25.緋色の真相
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「お熱も無いですし、明後日の退院は大丈夫そうですね」
「はいっ色々とありがとうございました」
「いえいえ、何か変わった事があれば直ぐに教えて下さいね」
真澄ちゃんが帰った後、午後の検温が終わり
看護師さんがニコリと笑って部屋を出て行った後
人気がない事を確認し、胸元から夢の鍵を取り出した
「『夢の力を秘めし鍵よ
真の力を我の前に示せ!
契約の元桜が命じる
封印解除(レリーズ)!』」
杖を手にして
ベッドの上に今まで固着してきたカードを並べた
「うーん⋯」
魔法について理解しないといけない、とは思ったけど⋯
「どうすればいいのやら⋯」
まぁ、ものは試しと言うし⋯
とりあえず試してみるか
サイドテーブルに空のペットボトルを置いて
それに向けてシージュを発動した後ゲールを使うと
シージュはパンっと弾けて中のペットボトルが2つに裂けた
「⋯やっぱりシージュじゃ鋭いものは駄目なんだ⋯」
弾丸は駄目だったんだからそりゃそうだよね⋯
でも他のカードを固着する時とか
前にキッドを上に乗せた時は破れなかったから⋯
鋭いもの以外なら充分守りとして使える
「シージュ自体が風船みたいに柔らかいからなんだろうけど⋯
そういえば前に服部君のバイクが落ちないように地面の代わりとして使ったけど⋯
固さを変えればいけるかな⋯?」
そう思って今度はシージュを固く発動した後、それに向かってゲールを使えば
シージュは破けることはなかった
けれど⋯
「っ⋯破けない、けど⋯これ自分に衝撃が結構くる⋯
しかも魔力が結構消費されるな⋯」
防げない⋯ことはないけど
モノによっては充分破られてしまうかもしれない⋯
「⋯シージュの耐久性を上げる訓練しようかな⋯
本当はクロウカードのシールドみたいなカードがあればいいんだけど⋯」
そう呟き、ひとまずの課題だと一旦保留にし
今度はスパイラルのカードを手にした
スパイラルも物体を中に閉じ込める事ができる
シージュとの違いは閉じ込められる物体が無限で⋯縮小できる⋯って事かな⋯?
私が引越しで荷物を移動させる時に使った時
縮小させたら解除した時に中がごちゃごちゃにはなっていたけど
シージュを使っていたとはいえ、荷物に傷はついてなかった
「⋯もしかしたらスパイラルも守りに使えるんじゃないかな···」
今度はペットボトルにスパイラルを発動し
それに向かってゲールを放つ
ギュルギュルと渦巻いているそれは裂けることなく
解除をした後、中のペットボトルも無事だった
「おぉっ⋯スパイラルは守りにも使える⋯
けど、もし限界まで縮小したらどうなるんだろう⋯」
そう思ってペットボトルを中に入れて
今度はスパイラルを限界まで縮小する
すると
シュルンッ
「⋯⋯え、」
スパイラルは中身ごと消え、カードに戻ってしまった
「⋯⋯守りとして使えるけど⋯
人を中に入れるのはやめた方がいいかな⋯」
冷や汗を流して嫌な想像を振り払い
今度は違うことを実験してみようとベッドから降り、リバーサルを使ってベッドを逆さまにする
床に落ちる前にグラビテーションを発動し
中に浮かせるようにした
「っ⋯グラビテーションの力加減で中に浮かせる事もできるけど⋯
これ結構神経と魔力使うな⋯」
一度ベッドを元の場所に戻した後
周りの小物をリバーサルとグラビテーションで浮かせアクションを使い自由に動かせるか試してみる
するとタオルやコップ、クッション等が宙を自由に動き回っていた
「ふむふむ⋯グラビテーションは直線にしか引っ張ることができないと思っていたけど⋯
アクションと一緒に使えば曲げる事もできる⋯
組み合わせ次第で色んな使い方があるんだな⋯」
色々分かってくると
なんかちょっと楽しくなってきた⋯
「よっしゃあ!!お次はー⋯」
ガラッ
「桜さん!聞きたい事⋯が⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「えっ⋯と⋯や、やっほ〜⋯コナン君⋯
え、ちょ、何でボール出してるの⋯かな⋯」
「あれほど力を使う時は慎重にしろって言ってるのに⋯
何病室で堂々と使ってんだよっ!!」
「ぎゃあああ!!待った!!待った!!
暴力反対!!」
ボールを構えて黒いオーラを放つコナン君にビビり
慌てて物を元の場所に戻し、杖を鍵に戻すと
コナン君はジトーッと私を睨みながらため息をついた
「ったく桜さんは⋯」
「まあまあ、あんまりカリカリしてると将来禿げるよ?」
「誰のせいだよ!!」
「私のせいですね、はい」
「大体桜さんはなぁ!!」
あ、これ説教コースだ
ベッドの上に正座をして頭を下げたまましばらくコナン君の説教を聞いていると
ふとコナン君が我に返ったように説教を止めた
「ハッ!!って、俺は桜さんに説教しにきたんじゃなかった!」
「さっき来た時何か聞きたい事があるとか言ってたけど⋯」
「そうだ!!」
首を傾げてそう言えば
コナン君はごくりと息を飲み真剣な顔つきになった
「桜さん⋯聞きたい事があるんだ⋯
⋯桜さんは知ってるんだよね?
⋯安室さんの⋯もう1つの顔を⋯」
「⋯⋯コナン⋯君⋯」
ドキリと心臓が跳ね
目の前のコナン君の瞳から目を逸らすことができないでいると
コナン君がゆっくりと言葉を続けた
「⋯前から疑問に思っていたんだ
桜さんがバーボンの正体が安室さんだって
言った後から
灰原の事を大切に思ってる桜さんなら
バーボンから距離をとってもおかしくない
けれど桜さんはいつもと変わらないように接していた、それに距離をとるどころか仲良さそうにしていたし⋯」
「⋯えー⋯っと⋯いつもと変わらないは納得できるけど
別に仲良くなんて⋯」
「じゃあ伊豆高原で仲良くテニスしてたのは?」
「⋯そ、それは⋯」
「しかもその後安室さんに髪の毛乾かしてもらってたみたいだし?」
「⋯⋯」
ぐぅの音も出ない⋯
「それにあの宅配事件の時⋯
桜さんは安室さんを⋯心の底から信頼してた
何で奴らの仲間を信頼できるのか、それがずっときになってたんだけど⋯
やっと分かったよ
桜さんがそんなふうに安室さんを信頼し距離をとらなかったのは⋯
安室さんが敵だからだよね?
⋯黒ずくめの組織の⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯」
しばらく病室に沈黙が流れる
どうしようかと考えた後、真っ直ぐにコナン君を見た
「⋯1つ聞いてもいいかな?
コナン君は何でそう思ったの?」
「⋯今日杯戸中央病院で安室さんと会ったんだ
その時安室さんは『ゼロ』って言葉に反応してたし⋯
昔のあだ名が『ゼロ』だとも言っていた⋯」
「⋯⋯」
「『ゼロ』っていうのは『存在しない組織であれ』と付けられたコードネーム⋯
日本の安全と秩序を維持する為に存在する⋯
公安警察の俗称⋯」
「⋯⋯」
「正直、まだ確信はもててない⋯
だから桜さんに聞きに来たんだ
安室さんの⋯正体を⋯」
「なるほど⋯ね⋯
だとしたら⋯私は答えられない」
「えっ⋯な、何でだよ!?
桜さんは安室さんの正体を知ってるんだろ!?」
「知ってるよ
でもそれは私の口からは言えない⋯
例えばだけど⋯もし蘭ちゃんがコナン君の正体に気づきはじめてて
でも確信はもてなくて、正体を知ってるだろう私に聞いてきたとしたら?」
「それは⋯」
「そうなったとしたら私は絶対に答えない
⋯それと同じだよ」
コナン君は何かを考えるように俯いてしまって
その頭にそっと手を置きゆっくりと撫でる
「⋯でもね、これだけは忘れないで⋯
何があっても私はコナン君の味方だよ」
「桜⋯さん⋯
はぁ⋯わぁーったよ⋯」
コナン君はガシガシと頭をかくと
ドカリとベッドに座った
「⋯つか、それって安易に安室さんの正体が何なのか答えてるよな⋯」
「ぐっ⋯確かに⋯って!それについてはノーコメント!!」
「はいはい」
「あ、そういえば英理さん大丈夫だったの?」
「ああ⋯虫垂炎だったみたいで無事に手術は終わったよ」
「そっか⋯良かった⋯」
「それより桜さんは大丈夫なの?」
「私はすっかり元気だよっ」
「⋯まぁ病室で魔法を使えるぐらいには元気なんだろうな」
「ぐっ⋯だからごめんって⋯」
「⋯まぁ、とにかく桜さんの意思は分かったよ」
コナン君はそう言うとベッドから降りて扉の方へ歩き出した
「もう帰るの?」
「ああ、桜さんが駄目なら
昴さんに頼んで調べてもらうしかねーからな」
「⋯そっか、」
「じゃあな、桜さん」
「うん、帰り気をつけてね」
手を振ってコナン君が出ていくのを見届けて
窓の外に目をやると外は暗くなり始めていた
⋯コナン君が安室さんの正体に気づき始めてるって事は
あの来葉峠での出来事も近いのかもしれない
「⋯多分、今回私に出来ることはないだろうな⋯」
そう、思っていたのに⋯