27.幻影
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「ふぁあ⋯」
「桜さん寝不足ですか?」
「へ?」
お客さんも引いてきたお昼すぎの事
寝不足気味だった私が思わず欠伸をすると
隣でサンドイッチを作っていた安室さんから声をかけられた
「えっと⋯実は昨日園子ちゃんの彼氏が日本に来てて⋯
その時ちょうどまた次郎吉おじ様の所にキッドの予告状がきて
園子ちゃんキッドファンじゃないですか
それで園子ちゃんがはしゃいじゃってるのを彼氏君が見て嫉妬しちゃって⋯
キッドの防犯システムとして採用してもらう⋯ってまぁなんやかんや色々とひと悶着がありまして⋯」
「園子さんの彼氏さんって⋯確か空手家で⋯
世界大会400戦無敗の蹴撃の貴公子と呼ばれてる⋯
京極真さんでしたよね?」
「桜ちゃんあの京極さんに会ったんだ!!」
「うん、園子ちゃんから紹介したいって言われて⋯
蘭ちゃんとコナン君と一緒に昨日行ってきたの
それで寝るのがちょっと遅くなっちゃって⋯」
快斗君が心配で着いて行ったけど
まぁお互い酷い怪我はしなくて良かったよ⋯本当、
「てっきりまた深夜アニメ見て寝不足なんじゃないかと思ったよ」
「う⋯前科があるから何も言えない⋯」
「あ、そうだ!!そういえばこの間この辺りに雹が降ったじゃない?」
ギクリと思わずコップを洗っていた手に力が入る
「その時に凄い音がしたらしいんだけど⋯
結局どこから音がしたか分からないままなんだって」
「そ、そうなんだ⋯」
苦笑いしているとお客さんから呼ばれた梓ちゃんがカウンターから離れていって
思わず安堵のため息をつくと隣からクスりと笑う声が聞こえた
「⋯桜さんは嘘をつくのが苦手ですよね」
「う⋯」
「まぁ桜さんのいい所でもありますけどね」
「それ褒めてるんですか⋯」
ジロリと安室さんを睨むと、サンドイッチの盛り付けが終わったのかトレーを持ち上げ
「心外だなぁ褒めてます⋯よっと
では僕はこれを毛利先生の所に持っていきますね」
「⋯はーい」
そう言うとポアロを出ていった
「⋯もうっ」
「桜ちゃんブレンドコーヒー1杯お願い
温度は熱めでお願いしますだって」
「あ、はーいっ」
梓ちゃんから声をかけられて私は手を拭いた後コーヒーカップへと手を伸ばした
「ブレンドコーヒーでごさいます
お熱いのでお気をつけて飲まれて下さいね」
「ありがとね、桜ちゃん」
常連の男の人にコーヒーを提供した時だった
勢いよく扉が開きベルがガランッと激しく音をたてて
思わず扉の方をみれば
「んだぁ〜?ずいぶん小洒落たカフェだなぁ〜」
顔を真っ赤にさせた⋯明らかに酔っぱらいの男がフラフラと足取り悪く中に入ってきた
「そこのねーちゃん!!酒くれ!!酒!!」
「え、えっと⋯ここは喫茶店なのでお酒は⋯」
「んだぁ!?酒がだせねーってのか!?」
「ひぇっ⋯」
近くにいた梓ちゃんに絡む酔っぱらいの男
異質な存在に店内は静まり返り
私は咄嗟に梓ちゃんの手を引いて私の後ろに隠した
「⋯桜ちゃ⋯」
「梓ちゃんは下がってて
⋯お客様、当店は喫茶店ですのでお酒はありませんが美味しいコーヒーがありますので⋯いかがですか?」
「んなもんいらねぇよ!!いいから酒だせ!!」
「そうですか⋯是非コーヒーを飲んで酔いを覚まして欲しかったのですが⋯残念です
では⋯おかえりください」
にっこりと笑って手をスっと出入口の方へ差し出す
「はぁ!?俺はお客様だっつーの!!いいから酒だせ!!
ないならそこの女!!買ってこい!!」
梓ちゃんに指を指して指図する酔っぱらい
なるべく冷静に対応しようと笑顔を作っていたけれど
「とろとろしてんじゃねーよ!!ブス!!」
⋯カチンッ
その酔っぱらいの暴言に
スっと笑顔が消えた
「何度も言いますがここは喫茶店です
仮にあったとしても従業員に暴言を吐くような酔っぱらいにお出しするものはありませんし貴方はお客様でもなんでもありません
これ以上騒がれるなら警察を呼ばせていただきます
どうぞお帰りになって下さい」
「っ⋯バカにしやがって!!」
その私の態度が気に入らなかったのか酔っぱらいからドンッと肩を突き飛ばされて
構えていたはずなのによろけてしまい
梓ちゃんを巻き込んで倒れ込む
それに周りのお客さんが小さな悲鳴を上げた
「った⋯」
この酔っぱらいっ⋯絶対許さ⋯
ギロリと睨みながら男を見ると
男は隣のテーブルにあった珈琲を掴み
その中身を私たちの方へぶちまけようとしていた
それはさっき提供した珈琲で
常連さんの好みで普段より熱い温度で提供してある
あれがかかれば確実に火傷するだろうけど
止めるにも間に合わないと悟り
「っ!!」
咄嗟に梓ちゃんを守ろうとその頭を胸に抱え
男になるべく私の背を向けてぎゅっと抱きしめる
バシャ!!
確かに⋯珈琲がかけられた音が聞こえたのに
私の身体は熱くない
いや⋯熱くはないけど、暖かい物に包まれていた
「大丈夫ですか?桜さん、梓さん」
「ぇ⋯」
聞こえた声に振り返るとそこには
「あ⋯むろ⋯さ⋯」
にっこりと笑う安室さんがいた
呆然とその顔を見ていると
ゆっくりと安室さんが立ち上がり私達に背を向ける
その背を見てひゅ⋯と息を飲んだ
「刑法第二百四条⋯
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する⋯
貴方のした行為は十分、傷害罪にあたります」
彼によく似合う白のニット服
「は⋯はん!!そっちが俺に逆らったのが悪いんだ!!
喫茶店の店員風情が!!」
その白い背は
茶色に染まっていた