28.業火の向日葵
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とある日
早起きしてしまった私は仕事前に買い物を済ませた後ゲームセンターで暇を潰していた
ボーッとクレーンがフィギュアの箱を持ち上げるのを眺め
アームが緩くなり、ガコッと穴に落ちる事なく落下したそれを見て
はぁ⋯とため息をつく
「今日は駄目な日だ⋯もうやめよ⋯」
変な所に落ちてしまったフィギュアをボーッと眺め
安室さんの事を思い出していた
私が安室さんの前で大泣きしてから
安室さんは何かと私の事を気にかけてくれて
頻繁に連絡をくれるようになった
情けない姿を見せてしまった事はもの凄く恥ずかしいし
私の気持ちを聞いてくれた安室さんに申し訳ないとも思ったけど
けど、それ以上に嬉しくて⋯
あの日の事を思い出すと自然と笑みが浮かんでくる
それはいいとして、気になっているのは
最近、安室さんと話してると⋯
なんだか、胸が⋯
「あー!!桜お姉さんだっ!!」
「えっ⋯」
歩美ちゃんの可愛い声が聞こえて振り返ると
「歩美ちゃんっ!それに皆も⋯皆で遊んでたの?」
そこには少年探偵団の皆が揃っていた
「うんっ!!」
近寄ってきた歩美ちゃんの頭を撫でながらコナン君達を見るとサッカーボールを抱えてこっちへとやってきた
「近くの公園でサッカーして遊んでて···今から阿笠博士の家に行くところだったんだ」
「そうなんだ」
「桜さんは?今日はポアロ休み?」
「ううんお昼からの仕事だよ
だから今から向かうつもり
ここにはちょっと買い物に来てたの」
「買い物⋯って⋯ここゲームセンターだよ?」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯桜さん⋯」
「ち、違うって!!本当に買い物は別にあったし
ついでに寄っただけだから!!
別に欲しいフィギュ⋯物があったとかそんなんじゃないからっ!!」
「⋯⋯」
「うぅ⋯コナン君の視線が冷たい⋯」
コナン君の視線にしょんぼりしていると
歩美ちゃんがふと隣に置いてあった台を見て大きな声を出した
「あ!!この占いゲーム前にもやったことあるよねっ」
「占いゲーム?」
そこを見れば随分と古そうなゲーム台があった
説明を見れば自分や相手の生年月日を入力することで運勢や相性を占えるゲームみたいで⋯
懐かしいなぁ⋯こういうゲーム私も昔やったことあるっけ
「そうだ!!歩美が桜お姉さん占ってあげる!!
桜お姉さんの誕生日っていつなの?」
「私はねーっ」
思い出に浸っていると歩美ちゃんからそう言われて隣に屈んで誕生日を教える
すると画面のカードが何回かめくれた後
「Aの予感⋯?」
『Aの予感♡』とオシャレなフォントが浮かび上がった
Aって⋯あのABCの⋯?
いやいや⋯何年前のゲームよこれ⋯
「Aの予感⋯?あ!これ前にコナン君を占った時にも出たよねっ」
「え、そうなの?コナン君」
「へっ!?あ、あぁ⋯」
ふとコナン君をみれば僅かに頬を赤らめていて⋯
そういえば⋯映画の話で息が出来ない水中で蘭ちゃんがコナン君に空気を送るためにキスするシーンがあったっけ⋯
「⋯ま、私に限ってまさか⋯ね」
コナン君と別れた後ポアロに向かって梓ちゃんと交代し安室さんとマスターと一緒に仕事をしていると
いつものJK3人⋯梅子ちゃん達がポアロにやってきた
「桜お姉様こんにちはっ」
「梅子ちゃん、2人もいらっしゃい
いつものコーヒーでいい?」
「お願いします」
「あとチーズケーキ2つと」
「アップルパイ1つお願いしますっ」
「はーいっ」
カウンターに座った3人に珈琲を準備している間
梅子ちゃんがスマホのテレビをつけてニュースを見ていて
「あら、もしかしてその人⋯梅子と同じ高校の⋯
鈴木園子さん⋯だったかしら?」
皐月ちゃんのその言葉につられて梅子ちゃんを見れば
興奮したように2人に画面を見せていた
「そうそう!!この間友達が話してたから気になっててさーっ
まさかテレビ出演するなんて凄いよねっ」
「まぁ鈴木さんは財閥のお嬢様だからね」
「へぇ⋯世界中のひまわりを集めた展覧会をするそうね⋯さすが鈴木財閥」
準備をしながらチラリと画面を見れば
ニュースキャスターが次郎吉おじ様があのゴッホのひまわりを史上最高額⋯3億ドルで落札したと話していて
その記者会見の様子をニューヨークから生中継をしていた
3億ドルって日本円にしたらいくらだ⋯?
「⋯考えたくないな⋯」
次郎吉おじ様の金銭感覚に恐怖を抱いていると
ズキッ
「っ⋯痛っ⋯」
ふいに頭が痛くなって手で抑えると
『キャアア!!』
そんな悲鳴がスマホから聞こえて驚いてそっちを見れば
画面は何かを映そうと揺れていて
その一瞬画面に捕らえたのは⋯
「!!」
間違いない⋯あれは怪盗キッドだ!
またズキリと頭が痛み、慌てて梅子ちゃんの隣に行きそのスマホをガシリと掴んだ
「梅子ちゃんもっと見せて!!」
「は、はいっ」
それからカメラは怪盗キッドの姿を捉えることは無く中継は中止されて
しばらくしてからニュースキャスターが目的は不明だがキッドが現れ、逃亡したと報道された
快斗君が何であんな所に⋯?
今回次郎吉おじ様が落札したのは宝石じゃない、絵画だ
快斗君は宝石しか盗まないはず⋯
宝石以外を狙うのなら⋯
それはよっぽどの理由があるんだ
それにさっきから止まらないこの頭痛⋯
多分、これから何かが起こるはず
確か園子ちゃんは明後日日本に帰ってくるって言ってたよね⋯
何かあった時の為に、傍にいなくちゃ⋯
「あ、ごめんね梅子ちゃんっ急にスマホ掴んじゃって⋯」
「いえっ!桜お姉様も怪盗キッドのファンなんですね」
「あはは⋯ま、まぁね⋯」
笑って誤魔化しながら珈琲を提供した後
会計作業の終わったマスターにこっそりと声をかけた
「あの⋯すみません、マスター⋯」
「ん?どうしたんだい?桜ちゃん」
「実は明後日急用が入っちゃって仕事来れそうになくて⋯」
「え、そうなんだ⋯」
「いきなりすみませんっ」
「いやいや、桜ちゃんいつも真面目に働いてくれてるから大丈夫だよ
怪我もまだ治ってないんだし⋯
気にしないで、梓ちゃんには僕から言っておくから」
頭を下げるとマスターは優しく笑いながらそう言ってくれた
「マスター⋯ありがとうございますっ」
ホッと息をつくと後ろからポンと肩に手が乗せられて
思わず隣を見れば安室さんが居て、近い距離にドキリとしたと同時に
安室さんが申し訳なさそうにマスターの方を見て話しかけていた
「⋯マスター、実はその桜さんの急用に僕もついていかないといけなくて⋯」
「え?そうなのかい?」
「えっ!?いや⋯」
「そうですよね?桜さん⋯?」
マスターと私の間に顔を挟んだ安室さんはにっこりと笑っていて⋯
「は⋯はい⋯」
冷や汗を流しながらこくりと頷いた
「なのですみません⋯明後日僕もお休みを頂いてもよろしいですか?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
こ、こわいって⋯安室さん⋯
その後、ポアロの営業を終え
帰る場所が一緒の為必然的に安室さんに車で送って貰うことになり
車に乗り込んだ後何故あの時あんな事を言ったのか尋ねると
安室さんは運転をしながら答えてくれた
「桜さんあのニュースを見た後、頭を抑えてましたね?
それにあの食いつきよう⋯
以前事件と関係があって思い出せない時に頭痛がすると言っていたので⋯
桜さんの事だからそれを確かめに行くのではないかと思ったんです
⋯違いますか?」
「う⋯」
ほんと、安室さんには敵わないな⋯
「⋯ちなみに安室さん」
「なんですか?」
「3億ドルって日本円にしたらいくらですか?」
「⋯⋯知りたいですか?」
「あ、やっぱいいです」