそのまま安室さんの上着のポケットにしまわれてしまった
「ぁ、むろさっ⋯」
ぎゅっ、とポケットの中で手を握られた瞬間
「お!鍵はかかってないみたいですぜ?」
脇田さんが教会の扉を開きながらそう言った
「潰れた教会らしいですから⋯」
「とりあえず中に入って待ってるか⋯」
小五郎さんに続いて皆が教会の中に入っていく
私も安室さんのポケットに手を入れられたままなので
そのまま安室さんと一緒に中に入る事になった
「使われなくなってから結構たってるようですね⋯」
教会の中は明かりはついてなく
薄暗い廊下を皆で歩いていく
「確かに悪い霊とか棲みついてそうだ⋯」
「止めてくだせぇ⋯そういうの苦手なんですから⋯
⋯桜ちゃんは平気なんですかィ?」
「へっ!?な、なんですか!?」
「いや⋯怖がってるっていうか⋯ん?何か顔が赤ェような⋯」
「え、えと、さ、寒すぎて逆に熱くなっちゃったかな〜って」
「?」
ギクシャクとしながら脇田さんにそう答えている間も安室さんは私の手をぎゅっと握っていて
じんわりと暖かくなる手と同時に
心臓がバクバクと音を立てていた
廊下を進んで突き当たりの開き扉を開けると
「ん?
おお礼拝堂か⋯」
そこには広い空間が広がっており
中央には通り道、その両隣には長椅子がズラりと並べられてあり
奥には祭壇と聖卓が置かれてあった
「結構広いですね⋯」
皆が数歩中に足を踏み入れたら
奥の長椅子に誰かが座っており
そこに座っていた人⋯茶髪の男の人がこちらに気づき、立ち上がった
「あれ?
アンタらもニッチのお別れの会の⋯参加者かい?」
「ニッチの⋯」
「お別れの会?」
「何の事ですかい?」
ニッチ⋯?
男の人の言ってる意味が分からず首を傾げると
私達の後ろから男の人の声が聞こえた
「おいおい⋯知らねーわけねーだろ?
2ヶ月前にここで自殺したっていう⋯
ニッチだよ!」
振り返るとそこに居たのは髭を生やした少し大柄の男の人で
「お前らそれを知らずに⋯
吹雪の中こんな山奥の廃教会に来たっていうのかよ?」
「あら⋯
この辺ってパワースポットとして割と有名らしいわよ?
まぁ、私達が高校生だった頃の話だけどね⋯」
その後ろから今度はニット帽を被った女の人と
「無駄話はそれくらいにして⋯
さっさと終わらせましょう⋯
忙しい中時間を割いて来ているんですから⋯」
眼鏡をかけた細身の男の人
それから
「いえてるな⋯
ここって暖房設備がねぇみてーだし⋯
ちゃっちゃと終わらせて皆で鍋でもつつこうぜ?
久しぶりに会ったんだからよ!」
パーマをかけた男の人が礼拝堂へ入ってきた
「皆さん知り合いなんですか?」
「ええ!」
「同じ高校の同級生だよ!」
同級生⋯?
もしかして依頼人の日原さんと関わりのある人達かな⋯?
「で?この後の段取りはどうなってんだ?藤出⋯」
入ってきた時に椅子に座っていた男の人⋯藤出さんは
パーマをかけた男の人からそう言われて不思議そうにした
「え?」
「お前だろ?ここに集まろうってメールよこしたのは⋯」
「いやいやいや⋯僕は和田からメールもらって⋯」
藤出さんからそう言われた髭を生やした大柄な男の人⋯
和田さんは「はぁ?」と顔をしかめた
「んなメール出してねぇよ!
メールでここに呼んだの郁絵だよな?」
「ちょっと何の話?
皆川崎君のメールで集まったんでしょ?」
女の人⋯郁絵さんは眼鏡をかけた男の人⋯
川崎さんを指さしながらそう言ったけれど
「そんな面倒な事私はしませんよ⋯
私は西野君のメール通りに⋯」
川崎さんはパーマの男の人⋯西野さんを指さしながら言った
「だからー俺は藤出のメールで⋯」
「⋯ぇ、」
「おいおい⋯
グルっと1周しちまってるじゃねぇか!」
ここに集まろうというメールを送った差出人は⋯
それぞれの言い分を信じれば
グルっと1周してしまっていた
「なるほど⋯誰かがウソをついてサプライズを狙ってるって魂胆ですかい?」
「そういうあなた達は誰に呼ばれたのよ?」
「俺達は日原泰生って人に手紙で⋯」
郁絵さんに聞かれて小五郎さんがそう答えると
明らかに5人の表情がサァッと青くなった
「おいおい冗談だろ?」
「そんなのありえないよ⋯」
「だって日原泰生ってよぉ⋯」
「さっき言ってたニッチの事⋯」
「2ヶ月前にここで自殺した⋯
本人なんだから⋯」
「えっ⋯」
「な、何だとォ?」
もしそうなら⋯
誰かが、故意に皆をここへ集めたことになる
「っ⋯」
やっぱり嫌な予感がする⋯
ここは早目にこの教会から出た方がいいんじゃ⋯
「っ⋯あのっ!」
小五郎さん達へ声をかけようとしたら
ズシャ!!ガラガラガラ!!
私の言葉は外から聞こえた大きな音に遮られてしまった
「何ですかい?この音⋯」
「何かが崩れるみてぇな⋯」
「まさか駐車場じゃねぇだろーな!?」
「行ってみましょう!」
1番扉の近くに居た西野さんを筆頭に
皆で教会の横にある駐車場へと向かえば
そこにあったウッドデッキは崩れ、停めていたであろう車は無く
恐る恐るデッキが崩れて空いた大きな穴を覗けば
谷底に何台かの車が見えた
「あちゃー⋯」
「デッキが崩れて車がみんな谷底に⋯」
「支柱が腐っていたのかしら?この教会古いから⋯」
「買ったばっかの新車だったのに⋯」
「ーつかこんな危ねぇ所駐車スペースにするなっつーの!」
「警察か消防に来てもらうしかなさそうだね⋯」
「あぁ⋯」
皆は落胆しながらトボトボと廃教会に戻って行って
その後をついて行っていたら
ふと、安室さんが廃教会の扉の横に立てかけられている『駐車場』の立て札を見て足を止めた
「妙ですねぇ⋯
教会の建物はかなり古いのにこの立て札だけ真新しい⋯」
「本当だ⋯」
安室さんの言った通り、立て札は塗装が剥がれたりしておらず
それだけ真新しく用意されたようだった
「おいおいまさか誰かがみんなの車を誘導して故意にオシャカにしたって事か?」
「本当にそうなら何かが起きそうでゾクゾクしやすねぇ⋯」
「何かって何だよ?」
小五郎さんがそう尋ねると
脇田さんは瞳を鋭くさせながら言った
「だってこの状況はミステリーの定番中の定番⋯
連続殺人が起きやすい⋯
まさに『雪山の山荘』ですからねぇ⋯」
「っ⋯⋯」
ゾワリと
嫌な予感に鳥肌が立った
