26.氷雹
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次の日
マスターと梓ちゃんは病み上がりの私を気遣ってくれて
午前中までの仕事を終えた私は
ピンポーン⋯
工藤邸に来ていた
「ちょっと遅れちゃった⋯皆もう来てるよね⋯」
ソワソワしながら玄関が開くのを待っていると
中からコナン君が顔を出した
「いらっしゃい、桜さん
遅かったね?」
「ごめんね?ちょっとポアロが混んでて⋯中々上がれなかったの」
「そっか、もう皆揃ってるから中に入りなよ」
コナン君に招き入れられて中に入ると
皆は洗面所に集まっているらしく
ひょっこりと顔を出すとちょうど有希子さんが赤井さんの変装の確認を終えた所だった
「あら完璧!ちゃんと変装できてるじゃない!」
「恐縮です⋯」
「これで私が毎週通って変装のチェックしに来なくても大丈夫ね!」
「お世話になりました⋯」
「まぁ私的には会いに来る口実がなくなってちょっと残念だけど⋯」
頬を染めながらそういう有希子さんにコナンはジトーっとした視線を向けた
有希子さん⋯優作さんが泣いちゃいますよ⋯
「まるで別人ね⋯」
「本当に赤井さんですか?」
驚きの声を上げたのはジョディ先生とキャメルさん⋯
2人を見てドキリと心臓が音を立てた
「声は元のままだろ?
だが、首につけたこのチョーカー型変声機を使えば⋯」
赤井さんがそう言いながらピッと首元の変声機のスイッチを押せば
「沖矢昴になれる⋯」
声が変わった事に2人は更に驚きの声を上げた
「こ、声が変わった⋯」
「全て変声機を作ってくれた阿笠博士と⋯
この家の家主、工藤優作氏の妻である有希子さんの変装術と⋯
そしてこの策を授けてくれたこのボウヤ⋯
江戸川コナン君のお陰だよ⋯」
「でもシュウとどういう関係なんですか?
確か元女優さんでしたよね?」
「あ、あぁ実は⋯」
「ボクの遠い親戚なんだ!
赤井さんは目立たないアパートに住むって言ってたんだけど、偶然火事になっちゃって⋯
だからちょうどその時ここに桜お姉さんも居候してたし⋯
1人も2人も変わらないからって有希子おばさ⋯」
おばさん、と言おうとしたコナン君をギロリと睨む有希子さん
それに気付いたコナン君が冷や汗を流しながら慌てて訂正した
「お、お姉さんの家に住めばって言ったんだ!」
「でもここって帝丹高校2年の工藤新一君の家ですよね?
今は何かの事件で家を空けてるようですけど、帰って知らない男が住んでいたら驚かれるんじゃ⋯」
「まぁ息子には事情を話してありますから⋯
ねぇ、新⋯コナン君!」
「う、うん⋯」
「フッ⋯」
有希子さんとコナン君のやり取りに赤井さんが笑みを浮かべると
ジョディ先生が更に驚いた声を上げた
「って言うか⋯桜お姉さんって⋯
あの八月一日さんよね?え!?シュウここで一緒に住んでたの!?」
「あぁ、元々この世界で住む場所の無い彼女がここで居候をしていたんだが⋯
そこに俺が住まわせて貰っていたんだ
まぁ、その彼女は少し前に出ていってしまったがな⋯
桜?」
「うっ」
ニヤリと笑った赤井さんと目が合い
皆の視線がこちらに向く
「八月一日さん!?」
「桜ちゃん!おかえりなさいっ」
有希子さんにぎゅっと抱きしめられて
その暖かさにホッと息をついた
「⋯ただいま、です」
「さっきのインターホンは八月一日さんだったのね⋯」
改めてジョディ先生とキャメルさんと目が合い
ぺこりとお辞儀をする
「えと⋯ジョディ先生お久しぶりです
キャメルさんは⋯何回か会いましたけどこうやってちゃんとお話するのは初めてですね⋯
改めまして、八月一日桜です
よろしくお願いします」
「あ、あぁ⋯アンドレ・キャメルです
よろしく⋯」
キャメルさんと握手を交わした所でジョディ先生が不思議そうに声をかけてきた
「あの⋯この世界で住む場所が無いって⋯どういうことかしら?」
「えっ⋯とそれは⋯」
ドクリと心臓が音を立てた所で
それを遮るように赤井さんが有希子さんに声をかけた
「それより大丈夫ですか?そろそろ帰りの飛行機の時間ですが⋯」
「わ!もうこんな時間!!
じゃあね、新⋯コナン君!」
チュッ、と
有希子さんはコナン君の頬にキスをした後
「桜ちゃんも今度はゆっくり一緒にお買い物でもしましょうねっ」
チュッ
私の頬にもキスを落とした
「ゆゆゆゆ有希子さんっ!?」
いきなりの供給過多に顔が熱くなるのを感じわたわたしていると
その間に有希子さんはるんるんと工藤邸を出ていった
「しかし驚きました⋯まさかジェイムズさんもこの事を知っていたなんて⋯」
「話すつもりはなかったが⋯
指先のコーティングに気づかれてしまったんでね⋯」
「だったら何で私達にも話してくれなかったの?」
「前にも言っただろ?敵をだますにはまず味方から⋯
現に奴らはお前達に探りを入れてきたじゃないか⋯
生きている事を話していたら、俺に変装したあの男に会った時にバレていたよ⋯」
「そ、そうかもしれないけど⋯」
「まぁ、あの男だけにはこちらの事情を察してもらう為に、少々危険な賭けをさせてもらったがな⋯」
「あの男ってバーボン⋯安室透ですか?」
「あぁ⋯後々の事を考えると敵に回したくはなかったんでね⋯
ベルツリー急行の車内で変装を解き、煙越しに対面したよ⋯
あの男なら1人で会いに来ると踏んでいたんだが⋯
まさか、ボウヤの予想通り本当の仲間を連れて乗り込んで来るとはな⋯
俺に対する奴の恨みは⋯
思った以上に根深いようだ⋯」
「っ⋯」
思い出すのは⋯スコッチの事
思わずズキリと傷んだ胸をぎゅっと服の上から押さえた
「まぁ、ボウヤのお陰でこちらの真意を奴に伝えられた上に、俺の居場所もうまくごまかせたようだかな⋯」
「その恨みってもしかして⋯
あの時シュウがバーボンとの電話で言ってた⋯」
その時
ピンポーン⋯
玄関のインターホンが鳴り
皆がキョトンと玄関の方を見る
あれ?コナン君からはもう誰かが来るなんて聞いてないけど⋯
不思議に思いながら玄関に走っていったコナン君の後をついていくと
「あー!コナン君!!」
「何でお前がここにいるんだよ?」
そこには歩美ちゃんと光彦君、元太君の3人が立っていた
「あ、いやちょっと⋯ってかオメーらこそ何で?」
「昴さんに謎を解いてもらう為に来たんです!」
「謎?」
「あ!桜お姉さんもいるー!」
「桜お姉さん怪我はもう大丈夫ですか?」
「うん、もうすっかり良くなったよ
皆あの時はありがとね
あの後ベルツリーに行って大変な事になったって聞いたけど⋯
皆怪我はなかった?」
「オレ達は大丈夫だぜ!」
「うん!蘭お姉さん達が助けてくれたから!」
「そっか⋯それなら良かった」
コナン君から聞いていたとはいえ3人の笑顔にホッと息をつくと
後ろから赤井さん達がやってきて
昴さんの姿を見つけた歩美ちゃんがパッと目を輝かせた
「ねぇ聞いて聞いて!
阿笠博士が超能力使ったんだよ!」
「きっと何かインチキしてたんだと思うけどよ⋯」
「昴さんなら解けると思って⋯」
「立ち話も何だから⋯中に入ってもらおうか?」
「そ、そだね⋯」
『昴さん』がそう言うと3人は嬉しそうに靴を脱いで中に入ってきた
「やったー!!」
「お邪魔しまーす!」
「この前のカレーまだ残ってるか?」
「えぇ、多少は⋯」
「よっしゃー!オレカレー食いたい!」
嬉しそうにリビングへ向かった元太君
そのやり取りにジョディ先生は目を点にしていた
「シュウって料理できたっけ?」
「桜に教わったんだ⋯
食費も安くあがるし、いい気分転換にもなる⋯」
いや、貴方私が教えるまでもなく料理スキル高かったんですが⋯