36.紅の修学旅行
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「無理、無理、無理、無理⋯
勘弁して〜!!」
「なによー!せっかくこの園子様が⋯
ラブラブショットを撮ってあげようってーのに⋯」
「だから皆で撮ろうよー⋯」
「ダーメ!なんなら熱っつい口付けを交わしちゃってもよくってよ?
お・く・さ・まっ?」
「え〜っ!?」
「とにかく⋯
行って来ォいっ!」
「きゃっ」
パシャ!!
「ふあぁーっ!!
見た見た見た!?今のツーショット!
あぁ〜本当に来て大正解だったわぁ⋯」
「⋯姉ちゃん⋯もうちょい声のボリューム落としィや⋯」
ほうっ⋯とため息をついた私に
服部君が呆れた目線を向けた
私は今⋯
京都に来ている
それは哀ちゃんのストラップ紛失事件から数日後の⋯
修学旅行の前日
私はコナン君に阿笠博士の家へと呼ばれて来ていた
「いーい?重要なのは次の3つ!」
ピッ!と指を立てた哀ちゃんを
コナン君は喜びが隠しきれないニヤニヤとした顔で見ていた
「薬の効果が切れたらすぐに次を飲まずに8時間は間を空ける事!」
「うんっ」
「幼児化してる間は周囲の人に気づかれない対策を何か立てる事!」
「うんっ」
「元の工藤新一の体に戻ったら目立つ行動は避ける事!」
「うんっ」
「⋯あと、あんまりイチャイチャしない事!」
「⋯ん?イチャイチャって⋯今、4つ要点言ってなかったか?」
「⋯哀ちゃん⋯」
⋯哀ちゃん、
やっぱりコナン君の事⋯
「ま、まあ4つ目はどーでもいいけど!⋯
最初の3つを守るのがAPTX4869の解毒薬をあげる条件よ!」
「へいへいりょーかい!
ま、気づかれない対策は桜さんが居るから大丈夫だって」
「⋯へ?私?」
不意に声をかけられてコナン君を見れば
哀ちゃんから薬を貰いながらコナン君は二ッと笑い
私を見て言った
「修学旅行⋯
着いてきてくれねぇか?」
「はぁ〜っ⋯眼福、眼福⋯」
滅多に見れない新一君と蘭ちゃんのツーショット
それから清水寺という最高の舞台に思わず手を合わせて拝んでいると
服部君がじとーっとした目線を向けながら私に近寄ってきた
「しっかし⋯髪が変わるだけで随分雰囲気が違うて見えるんやなぁ⋯」
「⋯ん?あぁ⋯ウイッグの事?」
服部君にそう言われて腰まで流れる黒髪をひと房掴んだ
コナン君⋯新一君のサポートをするため
修学旅行に着いて行く事にしたけれど
服部君はともかく、私がこのタイミングで京都に居るのは不自然に思われるだろうから
蘭ちゃん達に気づかれない方がいいと思って
変装の為、腰までの長い黒髪のウイッグを被った
イメージは知世ちゃんだ
「これなら後ろ姿だけじゃ私って分からないでしょ?」
「せやな⋯でも顔見られたら姉ちゃんやってばれるで?」
「それならこれがあるから大丈夫っ
いざと言う時はこれつけるからさっ」
そう言ってポケットからサングラスを取り出し装着してニッと笑った
まぁでもなるべく新一君と蘭ちゃんのラブラブシーンを直で見たいからつけないようにはしたいけどね〜
「服部君とお揃いだね〜」
私じゃサポートできない時の為に
コナン君に頼まれて来た服部君も変装の為に帽子にサングラス、マスクをつけていた
「この格好暑苦しくてしゃーないわ⋯」
「もう少し早く合流できてたら服部君の変装手伝ったのになぁ⋯
今からでも変装させてあげようか?」
手をわきわきと動かすと服部君は私から少し距離をとった
「⋯何や嫌な予感がするからやめとくわ⋯
それにしても⋯何で傘なんか持っとるんや?
修学旅行中の天気は晴れやで?」
服部君にそう言われて
手に持っている『傘』をみる
「あー⋯これ、傘じゃないんだよね」
「傘じゃない?」
「ちょっと待ってね⋯」
意識を集中させて
服部君にだけ本当の姿が見えるようにミラージュを解除した
「!!それっ⋯魔法の杖やんか!」
「えへへ⋯これなら街中で魔法を発動してても分からないでしょ?」
ルシッドだと魔力の消費が激しいけど
ミラージュ⋯しかも杖を傘に見せかける、っていう魔法ならそんなに消費はされないんだよね
どやっと笑いながら言うと
服部君は感心したように杖をまじまじと見た
「はぁ〜⋯そないな使い方もあるんやなぁ⋯
⋯ん?
てことは今何かの魔法使うとるんか?」
「ふっふっふ⋯さすが西の高校生探偵⋯
よくお気づきで⋯」
1度使っている魔法を止め、カードにすると
それを服部君へと手渡した
「何やこれ⋯
記録⋯レコード?」
「これはね〜その場の撮影ができるカードなのっ
しかもただの撮影じゃなくて立体的⋯
つまり3D撮影ができる優れもので⋯
これで⋯
新一君と蘭ちゃんのラブラブ修学旅行デートを撮影するんじゃあぁぁぁっ!!」
グッと拳を握ってそう宣言すれば
「⋯工藤もやっかいな姉ちゃんに好かれて大変やなぁ⋯」
服部君から冷めた目で見られた
「あ!そろそろ移動するみたいだよ!」
「ぐえっ」
ボソリと呟いた服部君を無視してその首根っこを掴み新一君達の後を追った
それから2人で新一君の後をついて行って
八坂庚申堂や金閣寺、三十三間堂など色んな観光名所を回り
新一君達が養源院へ行っている間
その後はホテルへ戻る事になっているらしく
服部君と先に皆が戻ってくる前にホテルへ戻って
事前に聞いてた割り当てられている新一君の部屋に侵入した
「『行動(アクション)』
⋯よし、これで鍵が開いたから中に入れるよ」
「⋯ほんま便利やな、それ」
新一君からまだ連絡はないから⋯
新一君達がホテルに着くのはまだだろうな⋯
少しゆっくりできそうだ、とボスりとベッドに座った
「はぁ〜⋯
修学旅行最高」
「ほんまブレへんな、アンタ」
「まぁまぁ、それより皆が戻ってくる前にご飯食べちゃお?」
ジトーっとした目で私を見る服部君に苦笑いして
ホテルに来る前にコンビニで買い出しした袋を掲げてみせれば
服部君は「せやな」と言って前の椅子に座った
「梅おにぎりだったよね?はいっ」
「おう、」
おにぎりとペットボトルのお茶を渡せば
お腹が空いていたのか服部君はいそいそとおにぎりの包装を外すとパクリとかぶりついた
それを見て私も自分の分のおにぎりを取り出しかぶりつく
「いやぁ〜甘い物食べたらしょっぱいもの食べたくなるよね〜」
「姉ちゃん工藤の後付けながら散々買い食いしとったからなぁ⋯」
「そりゃあせっかく来たんだから楽しまないと」
そんな雑談をしながら食べていると
ふと疑問に思って食べる手を止めて服部君を見た
「そういえば⋯服部君の学校は修学旅行はまだなの?」
「ん?俺ん所はまだや
今沖縄か北海道かで投票が割れとってなぁ⋯」
「へぇ⋯生徒が投票するシステムなんだね⋯
沖縄に北海道か〜⋯
沖縄の海もいいけど北海道もいいよね〜⋯
色々告白スポットがあるみたいだしぃ?」
ニヤリと笑いながら服部君を見れば
服部君は食べる手を止めて僅かに頬を赤らめた
「こ、告白スポット⋯」
「あ、今和葉ちゃん想像したな?」
「ちちちちゃうわ!」
「照れない照れないっ
でも北海道は本当おすすめだよ〜?
時計台とか赤レンガ庁舎⋯五稜郭とか良い所いっぱいあるし⋯
あ!それに何せ北海道には100万ドルの⋯」
その時、ブーッと携帯が鳴り画面を見れば
新一君から今から部屋に向かうというメッセージが来ていた
「やばっ新一君達今から部屋に来るって!」
「なんやて?早ォ片付けな!」
おにぎりを慌てて口の中に入れてゴミを片付けるとベッドを整え
電気を消して部屋の端に寄ったその時
ガチャリ、と部屋の鍵が回される音がして
ルシッドを使い私と服部君の姿を消した
「おぉ〜中々いい部屋じゃねぇか!」
「そうだな⋯」
新一君と一緒に入ってきたのは
確か中道君と呼ばれていた男の子だった
「って、のんびりしてる暇ねぇよな
すぐに風呂の時間になるし、さっさと荷物置いて風呂入りに行こうぜ」
「あぁ⋯」
2人は荷物を置いた後、着替えを取り出すと早々に部屋を出て行こうとして
「あー⋯中道、ちょっと忘れ物したから先に行っててくれ」
「ん?おぉ、早く来いよー!」
新一君はパタリと扉を閉じると部屋の中へと戻ってきた
「桜さん、服部、居るんだろ?」
「どうかしたの?」
ルシッドを解除して新一君の前に姿を表せば
新一君は一瞬驚いた顔をした後苦笑いした
「やっぱり分かっててもびっくりするな⋯
って、そうじゃなくて⋯実は清水寺で女優の鞍知景子さんって人と会って⋯
何か俺に見せたい暗号があるって言われてさ
9時頃に部屋に行くことになったんだ」
そういえば清水寺で誰かと話してたな⋯
あれ女優の鞍知さんだったんだ⋯
「鞍知景子って⋯あの有名な女優かいな?」
「へぇ〜あの女優さんと知り合いだったんだ」
「だから風呂入った後ちょっと出て行くから⋯」
「それはいいけど⋯身体は大丈夫なの?」
「時間ギリギリやないか?」
「あぁ⋯まぁ異変があったらすぐに戻るから
よろしくな!」
新一君はそう行って部屋を出ていった
「自由なやっちゃで⋯にしても暗号って⋯何やろか?」
「ね、新一君が帰ってきたら詳しく聞いてみよっか」
それからお風呂から戻ってきた新一君は言ってた通り部屋を出ていって
それを待ってる間、同室者の中道君が友達を部屋に招いてトランプをしだした
「革命返しだ!」
「うっそだろお前!俺の計画がーっ!」
「俺あーがりっ」
「お前があがるのかよ!」
いいねー⋯このまさに修学旅行って感じ⋯
退屈そうに欠伸をする服部君とは反対に
のほほんとしながら中道君達のやりとりを見ていると
「そういえばお前等俺の送った動画ちゃんと見たか?」
「あーあれ?なんだっけ?アイドルの⋯」
「ぷ⋯プリン?」
「プリメーラちゃん!ったく散々教えただろ〜?」
「いや俺らアイドルには興味ねぇから⋯」
「いいからちゃんと見てみろって!すげー可愛いからよ!」
⋯プリメーラ?
あれ⋯プリメーラって聞いた事ある気がするけど⋯
どこで聞いたんだっけ⋯?
確か⋯
その時
ガチャッと扉が開いて新一君が部屋に入ってきた
「おう!工藤じゃねぇか!
どうだった?大女優、鞍知景子に会った感想は?」
「そ、その話なら⋯明日にしてくれ⋯」
中道君にそう返事をする新一君は苦しそうにしていて⋯
その様子にもう身体が戻るまで時間がないんだと悟った
「つ、疲れたから寝る⋯
お、起こすなよ⋯」
「何だよ?みんな楽しみにしてたのに⋯」
「中道が興味あるのはアイドルだけだろ?」
「まぁな〜」
「とにかく続きやろうぜっ」
新一君がベッドに潜りこんだ時
小声で服部君に声をかけた
「じゃあ服部君、お願いね」
「おう」
ニッと服部君が笑った瞬間
ベッドの中から苦しそうな新一君の声が聞こえてきた
「ぐぁっ⋯」
「おい大丈夫か工藤?」
「放っとけ、放っとけ!」
「どうせ久々に女房に会えて興奮してんだよ!」
「そりゃそっか!」
「『幻影(ミラージュ)』」
小声で魔法を唱え中道君達に新一君が寝ているという幻影をかけた後
「大丈夫だよ、新一君」
「ふぅ⋯サンキューな、桜さん」
小声で声をかけると
ベッドから小さくなった新一君⋯コナン君が出てきた
「工藤⋯言うとくけど⋯
こらメッチャ貸しやからな⋯」
「あぁ⋯わあってるよ⋯」
服部君はあまり音をたてないようにし
コナン君と入れ替わるようにしてベッドへ潜り込んだ
ミラージュで新一君が寝ている幻影をかけるのは簡単だけど
もしその新一君に誰かが触れてしまったら
ソレは実態のないただの幻影だから
触れる事ができずに違和感になってしまう
だから体格の似てる服部君に寝てもらって
服部君を新一君に見せる幻影をかけた
服部君がちゃんとベッドに潜りこんだのを確認して
服部君へ幻影をかけ直し
私とコナン君には透過の魔法をかけた所で
「あ!そうそう、なぁ工藤
寝る前に、ロンドンで毛利に告った時の話を聞かせろよ!」
ギクリと3人の肩が跳ねた
中道君は服部君の寝ているベッドへ近寄ると
ゆさゆさとその身体を揺すってきた
「テレるなよ工藤ォ〜っ
まだ寝てねぇんだろ?」
あっ⋯ぶなっ⋯
やっぱり服部君に来てもらって正解だったわ⋯
「あれか?チューとかしたのか?
答えねぇと布団めくっちゃうぞォ〜?」
コナン君を見ればヤバっとした顔をしていて
もしかして⋯と思い
「コナン君変声期は⋯」
声を潜めてそう尋ねれば
「ふ、布団の中⋯」
チラリとコナン君がベッドの服部君を見た瞬間
ベッドの中から『新一君』の声が聞こえてきた
「オゥ!もちろん一発かましたったに決まってるやろ?
ボケ!!」
は⋯服部君⋯
めちゃくちゃ関西弁っ!
「な、何で関西弁?」
「郷に入っては郷に従えや!
お前らも関西弁使えるようになっとけよ!!」
「あ、オゥ⋯」
「チューしたのかー⋯」
「いいなー⋯」
中道君は羨ましそうにしながら服部君から離れていって
それを見てもうしばらくは大丈夫だろうと服部君のミラージュを解き
魔力の節約の為にもルシッドを解除して
代わりにシージュとミラージュで私とコナン君を包んだ
これなら私達の姿は見えないし声をだしても気づかれない
思わずふぅ⋯とひと息つくと、コナン君は携帯を扱っていて
何かの画像を服部君に送っていた
「それって?」
「あぁ⋯さっき言ってただろ?景子さんが言ってた暗号だよ
実は景子さんの所に行った後、殺人事件が起きてよ⋯」
「えっ!?殺人事件!?」
予想外の事に思わず大きな声をあげてしまい
ハッとして口を抑えた
よ⋯良かった⋯シージュを使っていて⋯
「殺人事件って⋯何があったの?」
「それがー⋯」
それからコナン君に鞍知さんの部屋に行った後の事を聞いた
「ーそれで⋯渡された暗号がこれで⋯
亡くなった西木さんの部屋を調べてる途中で発作が起きて戻ってきたんだけどよー⋯」
コナン君の手元を見てみればいくつかの漢字がイビツに並んでいる紙があって
それを見て首を傾げた
「これ⋯なんだろ?」
「さっきから考えてるんだけど分かんねぇんだよな⋯」
コナン君は暗号の書かれた紙をじーっと見た後
「⋯だめだ!分かんねぇ⋯」
くしゃりと頭をかいて苦い顔をした
「今日はもう寝たら?明日もあるんだし⋯」
「そうだな⋯そういえば桜さんはどうするんだ?」
「私は朝まで起きてるよ
もし夜中に中道君が起きてきて万が一の事があるかもしれないし⋯」
私がそう言うとコナン君は驚いた顔をした後
少し申し訳なさそうに眉をひそめた
「え⋯でもそれは⋯」
「大丈夫だよっオタ活で徹夜は得意だしさっ」
「けど⋯」
「それに⋯今はあんまり、寝れそうにないし⋯」
「え?」
「い、いいから寝るのっ!」
半ば強引にコナン君の身体を引き寄せて
私の膝にコナン君の頭を乗せた
「コナ⋯新一君は私の事は気にしないで修学旅行を楽しんだらいいの!
⋯まぁ殺人事件がおきてる時点でちょっと先行き不安だけど⋯」
「⋯桜さん⋯ありがとな、」
「ふふっ⋯まぁその分新一君と蘭ちゃんのイチャイチャを存分に見て癒させてもらうからねっ」
「ぐっ⋯」
コナン君は恥ずかしそうに頬を染めた後
自分から私に声をかけた手前何も言えないのか
あからさまに話を逸らした
「そ、そういえば桜さん仕事は?
桜さんなんとかするっていってたけど⋯」
「あぁー⋯梓ちゃんと安室さんに土下座して頼み込んだんだ
まぁ2人共文句も言わずに休むのOKしてくれたんだけどね」
2人には阿笠博士の発明の手伝いに少し遠い所に行くと嘘をついた
まさかこのタイミングで京都に行ったなんていえないから京都のお土産は諦めて
2人に別のお礼をする事にしたんだけど⋯
「そういえばコナン君に聞きたいことがあって⋯
今回のお礼に梓ちゃんにはスイーツバイキングを奢るんだけど
安室さんからは⋯
私の⋯『昔の写真』が見たいって言われたんだよね⋯
コナン君まさか⋯
安室さんに私のコスプレ写真の事言ってないよね?」
私がそう言うとコナン君はあからさまにギクリと肩を跳ねさせると
ゆっくりと目を逸らした
「⋯コナン君?何で目を逸らすのかなぁ⋯?」
「ね、眠たくなってきたからそろそろ寝るねっ」
コナン君はゴロリと身体の向きを変え
そっぽを向いてしまった
「こんにゃろっ⋯
はぁ⋯まったくもう⋯」
まぁ今回はゆるしてやろう、とその小さな頭をゆっくりと撫でた
「おやすみ⋯新一君、」