34.御握
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「ちょうど安売りしてて良かった〜
カラスミもちゃんと買えたし⋯」
あのポアロの事件から2日後
私はポアロの買い出しに出かけていた
食材お店に持って行った後どうしようかな⋯
赤井さんと会うのはまだ気まずいから工藤邸には行けないし
阿笠博士の家に遊びに行ってもいいけど
それも赤井さんとエンカウントする可能性があるからなぁ⋯
蘭ちゃんとコナン君とご飯でも行きたかったけど
小五郎さんが大阪でカルタを特集する番組で対談する事になったらしく
2人とも小五郎さんに着いて行ってるし⋯
哀ちゃん以外の少年探偵団の皆も大阪観光したいって着いていったって言ってたっけ⋯
そういえばそれについてく予定だった園子ちゃんは風邪ひいて行けなくなったって言ってたから⋯
それならお見舞いに行こうかな
「あ、そうだ
どうせなら真純ちゃんと一緒に行こうかな⋯」
真純ちゃんに連絡してみようと携帯を取り出そうとした時
「あ⋯雨だ」
ぽつぽつと雨が降り出した
どこかで雨宿りをしようと走り出した瞬間
リンーッ⋯
「ぇ⋯鈴の⋯音?」
頭に響くような鈴の音が聞こえて
ふと、足を止めた
その時またチリンーッと鈴の音が聞こえて
「⋯こっちから⋯?」
その音が気になり
吸い寄せられるように聞こえた方へと足をすすめると
少し歩けば見えてきたのは神社で⋯
その神社には見覚えがあった
「ここって確か梅子ちゃんの所の神社だよね⋯」
そこは前に皆で初詣に行った時に訪れた神社だった
どこから聞こえてきてるんだろうと不思議に思っているとまたチリンッと音が鳴り
その音が神社の中の方から聞こえてきていると分かり
鳥居を1歩くぐった瞬間
チリンッ!!
「ぇ⋯」
鈴の音がいっそう強く頭に響いた瞬間
プツリと私の意識は途切れてしまった
少し早いけど修学旅行の買い出しに出かけていた時の事
「あれ⋯?桜ちゃん?」
ある程度の荷物を揃えてホテルへと帰っていたら
ふと見知った背中を見つけた
「おーい!桜ちゃ⋯」
その背中に声をかけようとしたら
桜ちゃんは近くの神社の鳥居をくぐった後ピタリと動きを止めて
ドサリと両手に持っていた買い物袋を落とした後、ふらふらと中へと進んで行った
その様子に不思議に思い後を着いて行くと
桜ちゃんは更に奥の方へと歩いて行っていた
「桜ちゃん⋯?」
その足取りはどこか虚ろとしていて
心配になり慌てて追いかけると
「桜ちゃ⋯えっ⋯」
たどり着いた奥の広いスペースにあったのは大きな御神木で
桜ちゃんがその前に立ち止まったかと思うと
カッ!とその足元が光り、何かの模様が浮かび上がった
「えっ!?なっ何だこれ!?」
何かの仕掛けか?と困惑していると
ふと桜ちゃんが御神木へと手を伸ばそうとしているのに気づいた、その瞬間
ゾクッ⋯
「なん⋯なんだっ⋯!?」
言い表せないような悪寒を感じ、頭の中で何かが警告音をたてる
何かは分からないけど⋯
これは、ダメだ
ボクは咄嗟に走りだすとその背中に飛びついた
「桜ちゃん!!」
桜ちゃんに飛びついた瞬間
足元の光っていた模様は消え去り、悪寒もなくなった
それにホッと息をつくと
腕の中で力無くボクに寄りかかっていた桜ちゃんが小さく声をだした
「ます⋯み⋯ちゃ⋯」
「!!桜ちゃん!大丈夫か!?」
桜ちゃんの顔を見れば血が通ってないのではと思う程真っ青で
思わず心臓がドキリと跳ねる
「わた⋯し⋯は⋯
なんで⋯」
桜ちゃんはそう呟いて瞳から一筋の涙を零すと
目を閉ざしてしまった
「桜ちゃん!?桜ちゃ⋯って⋯
眠ってる?」
呼吸や脈に異常が無いことを確認しひとまず安堵のため息を零す
このまま雨にうたれたままだと風邪をひいてしまうと思い
桜ちゃんを背負うとタクシーを呼ぶため携帯を取り出した
「桜ちゃん⋯
本当に⋯君は、いったい何者なんだ⋯?」
羨ましい
羨ましい
自分には
何も無い
友も暖かい家族も
愛もしらない
『私』は『お前』が
妬ましい
「桜ちゃん!!」
「ーっ!!」
ハッと目を開けると
そこには心配そうな顔をしている真純ちゃんが
私の顔を覗き込んでいた
「あ⋯れ?
真純ちゃん⋯?」
「良かった⋯目が覚めたんだな」
名前を呼ぶと真純ちゃんはホッと息をついて身体を起こし
私の顔から自分の顔を離した
「何で真純ちゃんが⋯それにここは⋯?」
周りを見ればどこかのホテルの一室のようで⋯
そのベットに私は横になっていた
「ここはボクの借りてるホテルの部屋だよ」
「⋯え!?真純ちゃんの!?」
思わず驚いて起き上がると、自分が見慣れないものに身を包んでいるのに気づいた
「これ⋯バスローブ?」
「桜ちゃん雨で濡れてたから服を脱がせたんだけど
ボクの服じゃサイズが合わなくて⋯」
「濡れて⋯そういえば私、雨が降り出したから雨宿りしようとして⋯あれ⋯?
それからどうしたんだっけ⋯」
「桜ちゃん覚えてないのか?」
真純ちゃんの驚いた様子に困惑しながらも頷けば
真純ちゃんは私の寝ているベットに座って説明してくれた
「雨が降り出した時偶然桜ちゃんを見つけてさ
声をかけようとしたんだけど⋯桜ちゃんふらふらしながら神社の中に入って行って⋯
心配になってあとを着いて行ったんだ」
「神社⋯?」
⋯そういえば⋯意識が途切れる前に鈴の音を聞いて⋯
音を辿って行ったら
あの神社についたんだっけ⋯
でもあの鳥居をくぐった後から⋯記憶がない⋯
でも記憶はないけど⋯
夢を、見ていたような⋯
「その時の事⋯覚えてない?」
「う、うん⋯鈴の音が聞こえて中に入ったんだけど···
それからの記憶がなくて⋯」
「そう⋯なんだ⋯
じゃあ御神木の所であった事も⋯」
「⋯御神木?」
「あ⋯ううん、なんでもないよ
それより目が覚めて良かった⋯
顔色が凄く悪いしうなされてたから心配してたんだ」
真純ちゃんは誤魔化すようにそう言って笑った
それが気になったけど、今は色々と頭が回らなくて
追求する事はせずに真純ちゃんに笑い返した
「⋯ありがとう、真純ちゃん
ここまで運んでくれて⋯着替えまで⋯
あ⋯そういえば私の服は?」
「それならホテルに併設されてるランドリーで今乾かしてるんだ
多分そろそろ終わるだろうから取りに行くよ」
「そうなんだ⋯何から何までありがとう
あの⋯それから⋯もう1つネックレスがついてたと思うんだけど⋯」
今私の首には赤井さんがくれたエメラルドのネックレスしかついていなくて真純ちゃんに尋ねれば
真純ちゃんは「あー⋯」と頬をかきながら立ち上がって少し離れた場所にある机へ歩いて行った
「それならここにあるよ」
そう言って真純ちゃんは机の上にあった夢の鍵を持って来て私に渡してくれた
「良かった⋯ありがとう」
それを受け取ろうと手を伸ばしたら
真純ちゃんは夢の鍵から手を離さずに
私の手を握ってきた
「⋯その鍵ってさ⋯
あの時桜ちゃんが持ってた杖と少し似てるよな」
「え?あー⋯そう、かもしれないね」
誤魔化すように苦笑いすれば
真純ちゃんは1度目を閉じたあと
私の目をしっかりと見ながら言った
「⋯桜ちゃんについて
色々調べてみたんだ」
「え⋯」
「⋯色々分かったよ⋯
そして⋯『分からない事』がはっきりしてきた」
「真純ちゃん⋯」
これは、マズイかもしれないな⋯
そう思っても、真純ちゃんの手を振り払う事は出来なかった
「桜ちゃんが言ってた通り、通り魔に刺された事は本当だと思う
さっき着替えさせる時に見えたお腹の傷は比較的新しいのだったから⋯
でも桜ちゃんを刺した犯人は不自然なくらい見つからないし、目撃情報もない
そして君は記憶喪失⋯
そこで疑問に思ったんだ
桜ちゃん前にギターを弾いた事があるとか
蘭くんに看護師をしていたって話したらしいけど⋯
記憶喪失にしては⋯昔の事を鮮明に覚えているなって思って⋯
君は⋯記憶喪失なんかじゃないんだよな?」
「っ⋯!!」
驚きで目を見開くと真純ちゃんはやっぱり、と言いたげに微笑んだ
「それで近くの病院や施設を調べてみたけど⋯
君が働いていた記録はなかった
他県もできるかぎり調べたけど同じだったよ⋯
そこで君の出自について調べたけど
それさえも、でてこなかった
『過去』はあるのに『記録』がない⋯
それこそまるでいきなり⋯現れたかのように⋯
桜ちゃん⋯
君はいったい⋯
どこから来たんだ⋯?」
真剣に私を見る真純ちゃんの瞳に赤井さんを重ねて
心臓がドキリと跳ねた
あぁ⋯この瞳に嘘はつけない⋯
もう⋯潮時だな⋯
私は自嘲気味に笑って
真純ちゃんの手を包み込んだ
「私はね
違う世界から来たの」
真純ちゃんの目を真剣に見ながらそう言えば
「え⋯」
その目が驚きに見開かれた
「通り魔に刺されたのは本当
でも記憶喪失っていうのは、ごめんね⋯嘘なの
通り魔に刺されて目が覚めた時⋯
私はこの世界に来てた
⋯そしてこの力が使えるようになったの」
目を閉じて手の中の夢の鍵に力を込める
「『夢の力を秘めし鍵よ
真の力を我の前に示せ
契約の元桜が命じる
封印解除(レリーズ)』」
手の中の鍵が杖に代わり
目を開くと驚いた顔をした真純ちゃんと目が合った
「鍵が⋯杖になった!?
ってこの杖⋯あの時持ってた杖⋯?」
驚きながらも杖をまじまじと見る真純ちゃんについ苦笑いする
「真純ちゃん、私の鞄ってある?」
「え?それならそこにあるけど⋯」
真純ちゃんは1度私から離れると私の鞄を持ってきてくれた
「多分だけど⋯中見てるよね?」
私がそう言うと真純ちゃんは気まずそうに目を逸らした
「それは⋯」
「ふふっ大丈夫だよ、そもそも調べてみてって言ったのは私だから」
苦笑いして鞄からカードを取り出し
真純ちゃんに見えるように広げてみせた
「それは⋯」
「これはね魔法のカードなんだ」
「えっ⋯魔法?」
「うん
私は⋯
魔法使いなんだ」
「魔法⋯つかい⋯?」
目を見開きそう呟いた真純ちゃんを見て
思わず苦笑いする
「って言っても信じられないだろうから⋯
実際に使ってみるね
『その姿を現せ、飛翔(フライト)』」
私がそう言うとフライトさんが現れ
私達の周りをくるりと回った後私に頬擦りした
「そ、それは⋯」
「これは空を飛べる魔法なの
私は⋯この魔法のカードを集めてる、
確証はないけど全てのカードを集めると⋯
元の世界に帰れるから⋯」
しばらくの沈黙の後
真純ちゃんは一度ゴクリと唾を飲むとゆっくりと口を開いた
「⋯いくつか質問してもいいか?」
「うん、」
「前にボクとコナン君を狙撃から守ってくれたのはその力で?」
「うん、2人が危ないって気づいて⋯この力で2人の所へ行ったの」
「そっか⋯じゃあ、あの時ボク達が危険だって分かったのも魔法で?」
「へ?」
「前から疑問だった桜ちゃんが遠い距離を短時間で移動していた件は分かったけど⋯
蘭くんから聞いたんだ、桜ちゃんあの時ポアロに居たんだろ?
そこに居たのに何で『ボク達が危険だと分かった』のかずっと分からなかったんだ
あの時コナン君は桜ちゃんに連絡してる様子はなかったし⋯
だからそれも魔法かと思ったんだけど⋯違うのか?」
そっ⋯か⋯
私が2人が危険だと気づいたのは『名探偵コナン』の事を知っているから⋯
でもその真実はいくら真純ちゃんでも⋯
言えない
「⋯えと⋯魔法の一種、なのかな⋯
ここに来て魔法を使えるようになってから
たまに予知みたいに未来が見える事があって⋯
あの時も2人が危ないって未来が見えて
それで急いで駆けつけたんだ」
「そう、だったんだ⋯
そっ⋯かぁ⋯魔法使い、か⋯」
また嘘をつくのは心苦しかったけど
あながち嘘でもないと自分を納得させそう言うと
真純ちゃんはまるで自分を納得させるかのようにそう呟き
ポスリと私の寝ているベットに座った
「信じて⋯くれる⋯?」
「信じるもなにも⋯
こうやって目の前で見せられちゃね⋯
それにしても⋯
ふふっ⋯あははっ」
「真純ちゃん?」
いきなり笑いだした真純ちゃんをキョトンとして見つめると
真純ちゃんは笑うのを止めて優しい目で私を見つめた
「ごめんごめん、桜ちゃんを笑った訳じゃなくて⋯
⋯まさか魔法使いに2度も会うなんてって思ってね」
「え?2度、も⋯?」
「まぁ1度目は桜ちゃんみたいに本物の魔法使いって訳じゃないんだけどね」
⋯それって、もしかして⋯
「その話⋯良かったら聞かせてくれる?」
「⋯うん、」
小さな名探偵を思い浮かべ真純ちゃんにそう言えば
真純ちゃんは少し嬉しそうに返事を返してくれた
「その代わり桜ちゃんの魔法についてもう少し詳しく教えてくれるか?」
「もちろ⋯」
もちろんと返事をしようとしたその時
ぐぅぅ⋯
と私のお腹の音が部屋に響き渡った
「⋯⋯」
「⋯⋯ぷっ⋯
あははっ!その前に何かルームサービスを頼もうか」
「うぐぅ⋯おかしいなぁ⋯朝ちゃんと食べたのに⋯
買い出しのために早起きしたからかな⋯
ってああっ!真純ちゃん私の買い物袋って⋯」
「それなら向こうにあるよ
冷蔵庫に入れた方がいいものはとりあえずこの部屋の冷蔵庫に入れてるから安心して」
「良かった⋯」
「結構量があったけどお店の買い出しだったのか?」
「うん、⋯あ、そうだ⋯前に真純ちゃんにお弁当作るって言って作れてなかったから
今日のお礼に今度お弁当作って持ってくるね」
「え!?いいのか!?やったっ!」
真純ちゃんはそう言って嬉しそうに立ち上がると
扉の方へ歩いて行った
「じゃあボクはルームサービスを頼むついでに桜ちゃんの服を取りに行ってくるよ」
「うん、ありがとう
あっ真純ちゃん!」
「ん?」
手招きすると真純ちゃんは素直に戻ってきて
その手を引っ張りあの時⋯病院でした時のようにコツリ、と真純ちゃんの額と自分の額を合わせる
「桜ちゃん⋯?」
「これだけは、伝えておきたくて⋯
これから先この力の事で迷惑かける事があるかもしれない
でもね
真純ちゃんも私の大好きな人の1人だから
だから、何があっても⋯
真純ちゃんを守るって約束するよ」
真純ちゃんの目を見て微笑めば
「桜、ちゃん⋯」
真純ちゃんはポカンとした後
頬を赤く染めた
真純ちゃん照れてる⋯可愛いなぁ⋯
「それじゃあ私の服お願いしてもいいかな?」
「へっ!?えっあ!うんっ!す、すぐ戻ってくるよ!」
真純ちゃんから顔を離しながらそう言うと
真純ちゃんはハッとした後慌てて部屋を出ていった
手を振ってそれを見送り
パタンと扉が閉まり真純ちゃんの姿が見えなくなったら途端に部屋が静まり返り
おもわず小さなため息をついた
「⋯私⋯なんで気を失ったんだろう⋯
そういえば前もあの場所で、途中で意識がなくなったような⋯」
あの時は⋯赤井さんにあそこにはもう近寄るなって言われたんだっけ?
詳しく聞いてなかったけど
あの時⋯何でああ言ったんだろう⋯?
でも赤井さんに話を聞こうにも⋯
水族館での赤井さんの瞳と言葉を思い出し
ボッと顔が赤くなるのを感じ
その考えを振り払う様にブンブンと頭を振るとボスリとベットに身体を埋めた
「とりあえず⋯今は考えるのはやめよう⋯
はぁ⋯真純ちゃんにもばらしちゃったなぁ⋯
これはコナン君から説教コースだ⋯
でも⋯」
もう1つの本当の事は話せないけど
「⋯話せて⋯良かったかな⋯」
少しだけ
肩の荷が降りた気がした
あれから桜ちゃんとボクの昔話と
桜ちゃんの魔法の事について詳しく聞いてたりしていたら結構な時間が経ってしまい
荷物をお店に持っていかないといけないと桜ちゃんは帰って行った
「はぁ⋯」
パタンと扉が閉まった後、思わずため息をつくと
「⋯行ったか」
「⋯ママ、」
クローゼットに隠れていたママが身なりを整えながら出てきて
さっきまで桜ちゃんが寝ていたベットに座った
「ボクは桜ちゃんが嘘ついてるようには見えなかったけど⋯ママはどう思う?」
「コホッ⋯あぁ⋯あの様子ではあの話は本当だろう
自分の身体が幼くなるという事がおきている以上⋯
魔法使いの存在も認めざるを得ない⋯
それに実際に見せられたからな⋯」
「だよね、それにしても魔法使いかぁ⋯
予想の斜め上すぎてびっくりしたけど何だかワクワクしてきたよっ」
ポスリとママの隣に勢い良く座ると
ママは小さく咳き込んだ後足を組んだ
「コホッ⋯真純、あの子になるべく近づいておけ
そして使えそうな魔法が手に入ったらまた連れてくるんだ」
「⋯それって桜ちゃんを利用するって事?」
「そうだ」
「⋯ボクとしてはあんまり桜ちゃんを利用するなんてしたくないんだけど⋯
分かったよ、ママ⋯
それにしても⋯話してた通り桜ちゃん可愛かっただろっ?」
笑いながらそう言えばママは何かを考える仕草をした後顔を上げた
「あぁ⋯真純は秀一と好みが似ているんだな」
「えっ?秀兄と?」
「あの子は秀一が幼い頃気に入ってた子と雰囲気が似てる⋯
やはり兄妹だな」
そう言ってどこか嬉しそうに微笑んだママに
自分も嬉しくなってパタパタと足を動かした
「そっかぁ⋯秀兄と⋯」
「⋯だが真純⋯気をつけろ、」
「⋯ママ?」
ふと足を動かすのを止めて隣を見れば
ママが真剣な目でボクを見ていた
「あの子はまだ⋯
何かを隠している」