40.願望
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小狼君達が旅立って数日後
「皆さんお忙しい中、米花商店連の花見の席にお集まりくださりありがとうございます!」
「よ!レストランコロンボの大将!」
「ミートソースが絶品!」
今日は米花商店連の人達が集まり
桜が満開に咲いた公園で
花見が開かれる事になった
「堅苦しい挨拶はここまでにして
カンパーイ!!」
コロンボの大将の掛け声に皆がカップを上に掲げ
花見が始まった
「ささっ皆さん今日は飲んで食べて楽しみましょー!
小倉さんっビールどうぞっ」
「おっ悪いね桜ちゃん」
「桜ちゃんこっちもついでくれよっ」
「はーいっ!」
「ちょっと!若い子にお酌させてんじゃないわよっ」
「桜ちゃんおっちゃん達なんか気にしなくていいのよ〜?」
「いえいえっ私が好きでやってるだけですから気にしないで下さいっ」
「そう?桜ちゃんもちゃんと楽しむのよ?」
「はいっありがとうございますっ
植田さんもお酒どうですか?」
「あら、じゃあ頂こうかしら」
「本当桜ちゃんは良く気が利くし優しくて可愛いし⋯息子の嫁に欲しいぐらいだわ
どう?桜ちゃん?確か今フリーだったわよね?」
「ちょっと!それならうちの嫁になってちょうだいっ」
「あんたん所はまだ中学生でしょーが!!」
「あはは⋯」
捕まりたくないので中学生は勘弁して欲しい⋯
苦笑いしているとふと小倉さんから声をかけられた
「そういや桜ちゃん、梓ちゃんから聞いたが⋯
小狼君達はもう母国に帰ったんだってな」
「あ⋯はい、やらないといけない事があるって⋯」
「そういや確か考古学者で⋯全国回ってるって言ってたよな?」
「若いのにすげぇな〜」
「桜ちゃんいつ知り合ったんだ?」
「えと⋯だいぶ前に小狼君達が日本に来た時に色々と助けられて⋯」
「へぇ〜」
「いやぁ〜あの黒い兄ちゃんとは良い酒談議ができると思ったのによ〜」
「でもまた日本にやってくるんだろ?」
「⋯それが分からなくて⋯
もしかしたらもう来れないかもって言ってました」
「そっか⋯それは寂しいわね⋯」
「本当よね⋯あんなイケメン、安室さん以外で中々見ないから目の保養だったのに⋯」
「あんたに言ってないわよ」
「⋯⋯」
花見も中盤になり各々が楽しく話し込んでいたら
ふと、桜さんの姿が見えない事に気づいた
少し前まで向こうでお酌をしていたが⋯
「⋯⋯」
桜さんの事が気になり立ち上がろうとしたら
「わぁ!!」
強い風が吹き桜の花びらが舞い上がった
「花吹雪⋯おつだねぇ⋯」
それに皆が目を奪われていると
隣に座っていた梓さんが手を前にだし
桜の花びらを掴もうとしていた
「えい、えい!
⋯あぁ駄目だ⋯」
けれど花びらを掴む事ができずに落胆した声をあげる梓さん
するとそれをジッと見ていた自分に気づいたのか梓さんがこちらを見た
「小さい頃やりませんでした?
桜の花びらのおまじない⋯
地面に落ちる前に3枚掴むと願いが叶うって⋯
安室さんだったら、何をお願いしますか?」
⋯願い事、か⋯
「⋯⋯」
安室透として無難な回答をしようと口を開こうとしたら
「梓ちゃーん、お酒まだある?」
奥に座っている商店連の人が梓さんへ声をかけた
「はーい!」
「僕が行きますよ⋯
予備のお酒やお菓子、車に積んできたので⋯」
「いいんですか?ありがとうございます安室さん」
立ち上がろうとした梓さんを制して自分が立ち上がると
梓さんは微笑んでお礼を言った後隣に座っているアキラ君へナポリタンを食べさせていた
広場から離れて車を停めてある方へ歩きだしたら
ふと目の前に誰かが立っている事に気づいた
桜の花びらで一瞬姿が分からなかったが
それは桜さんで⋯
舞い散る桜の花びらを見上げる桜さんは
ゾッとするほど儚くて⋯
とても、綺麗だった
「⋯桜さん⋯」
桜さんの瞳は何かを考えているように揺れていて
その横顔を見て⋯
あの時の、ファイさんの言葉を思い出した
それはあのドラゴンを雛さんが封印した日
ファイさんによって桜さんが眠らされた後の事⋯
「桜さんは大丈夫なんですか?」
「うん、ただ⋯魔力供給に慣れてない中
魔力を供給しながら魔法を使う⋯って荒技してたから⋯
封印した後も魔力がコントロールできてなくて
ちょっと暴走しかけてたから寝かせただけだよ」
「そうか⋯」
ファイさんの言葉を聞いて、赤井が自分達の腕の中で眠る桜さんの頬をそっと撫でた
それを見てその手を振り払おうとしたらそれよりも早くモコナがやってきて
反対の頬に自身の身体を擦り付ける様に身を寄せた
「桜⋯すっごくがんばってたね」
「モコナ⋯」
振り払おうと上げた手をそのままモコナの頭に乗せて撫でると
モコナはきゅっと桜さんの首にくっついた
すると桜さんの頬を撫でていた赤井が
グッと桜さんの肩を寄せながら言い放った
「今日はこちらで桜を預かろう」
「⋯は?」
その言葉に、思わず声が低くなる
「⋯何言ってるんですか?
貴方と居た方が桜さんが危ないので僕が責任を持って連れて帰ります」
桜さんの腰に手を回しこちらへ引き寄せながらそう言えば
赤井はフッと笑った
「ホー⋯公安の仕事はいいのかな?降谷くん」
まるで暇なのか、と言いたげな赤井に
カッと頭に血が上った
「貴様に言われたくないっFBI!!」
「ふ⋯2人共そこらへんで⋯」
「そうだ、ボウヤに決めて貰おうじゃないか⋯
俺の方が信頼できるだろう?ボウヤ」
「えっ!?」
「いいでしょう⋯
何かあった時に直ぐに動けない貴方より僕の方が安心だ、だろう?コナン君」
「ちょっ⋯」
「どうなんだ?ボウヤ⋯」
「えっと〜⋯」
「決まっているよね?コナン君⋯?」
「ぅっ⋯」
押し黙るコナン君をジッと見つめていると
ポンッとそのコナン君の頭に手が置かれた
「わぁ〜バチバチだねぇ〜
正直ちょっと面白そうだから見ていたい気はするんだけど⋯
今日はオレが桜ちゃんを預かるよ」
その言葉にピタリと言葉を止めてそちらを見れば
ファイさんはコナン君に後ろから抱きつくようにしてグッと自身の身体を近づけると
そっと桜さんの手を取った
「今はオレの魔術で魔力暴走を抑えたけど
いつまた暴走をおこすか分からないから
一晩は様子見てた方がいいと思うんだよね〜
もし魔力暴走起こして周りに危害がでたら悲しむのは桜ちゃんだし⋯ね?」
そう言ってふにゃりと笑ったファイさんを見て
「「⋯⋯」」
自分と赤井は桜さんから手を離した
「んじゃ黒ぴっぴ桜ちゃん運ぶのお願いねー」
「俺かよ!!」
ぶつぶつと文句を言いながらも桜さんを優しく抱き抱える黒鋼さんを見ていたら
ふとファイさんが自分達へ声をかけてきた
「⋯ちょっと君たち3人に忠告しておきたい事があるんだ」
「⋯忠告?」
「前にオレが妙な気配がしたって言ったことは覚えてるよね?」
「えっと⋯確か桜お姉さんが最初にドラゴンと戦った時だよね?」
「うん、
桜ちゃんはきっと⋯
その気配の主に狙われている」
「⋯⋯だから気をつけろ⋯か⋯」
あの時⋯赤井に巻きついていた『影』は
前に桜さんを襲おうとしていた『影』と似ていた
その事からファイさんの言葉は嘘ではないだろう
「⋯⋯」
桜さんは⋯あまり人に頼らない
それはきっと⋯自分の事で周りに危害が出る事を恐れているからだ
だが自分やコナン君達⋯大切な人達が危険な時は
自身を顧みずに助けようとする⋯
「フッ⋯ほんとに⋯色んな意味で目が離せないな⋯」
1歩踏み出し名前を呼べば
こちらに気づいた彼女は花のようにふわりと笑った
「わっ⋯凄い風⋯」
強い風が吹き思わず空を見上げると
沢山の桜の花びらが宙を舞っていて
その綺麗な光景に目を奪われる
「綺麗⋯」
思わず立ち止まりそれをジッと見ていると
ふと、あの時の事を思い出した
あの時⋯ドラゴンを封印した時に現れたカード⋯
あれは、確かにクロウカードだった
目が覚めた後ファイさんにクロウカードの気配を尋ねてみたけれど
街の方に消えてからは気配が消え、カードの行方を探れなかったと言っていた
その後自分でもクロウカードを探してみたけれど
結局見つからず⋯
気配も全く察知する事ができなかった
「何でここに⋯クロウカードが⋯」
可能性があるとすれば⋯私以外にも魔法が使える人がいて⋯
その人がクロウカードを使ったか⋯
でも、だとしたらなんであのドラゴンが強くなるような魔法を使ったんだろう⋯
強くなると分からなかった⋯?
いや、それとも⋯
わざと⋯影(シャドウ)のカードを使った⋯?
もし⋯わざと使ったのだとしたら⋯
「⋯桜さん、こんな所で何してるんですか」
声をかけられて隣を見れば
安室さんが少し離れた場所に立っていた
「⋯安室さん⋯
お酒が無くなりそうだなって思って取りに来たんですけど⋯
安室さんの車、鍵がかかってるの忘れてて⋯引き返してきた所なんです」
私がそう言うと安室さんはクスリと笑いながらこちらへ近づいてきた
「魔法を使えば良かったのでは?」
「あ⋯そういえばそうだ⋯」
全然頭になかったな⋯
「⋯ふふ、実は僕もお酒を取りに来たんです
一緒に行きませんか?」
「あ、はい⋯へっ!?」
返事をして歩きだそうとしたら
近づいてきた安室さんが私の手を掴んで歩きだした
「あ⋯むろ、さん⋯?」
「ん?どうかしましたか?」
「いや、あの⋯手⋯」
恥ずかしさで、モゴモゴと繋がれた手の事を伝えると
安室さんは私の顔を見た後フッと笑った
「繋いでないと⋯
桜さん、どこかに行ってしまいそうでしたから」
「ぇ⋯
い、いや⋯荷物持ちなんていくらでもするんで逃げたりしませんよ?」
「そういう意味じゃないんだが⋯
まぁいいか」
安室さんはそう言うと歩きだした
⋯手、そのままなんだ⋯
ドキドキと鳴る心臓を誤魔化す為話しかけようとしたけれど
特に話題が思いつかず黙って2人で桜並木の歩道を歩く
すると安室さんがピタリと立ち止まり
不思議に思って隣を見れば
安室さんは降り注ぐ桜の花びらを見上げていた
「⋯桜さんは知っていますか?
桜の花びらのおまじない⋯」
「え?桜の花びらの⋯おまじない⋯?」
「僕もさっき梓さんから聞いたんですが
地面に落ちる前に3枚掴むと願いが叶うらしいんです」
「へぇ⋯そんなおまじないがあるんですね」
これだけ沢山の花びらが落ちてきてるなら
3枚ぐらい、掴めるかな⋯
そんな私の考えを見透かしたように安室さんがそっと手を離した
それを見て舞い散る花びらに手を伸ばす
「てやっ!!⋯⋯あれ?掴めてない⋯」
また掴もうと2、3度試してみたけれど
花びらはスカッと綺麗に私の手の中から逃げ出し
全く掴む事ができなかった
「むっず!これ3枚なんて無理じゃないですか?」
なんて呟いて安室さんを見た瞬間
シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!
と風を切る音と共に安室さんの拳が前に出され
安室さんは私の目の前でその拳を開いた
そこには5枚の桜の花びらが乗っていて⋯
「桜の花びらは5枚で1つ⋯ですからね」
そう言って安室さんは微笑んだ
「え、すご!!どうやったんですか!?」
「んー⋯落ちていく方向を予測し素早く掴む⋯ですかね?」
「えぇ⋯」
それ私にできないやつじゃないですか⋯
試しにもう一度掴もうとしてみたけれど
花びらはスカッと手の中を通り過ぎた
「⋯ぐっ⋯」
「ふふっ⋯桜さん、手だして下さい」
「え?」
安室さんに言われるがまま手を差し出すと
安室さんはそっと私の手の平に自分が掴んだ5枚の花びらを乗せた
「これ、桜さんにあげます」
「え!?でも安室さんが掴んだものですし⋯」
「⋯桜さんは、願いが叶うなら何を願いますか?」
「え⋯?
私の⋯願い⋯?」
安室さんからジッと見つめられ少しだけ考え込む
私の願い事って⋯なんだろう⋯
そういえば前に神社でお参りした時も思いつかなかったな⋯
もし⋯もし願いが⋯叶うのなら⋯
「⋯⋯」
何も言えずに黙っていると
安室さんが私の手を包み桜の花びらを握らせた
「僕が⋯
貴方の力になります」
「ぇ⋯」
顔を上げると
安室さんは優しく微笑んでいて
その瞳にドクリと心臓が大きく音を立てた
「だから、傍にいて下さいね」
「安室⋯さん⋯」
「⋯⋯そろそろ行きましょうか
皆さん待ってますから」
安室さんはスルリと私の手を撫でた後
近くに停めてある自分の車へと歩き出した
ドクリ、ドクリと波打つ心臓に
花びらを持つ手を添える
「私の⋯願いは⋯」
