24.異次元の狙撃手
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「わぁっ⋯凄い眺めっ⋯」
エレベーターでベルツリータワーの第一展望台に登り
窓に広がる東京の景色に感嘆の声を上げる
「どう?我が鈴木財閥が総力を挙げて建てたベルツリータワーからの眺めは!」
「凄いよ園子!!誘ってくれてありがとう!!」
「ありがとう園子ちゃんっ」
ポアロで蘭ちゃんから園子ちゃんがベルツリータワーのオープニング・セレモニーに招待してくれた事を聞き
仕事が終わって、蘭ちゃんと小五郎さん、少年探偵団の皆と博士でベルツリータワーに来ていた
「あんた達も感謝しなさいよ!
普通、オープニング・セレモニーには関係者以外入れないんだからね!!」
「サイコーだぜ!!」
「ありがとうございます!!」
「よく言うぜ⋯自分から誘ってきたクセに⋯」
ボソリと呟いたコナン君に苦笑いしていると
「おいっ!!そろそろ帰らねーか!?」
後ろから小五郎さんの声がして振り返る
すると小五郎さんは窓から離れた場所で顔を真っ青にして立っていた
「何言ってるの?お父さん⋯
今登ってきたばっかじゃない!!」
「ああーっ!!なんでまた俺はこんな高い所へ来てしまったんだぁぁっ!!」
「お父さんもこっち来なよ!すごくいい眺めだよー!!」
「フン!!バカ言ってんじゃねー!!
俺はもう帰るからな!!」
小五郎さんはプイッと私達から顔を背けるとそのままエレベーターの方へ歩きだす
そういえば小五郎さん高い所苦手だったな⋯
「もうっ⋯」
その時園子ちゃんが蘭ちゃんを肘でつついて小五郎さんの足元を指さした
「⋯ぁ、」
「だいたい昔っから、バカとなんとかは高い所に登りたがるって言ってなー⋯」
小五郎さんが今いる場所は床がガラス張りになっていて
ベルツリータワーの脚元が見えるようになっていたのだ
それを見た蘭ちゃんがニヤリと笑い小五郎さんに声をかける
「そんな事言って、本当は怖いんでしょ?」
「!!バ、バカヤロ〜ッ⋯このぐらいの高さ、どーってこたぁねぇ!!」
「じゃあ、床を見ても平気よね?」
「?床⋯?
なっ!!ゆっ、床がっ⋯
ねええええええ!!」
自分の足元を見た小五郎さんの顔が更に青くなり
その足はガクガクと震えだした
「怖い怖い怖いぃぃぃっ!!」
「ちょっとお父さん!!」
「高いの怖いよぉぉぉぉ!!」
小五郎さんは頭を抱えてジタバタと走り出し
怖いと叫びながら人の間を走り抜けて見えなくなってしまった
⋯キャラ崩壊してますよ⋯小五郎さん⋯
その様子に苦笑いしていると
蘭ちゃんが呆れたようにため息をついていた
「もう⋯お父さんったら⋯ごめんね、園子⋯」
「いいのよ、騒がしいのはいつものことでしょ!
さっ、ベルツリーからの絶景を楽しみましょ!」
園子ちゃんから言われて改めて展望台からの景色を眺める
いつもフライトさんで空を飛ぶ時は風を感じているけど
こんな風に落ち着いて景色を眺めるのもいいな⋯
そんな事を考えていたら、蘭ちゃんが近くに見える建設中のタワービルを指さした
「ねぇ、園子、あの建物は?」
「ああ⋯あのちっちゃいのは、浅草スカイコート!
鈴木財閥とは関係ないわ
完成しても、せいぜいこの第一展望台程度でしょうね!」
「じゃあベルツリーの勝ちだな!!」
「あったりまえでしょー!!おーほほほっ」
「あはは⋯」
高笑いしている園子ちゃんを横目に
歩美ちゃんが手前の川を指さして、視線をそっちにやる
「ねえねえ、あの川、見てー!!橋がいっぱいかかってるよー!!」
「ああ、隅田川だな⋯
向こうの青いのが駒形橋⋯
赤いのが吾妻橋⋯
手前の鉄橋は、東都ベルツリーラインだ」
「あっ!!電車が来ましたよ!!」
「カッケー!!」
「あれ?橋の上で止まっちゃうよ⋯」
「徐行してるだけですよ!
橋を渡ったら、すぐに浅草駅がありますからね!!
⋯あっ!!そうだ!!
冬休みの宿題、この東都ベルツリータワーとその周辺のミニチュア模型を作るっていうのはどうですか?」
光彦君の提案に歩美ちゃんと元太君が面白そうだと盛り上りだした
「コナン君と哀ちゃんも一緒に作ろうよ!!」
「おい⋯それって結構大変⋯」
「いいんじゃない?」
「えっ!?」
「やったー!!」
「じゃあ決まりですね!!」
「スッゲーの作ろうぜ!!」
「来た甲斐があったのう!」
「みんなでいっぱい写真撮ろー!!」
「俺はビデオだ!!」
「私はベルツリーについて調べとくわ⋯
誰かさんは冬休みの宿題しなくていいのかしら?」
「ほっとけ!」
「宿題は早めにやってた方がいいよ~?」
「⋯⋯」
ベルツリーのガイドブックを開き、チラリとコナン君を見る哀ちゃんを見て
その後ろに屈んでニヤリと笑いながら言えばじろりと睨まれた
コナン君は今日も可愛いな
その時
「There!The yellow building!」
「Oh wow!It`s amazing!」
「Oh,I can see it!
What a lovely building!」
英語が聞こえて隣に目を向けると
中年の外国人夫妻と背広姿の中年男性が何かを話していた
⋯全く聞き取れない⋯
コナン君は会話の内容を聞いているのかジッとその3人を見ていた
まぁ、私には関係ないし⋯別にいっか
そう思い立ち上がったら、蘭ちゃんが周りをキョロキョロ見渡していた
「蘭ちゃんどうしたの?」
「あれからしばらく経つけどお父さん降りてこないなぁって思って⋯」
「ああ⋯
きっと小五郎さんの事だから震えて動けなくなってるかもね⋯」
「確かに⋯」
「私が見てこようか?」
「あ、じゃあ私も⋯」
苦笑いして小五郎さんを探しに行こうとしたら
ピシッ
一瞬だった
パンっ!!
展望台の窓と近くのモニターに亀裂が入り
その直線上の間にいたさっきの背広を着た男性が仰向けに倒れる
その男性の胸からは血がとめどなく溢れてその周りをあっという間に赤く染めてしまった
「きゃああああ!!」
「狙撃だ!!皆伏せろ!!」
蘭ちゃんの叫び声とコナン君の声に周りに居た人達がその場に伏せる
私も蘭ちゃんに覆い被さるようにその場に伏せた
「っ⋯」
バクバクと心臓が激しく音を立てる
人が⋯目の前で⋯撃たれるなんて⋯
チラリと男性を見ればピクピクと痙攣していた手が次第に力なく動かなくなる
それを見て胃から何かがせり上がってくる感覚がしたけれどそれをグッと堪え
震える拳を握りしめた
「きゃあああっ!!」
「わあああっ!!」
「お客様!!落ち着いてください!!」
他の客がパニックになって逃げ惑う中
コナン君が私達の横を通り過ぎ、走ってベルツリータワーを降りて行く
「あっ!!待って!!コナン君!!」
それを見て上体を起こそうとした蘭ちゃんを制し、立ち上がった
「桜さん?」
「まだ危ないかもしれないから安全が分かるまで蘭ちゃんは伏せてて!!
コナン君は私が追うから!!」
「え!?ちょっと桜さん!?」
蘭ちゃんの声を無視して非常階段からベルツリーを降りて行く
コナン君の事だ、無茶しかねない⋯
「私が守らないとっ⋯」
息を切らせながらなんとか下まで降り
ベルツリータワーから出て、木陰に隠れて胸元から夢の鍵を取り出した
「『夢の力を秘めし鍵よ
真の力を我の前に示せ!
契約の元桜が命じる
封印解除(レリーズ)!
飛翔(フライト)!!
透過(ルシッド)!!』」
姿を隠して空高く飛び、コナン君を探す
「コナン君⋯どこに行ったの⋯」
けれどキョロキョロと辺りを見渡してみても
コナン君らしき人は見つからない
スマホでコナン君に連絡したけれど繋がらず
仕方なく手当り次第に飛行していると
ドォン!!
「っ!!」
大きな音がして、そっちを見れば黒煙が立ち上がっていて
急いで煙の元へと向かう
けれどそこでは1台の車が煙を上げて止まっているだけで、そこにコナン君の姿はなかった
「コナン君⋯どこっ⋯」
また空高く飛びコナン君の行方を追っていると
ふと数台のパトカーが走っているのに気づいた
もしかして⋯あのパトカーは狙撃をした人を追ってるのかも⋯
一か八か、そのパトカーを追っていると
隅田川に架かっている橋が目に入りパトカーが橋の上で止まる
すると直ぐに反対側から数台のパトカーとバイクが橋へとやってきた
そのパトカーの後ろにはもう一台のバイクが来ていて
その見たことのあるバイクとそれに乗っている2人の姿に目を見開く
「世良ちゃん!?と、コナン君!!」
何で世良ちゃんがコナン君を乗せて⋯
疑問に思ったのもつかの間
ドォン!!と大きな爆発音がしてパトカーが宙に舞い上がり、他のパトカーを巻き込みながら横転していく
大破したパトカーが炎上し、熱風が顔にかかり咄嗟に腕で顔を隠した後
少しだけ距離を取りカードを取り出した
「『炎の上に降り注げ!!水源(アクア)!!』」
たちまち水が炎の上に降り注ぎ、炎を小さくしていく
それを見ながら世良ちゃんのバイクに乗ったまま動かない2人を見て
今度は世良ちゃんに電話をかけると数回のコールの後電話に出た
「もしもし!世良ちゃん!?」
『桜ちゃん?どうしたんだ?
悪いけど今ちょっと取り込んでて⋯』
「コナン君と一緒にいるんでしょ?コナン君に代わって!」
『え⋯なんでそれを⋯』
「早く!」
『わ、分かったよ!』
世良ちゃんがコナン君に携帯を渡し
今度はコナン君の声が聞こえた
『桜さん!この水って⋯まさか桜さん近くに居るの!?』
「うん、コナン君が心配で⋯
それより狙撃した犯人を追うんでしょ?」
『ああ、これから犯人追跡メガネで追うつもりだけど⋯』
「私も隠れながら2人の後をついて行くから⋯
何かあった時は任せて!!」
『桜さん⋯分かった!!』
コナン君との通話を終えた後
世良ちゃんがバイクで走り出す
その後をついていけば東京湾の埋め立て地の一角に出た
倉庫やコンテナが並ぶ場所を世良ちゃんのバイクが走って行き、その後を追う
その時世良ちゃんの後ろの方から黒い車が着いてきているのに気づき、首を傾げた
こんな人気のない倉庫街に車⋯?
⋯もしかしたら狙撃をした人の仲間かもしれない⋯
そう思い車に乗っている人物を確認しようと世良ちゃんから離れ、車の方へ飛べば
「えっ⋯ジョディ先生!?」
そこに乗っていたのはジョディ先生だった
隣には体格の良い男の人⋯(多分キャメルさんだろう)が乗っていて
後ろにも1人、誰か乗っているのが見えた
⋯多分ジェイムズさんかな
でもなんでジョディ先生達がここに⋯
そんな事を思っていると
パァン!
「ぇ⋯」
発砲音が聞こえサッと血の気が引き、
慌てて世良ちゃんが走って行った方へと行くと
「世良⋯ちゃん⋯?」
そこには⋯
バイクごと倒れている世良ちゃんがいた
「世良!!おい!!世良っ!!」
「ううっ⋯」
コナン君は世良ちゃんの肩を揺さぶっているけれど
世良ちゃんが起き上がる気配はない
「っ!!」
拳銃を持った犯人が2人にゆっくりと近づいてくる
その銃口を2人に向ける前にその間に降り立ち
ルシッドを解除した
「!?」
「桜さん!!」
いきなり現れた私に驚いたのか犯人がたじろいで数歩後ろに下がる
「絶対⋯許さないっ⋯」
ギュッと杖を握りしめカードを取り出そうとしたら
ギャギャギャ、とタイヤが擦れる音が聞こえ
その音が聞こえた方からさっきの車がやってきた
犯人はその車へ発砲し
車はドリフトしながら私達の方へと近づいてくる
そしてその車から男の人⋯キャメルさんが降りてきて
私達と犯人の間に盾になるように立ち塞がった
「キャメル捜査官!!」
パァン!!パァン!!
「!!」
「っ!!キャメルさん!!」
そのキャメルさんの背中に2発の弾が続けざまに命中し
キャメルさんが苦しそうに呻いてよろけたけれど尚も私達を庇うように体勢を立て直した
その間に犯人は岸壁に向かい、ジョディ先生が乗っている車はそれを追っていく
「キャメル、さ⋯」
ドクリ、ドクリと全身が脈打ち
震える手をキャメルさんへ伸ばせば
大丈夫だと言うようにキャメルさんは微笑んだ
その笑みを見てホッとした時
「イテテテ⋯」
世良ちゃんが意識を戻してゆっくりと起き上がった
「世良ちゃん!!」
「大丈夫?世良のお姉ちゃん!?」
「う⋯うん⋯コイツがなかったら、即死だったよ⋯」
「よか⋯た⋯」
世良ちゃんのヘルメットには銃弾の後がついていて⋯
ヘルメットがなかったら⋯と思うとゾッとした
「どうやら3人とも怪我はないようだな⋯」
「それより、キャメル捜査官は大丈夫なの?」
「ノープロブレム!コイツを着てるからな⋯」
キャメルさんは安心させるように微笑むと
シャツの下に着ている防弾ベストを見せてくれた
「なるほどね⋯」
その時
ドオォォォン、と爆音が響き
犯人とジョディ先生が消えて行った先の角から爆煙が上がる
それを見てハッとして立ち上がり
岸壁へと走った
「桜さん!?」
コナン君の声を無視して角を曲がると
ジョディ先生が拳銃を構えて海面を見つめていた
「ジョディ先生犯人は!?」
「八月一日さん!?何故ここにっ⋯」
「それより犯人は!?」
「爆発に乗じて海に逃げられてしまったわ⋯」
「海っ⋯」
⋯絶対逃がさないっ⋯
波に揺れる海面を見てグッと杖を握り
アクアのカードを取り出そうとしたら
パシッ
その手をコナン君に掴まれた
「コ、コナン君!?」
「駄目だ、桜さん!
これ以上の深追いは危険だよ!!」
「っ⋯でも!!」
世良ちゃんを⋯キャメルさんを撃った犯人を絶対許せないっ⋯
「落ち着いて!桜さん!
犯人が逃げ場のないここに来たって事は何か逃走手段を用意しているはず
それが分からないまま1人で追うのは危険だし
それに皆が居る前で力は⋯」
最後の方はこそりと私に声をかけて
ハッとして顔を上げると不思議そうに私を見ているジョディ先生と
角からこっちにやってきた世良ちゃんとキャメルさん
そしてボロボロになった車から降りてきたジェイムズさんが私を見ていて
渋々カードから手を離し、杖を下げた
「ジョディ君、」
「ダメです⋯逃げられました⋯」
「仕方あるまい⋯あとは日本の警察に任せよう⋯」
「すぐに湾内周辺の岸壁の捜索をしてもらいます!!」
「うむ⋯」
「八月一日さんとコナン君もこっちへ⋯
また爆発する可能性があるから」
「はい⋯」
ジョディ先生に言われて後を追うように近くに行けば
ジェイムズさんと目が合った
「君は⋯」
「ぁ⋯」
そう言えばジェイムズさんとキャメルさんとは初めて会うんだった⋯
「あ、初めましてっ!私、八月一日桜です」
自己紹介をするとジェイムズさんが驚いたように目を見開いていて
首を傾げる
「八月一日⋯あぁ、君が⋯」
「?」
ジェイムズさん私を知ってるような感じだったけど⋯
ジョディ先生から聞いたのかな⋯?
それか赤井さん⋯?でも赤井さんが私の話をするだろうか⋯
「いや、なんでもないよ
怪我はないかね?」
「あ⋯はい、キャメルさんが庇ってくれましたから⋯」
チラリとキャメルさんの方を見れば
横にいた世良ちゃんが私をジッと見ていて⋯
いや、正確には私の持っている杖を見ていた
し⋯しまった!!
この状況で変な杖持ってたらそりゃ怪しむよね!?
しかも世良ちゃんからしてみれば何で私がここにいるんだって感じだろうし!!
うわあああっ!!
どうしようどうしよう!!な、何て言い訳したら⋯
「⋯桜ちゃ⋯」
世良ちゃんが杖から私へと目を向けた後、何かを言おうとしたら
「そ、そういえば何でFBIがあの犯人を追ってるの!?」
それを遮るようにコナン君が大きな声を出した
ナイスコナン君!!
「その事については警視庁で話をするつもりだよ」
「その間に見つかればいいのですが⋯」
「まぁ、確保は難しいでしょう⋯
シールズにとって、海は庭のようなものですから⋯」
「⋯シールズ⋯?」
キャメルさんの言葉に世良ちゃんとコナン君の顔が険しくなる
⋯シールズって⋯何だろう⋯
世良ちゃんとコナン君の様子からして
あんまり良くない事なのかな⋯
「とにかくここに居ても時間の無駄だ
私達が乗ってきた車はもう使えないから
パトカーで警視庁まで送って貰おう」
ジェイムズさんにそう言われ、私達は詳しい話を聞くため警視庁に行くことになった