32.火焔
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翌日
米花水族館に私は昴さんと来ていた
「お手をどうぞ⋯お姫様?」
「ゔっ⋯そ、それ調子狂うんでやめて下さい⋯」
車の助手席から降りようとしたら昴さんが手を差し出してきて
戸惑いながらもその手に自分の左手を重ねれば優しく引っ張られ車から降りた
「それにしても⋯やはり今日の桜さんは一段と美しいですね」
「うつっ!?⋯だ、だからからかうのやめて下さいってばっ」
「からかってはいないんですが⋯まぁ、いいでしょう」
「ゔー⋯」
今日の昴さんは何故かいつもと違ってこんな感じで事ある毎に私を褒めてくる
それに照れて思わず繋がれていない方の手で頬を包めば
「そのワンピース⋯とても似合ってますよ」
耳元でそう囁かれバッと距離をとろうとしたけれど
繋がれた手にそれ以上離れる事ができずに
思わずキッと昴さんを睨んだ
「フッ⋯真っ赤だな、」
「だ、誰のせいだと⋯」
「さぁ⋯誰でしょうね?では行きましょうか」
グイッと昴さんに手を引かれて私達は米花水族館へと足を踏み入れた
昨日昴さんからデートをしないかと言われて
てっきりそう言いながら何かの捜査をするんだと思っていたけれど⋯
今日の朝、目覚めたら何故か有希子さんが居て
「さぁ桜ちゃん⋯今日は気合いを入れるわよ!!」
目をギラギラさせた有希子さんに
あれよあれよとメイクをされ
髪は緩く巻いたあとハーフアップにし赤いリボンをつけられた
そして用意されていたのは首元から袖にかけてレースになっている
Aラインが綺麗なフレアワンピース
腰回りをリボンで結ばれたそのワンピースは動けば裾が膝上でふわりと揺れ
その様子は上品でありながら可愛さもある
流石有希子さん⋯センスがいい⋯
でもこれ、いくらしたんですか⋯
そんな事は聞けずに
「行ってらっしゃ〜いっ」
とにっこにっこで見送りに出てきた有希子さんに
「⋯行ってきます」
と言うしかなかった
「あと40分後にイルカショーがあるんで
少し見て回ってからショースタジオに行きましょうか」
「は、はい⋯」
昴さんは何でいきなりデートなんて言いだしたんだろう⋯
この水族館で調べて欲しい事があるとかかな⋯?
でもそれだったらコナン君連れて来た方がいいと思うんだけど⋯
それとも私の力が必要な事があるとか⋯?
分からない⋯
昴さんの考えが読めないまま
とりあえず手を引かれその後をついて行った
「わぁっ!!昴さん見て下さいっ!!凄い魚の数!!」
「クラゲがライトアップされてる!!きれ〜っ」
「チンアナゴだっ!!かわいい〜っ」
「蟹っ!!昴さんこの蟹めちゃくちゃ大きいですよっ!!」
「昴さんっ昴さんっ!!
クマノミですよ!!ニモですよっ!!
わぁっ!こっちにはドリーも⋯
って、何普通に楽しんでんだ私いぃぃっ!!」
ゴンッと壁に頭を打ち付ければ昴さんが不思議そうに私の顔を覗き込んできた
「何やってるんですか?桜さん」
「ぐっ⋯水族館なんて小学生の時以来だったからついはしゃいじゃった⋯
じゃなくて!!
昴さん、私をここに連れてきたのには何か理由があるんですよね?」
「⋯理由?」
不思議そうに左手を顎に添えて少し首を傾げる昴さん
その様子に私も首を少し傾げた
「え?えっと⋯何かここで調べて欲しい事とか
私の力が必要な事があったからデートなんて言って私をここに連れてきたんじゃ⋯」
すると昴さんは私の言いたい事が分かったのかフッと笑うと
グイッと私の手を引き歩き出した
「だから⋯デート、ですよ」
「⋯へ?⋯」
「今日は完全なプライベートなので⋯
桜さんをデートに誘ったんです」
「丁度いい席が空いてて良かったですね」
「あ、はい⋯」
昴さんに手を引かれて着いたのはイルカショーが行われるスタジオで
真ん中の後ろから3列目の席に座りショーが始まるのを待つ
「⋯⋯」
⋯あれは、どういう意味だ?
別に私の力が必要な訳じゃなくて⋯
完全なプライベート⋯?
つまりそれは昴さんが私的に私を誘ったって事で⋯
それじゃあ⋯これって本当に
デートになるんじゃ⋯
その時
『皆さーん!!いよいよお時間がやってきました!!』
スピーカーから音楽が流れだして
トレーナーのお姉さんとお兄さんがステージに立ち
イルカショーが始まった
「イルカショー凄かったですねっ!!昴さんっ!」
「えぇ、特にあのイルカがトレーナーを鼻に乗せるパフォーマンスは感心しました」
「そこっ!私も凄いなって思ってました!!
その後の1番大きいイルカのキュイちゃんがボールをヒレで持ってトレーナーさんの所に届ける所なんて可愛いくって⋯
って、違ぁぁぁう!!」
ゴンッとまた壁に頭を打ち付ければ昴さんが不思議そうに見てきた
「桜さん?」
「ぐっ⋯地味に痛かった⋯
じゃなくて⋯あのっ⋯昴さん⋯
何で⋯私をデートに誘ったんですか?」
「何故?」
「だ、だって⋯その⋯デートって言えば⋯その、だって、ジョディ先生がいるし⋯
私を誘うメリットなんて⋯」
隣に連れて歩くなら私のようなちんちくりんではなく
ジョディ先生の様な魅力的な女性の方がいいだろう⋯
そう思いもごもごとしながらそう言えば
グイッと昴さんから手を引かれた
「昴さん?」
「⋯桜さんに来て欲しい所があるんです」
「来て欲しい所⋯?」
何処だろう?と不思議に思いながら昴さんに着いて行けば
ガラスがトンネル状になっている空間にたどり着いた
「わぁっ⋯凄い⋯きれい⋯」
上から当たる光がキラキラと魚達を照らしていて
その幻想的な空間についため息をつく
「こっちですよ」
更に昴さんに手を引かれて奥まった所へ行くと
そこはガラスがドーナツ状にくり抜かれているドームになっている場所だった
外側のガラスには沢山の魚が泳いでいたけれど
中心の筒のようになっているガラスには何も泳いでおらず不思議に思ってペタリとそのガラスに手をつく
「ここには何も居ないんですね?」
「その中央のガラストンネルはたまにアザラシが通るみたいですよ」
「えっ!?何それ見たいっ!!」
わくわくしながらアザラシが通るのを待っていると
トンッ
と顔の両隣りに昴さんの手が置かれ
振り返れば昴さんがジッと私を見ていた
「すばる⋯さん?」
ふと気づけば、周りに居た人達は居なくなっていて
このスペースに居るのは私達だけになっていた
昴さんは何も言わずに私を見ていて
その瞳にいつもと違う雰囲気を感じ
胸がドキリと跳ねた
「あ⋯の⋯えと⋯あ、アザラシ中々通りませんね〜っ」
変になった空気を変えようとなるべく明るく声を出す
すると
「こういうのって待ってるとなかなか⋯!!」
昴さんに
抱きしめられた
「す、すばるさんっ!?」
いきなりの出来事に恥ずかしさと困惑と緊張でワタワタしていると
昴さんはしばらくの沈黙の後
「⋯すまない」
絞り出すような声でそう言った
「⋯ぇ⋯」
「君に、無理をさせてしまった」
「昴⋯さん⋯」
身体を少し離して私を見る昴さんの顔は苦しそうに歪められていて
コツリと私の額に自分の額を合わせると昴さんは目を閉じた
「⋯俺が君に頼らなければ⋯あんな事にはならなかった⋯
これは俺の落ち度だ⋯
すまない⋯」
「!!違うっ!!昴さんのせいじゃないっ!!」
その言葉に思わず昴さんの胸元のシャツを握り声を荒らげていた
「昴さん⋯きっと私が皆の力になれてないって落ち込んでるのに気づいて⋯
ああ言ってくれたんですよね?
私は、昴さんが頼ってくれた事が嬉しかった
それを後悔なんてしてないし
私がああなったのは私の力量不足だったから⋯
だから⋯謝らないで下さい」
そっと昴さんの頬に両手を添えて微笑む
「それに⋯あの人を死の運命から助けられたのは⋯
昴さんのおかげでもあるんですよ
だから⋯
ありがとうございます⋯昴さん」
「桜⋯」
「それでも思うことがあると言うなら⋯
50︰50(フィフティー・フィフティー)って事にしましょっ?」
笑いながらそう言えば昴さんは一度目を見開いた後
フッと笑ってまた私を抱きしめてきた
「君は何処までも優しいな⋯」
「ふふっそんな事ないですよっ⋯」
昴さんの背中に腕を回して
ありがとう、という気持ちを込めてギュッと力を込めた
すると
「わっ⋯」
「お、お邪魔しましたっ!!」
「⋯へ?」
第三者の声が聞こえてドームの入り口の方を見ると大学生くらいの女の子2人組が私達を見た後
慌ててこのスペースから出ていった
「⋯どうしたんだろう?」
「⋯まぁ、傍からみたらイチャついてるカップルですからね」
そう言われて昴さんをみれば
至近距離にある昴さんの顔
昴さんの手は私の背中に回されていて
私の手も昴さんの背中に回している
「⋯⋯」
「⋯⋯桜さん?」
「アギャス!!」
ゴンッ!!
我に返って思いっきり仰け反った私は
ガラスで後頭部を打撲した
「〜ったぁ⋯」
「大丈夫ですか?」
余りの痛さに両手で後頭部を押さえようとしたら
シャラッと
首元で何かが揺れた
「へ?」
ふと下を見ると
見た事のない小さな星型の⋯
綺麗なエメラルドグリーンの宝石がついたネックレスが首についていた
「これ⋯」
「お詫びに僕からプレゼントさせて下さい」
「え⋯昴さんが?」
いつの間につけたんだ⋯この人
って言うか⋯
「そ、そんなっ!悪いですよっ
それに昴さんのせいじゃないし
第一こんな高価そうなものもらっ⋯んむっ」
貰えない、と言おうとしたら
昴さんはフッと笑って私の頬に手を添え
親指で私の唇を優しくなぞって
私の言葉を止めた
「これぐらいは、させてくれ⋯」
そう言って目を細める昴さん
その瞳は何時もと違い、どこか熱を持っていて⋯
その妙な色気にカァッと頬が熱くなり
思わずコクリと頷けば
昴さんは「いい子だ」と頬から髪へと手を滑らせ
髪をひと房とると
「You are the love of my life⋯」
ちゅっ
と軽いリップ音をたてて
その髪にキスをした
「〜っっ!!」
もはや言葉にならない声を上げると昴さんが私の後ろを見て「あ」と呟いた
「桜さん、アザラシが来ましたよ」
いや、もうそれどころじゃありません⋯
通り過ぎて行ったアザラシを見届けた後
そのスペースから出れば
「バカねー!!ちゃんと付けてたわよスポーツブラ!!」
「え?蘭ちゃん?」
蘭ちゃんの声が聞こえてトンネル通路の方を見れば
そこには蘭ちゃんと少年探偵団の皆が居て
蘭ちゃんは携帯を耳に当てて顔を赤らめていた
って言うか今凄いことこの公衆の面前で叫ばなかったか⋯蘭ちゃん
「それにバックホックのブラだって⋯
こうやって前で留めて⋯クルクルッと回せば⋯
ーって⋯何言わせんのよバカァー!!
あ⋯切っちゃった⋯」
何で蘭ちゃんがここにいるのかはさておき⋯
きっと今の通話相手はコナン君だろうな⋯
一体何を言ったんだ、と呆れていると
昴さんが私の耳元で囁いた
「女性の中ではブラジャーを前で止めてから後ろに回す人もいますが⋯
桜さんは毎回きちんと後ろで止める派ですもんね」
「ぇ⋯なっっっ!!!?!?」
思わぬ昴さんの発言に顔に血液が集まるのが自分でも分かった
「ななな、なっ!?なん、それっ⋯知って⋯」
「⋯おや?当てずっぽうに言ったんですが⋯
合ってましたか?」
昴さんはくすりと笑うと蘭ちゃんの方へ歩き出した
かっ⋯からかわれたっ⋯
頭が回転せずにその場で立ち尽くしていると
「⋯やっぱり昴さん俺達に気づいてたな⋯」
「!!コ、コナン君っ⋯」
後ろからコナン君がやってきて私の隣に立った
「えええ、えっと、ちょっと今色々パニックなんだけど⋯
とりあえず何でコナン君達ここにいるの?」
「昨日昴さんが桜さんをデートに誘ったのを見て園子が尾行しようっていいだしてよー⋯
まぁ肝心のあいつは京極さんが急遽帰ってきたって来てねぇけど⋯」
「⋯尾行て⋯全然気づかなかった⋯
でも何で少年探偵団の皆まで⋯」
「それは灰原が桜さん達の後をつける気満々だったから⋯
それに元太達が便乗して来る事になったんだ」
「そ、そうだったんだ⋯」
ポカンとしていたけれど
ふとさっきの昴さんの言葉を思い出してコナン君の隣に屈んだ
「ねぇコナン君、えっと⋯
ゆー あー ざっ⋯らぶ⋯おヴ⋯まーらい?
って何て意味?」
「え?」
私の拙い英語とリスニング力では上手く伝わらなかったのか
もう1度それっぽく昴さんが言ってみたように伝えてみれば
「⋯それって⋯『You are the love of my life』
じゃなかった?」
「そうそう!!それ!!そんな感じだった!!
それって何て意味?」
するとコナン君は一瞬キョトンとした後
ボッと顔を赤らめると私の服の裾を引っ張ってきた
「⋯そ、それってもしかして昴さんがそう言ったの?」
「え⋯そうだけど⋯」
「⋯ちなみに桜さん⋯その首元のネックレスって昴さんから?」
「え?う、うん⋯この間のお詫びってさっき貰って⋯
その時にさっきの英語言われたんだけど分かんなくて⋯」
「昴さん⋯本気なんだ⋯」
「へ?ほ、本気ってなにが?
ねぇコナン君っどういう意味なの?」
「あー⋯いや⋯僕の口からはちょっと⋯」
コナン君はそういうと気まずそうに私から視線を逸らした
「ええっ!?き、気になるんですけど⋯」
結局答えは教えてもらえず
その後蘭ちゃん達と合流して皆で水族館を楽しんだ
「ね、ねぇ桜さん⋯」
「?なぁに?蘭ちゃん」
「さっき昴さんとあそこで何してたの⋯?」
「⋯へぁ!?え、あの⋯別にただ話してただけっていうか⋯」
「桜さん顔真っ赤⋯」
「うっ⋯あ、赤くないもんっ」
「私抱き合ってたように見えたんだけど⋯」
「!?み、みてっ!?」
「それでっ!!その⋯その時、もしかして⋯
キスしたり⋯してた?」
「⋯へ⋯⋯キキキキキキキスっ!?!!!?
してない!!してない!!してにゃいからっ!!」
「桜さん凄い動揺っぷり⋯
見えずらかったけどやっぱりあの時キスしてたんだ⋯」
「ねぇ!?蘭ちゃん聞いてる!?」
「これは園子に教えないとっ!!」
「蘭ちゃん!!お願いだから聞いてっ!!」