21.悚然
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おーい!そっちいったぞー!」
「任せて下さい!!あっ⋯」
「よしっ!」
「コナン君頑張れ〜!」
「よっしゃ!」
「させないわよっ」
「⋯⋯元気だなぁ⋯」
今日は仕事はお休み
家にいても悶々と考えてしまう為、気分を変えようと散歩をしていたら
公園で少年探偵団の皆と出会い
子供達がサッカーをしている所を側のベンチに座って見ていた
「⋯はぁ⋯」
知らずにため息が出て顔を俯かせる
「⋯なんで⋯あんな事に⋯」
思い出すのは昨夜の事ーー⋯
安室さんに降谷零とバーボンの存在を知っている事を話すと
驚いたように目を見開いた後、すぐに目を鋭くさせて少しだけ私と距離を取った
「⋯どこからその情報を得た、」
そこに居るのはもう『安室透』ではなく
『降谷零』で⋯
少しだけ顔を俯かせる
「⋯私が⋯別の世界から来た事はお話しましたよね⋯?」
「⋯⋯」
「その別の世界では、この世界の出来事が物語として描かれていたんです
私は漫画やアニメでよくその物語を見ていて⋯
それで⋯大体の人の事は分かるんです」
「⋯では僕の事もその物語で⋯?」
「⋯はい⋯」
「⋯では毛利探偵事務所で樫塚圭さんが射殺した事も⋯
伊豆高原での事件の事も⋯貴方は知っていたと⋯?」
「⋯知っていました⋯」
「では何故!!」
「知っているのに!!⋯思い出せないんです⋯」
「思い出せない⋯?」
「私は周りでおきている事件の事を物語として見ているはずだから
ほとんどは知っている⋯はずなんです
でもこの世界に来てから、全く思い出せなくて⋯
時々思い出せそうな時に頭痛がするんですけど⋯
結局思い出すのはいつも事件が解決してからで⋯」
「⋯そう⋯ですか⋯」
部屋に沈黙が流れる
そこから動けずにしばらく向かいあったままでいると
ポツリと安室さんが呟いた
「⋯この事を他の人には⋯?」
「言ってません⋯今まで嘘をついていた私に信じろと言われても難しいと思いますけど⋯
でも⋯『降谷さん』の事をペラペラ他人に喋ったりしません⋯
下手すれば命に関わる事だから⋯」
「⋯そうですか⋯
⋯後1つ、」
「⋯なんでしょうか⋯」
「リンドウ⋯
桜さんはこの花を知っていますよね」
「っ⋯」
思わずドキリとして目の前の彼と目が合う
「⋯やっぱり⋯あいつ等の所に花を供えたのは貴方でしたか⋯」
「⋯いつ⋯気づいたんですか⋯」
「⋯つい最近ですよ⋯
車を走らせていたら『あの人』の事故現場に命日でもないのに花が飾られていた⋯
それが気になりもしかして⋯と、後の3人の⋯最期の現場に行ったら⋯
花が供えられてあった⋯しかも全く同じ花が⋯
ただの偶然ではないとは思ったんですが
その意味も⋯誰が置いたかも分からなかった
なので観覧車のスタッフに聞いたんです
その花を持ってきた人は誰か⋯と
話を聞いてみれば桜さんと特徴が似ていて⋯
写真を見せたら貴方だと言っていました」
「⋯⋯」
「⋯桜さんは彼等と会った事があるんですか?」
「⋯いえ⋯ありません⋯」
「では何故あのような事を⋯?」
「私は⋯ただ、あの人達の弔いをしたくて
⋯もし、私がもっと早くに来ていたら⋯
あの人達を助ける事ができたのかな⋯って
そう思った⋯ら⋯」
内容が内容なだけに一瞬目を逸らしてしまったけれど
今目を逸らしてはいけないと思い
慌てて目の前の彼の顔を見て⋯
口が止まった
固まっている安室さんの目は見開かれていて
そして、切なそうに揺れていた
あ⋯私、今⋯
この人を⋯傷つけてしまった
気づいた時にはもう遅く、
安室さんは唇を噛み締めると、つかつかと私の方に歩み寄り
握りしめた拳をダンっ!!と私の顔の横に叩きつけた
「っ⋯」
見たことのない『彼』の姿にビクリと肩が跳ね
恐怖で身体が硬直する
少しの沈黙の後、掠れた声で安室さんが呟くように言った
「⋯君の力と記憶は危険すぎる⋯
その為これから貴方を監視する事にします」
「かん⋯し⋯?」
「⋯君の話が本当なら『カード』を封印しなければ他の人に危害が及ぶ可能性がある⋯
なので貴方を拘束する事はしません
しかし少しでも怪しい行動をとれば⋯自由は無いと思って下さい
いいですね、」
「⋯⋯」
あの時の⋯明らかに私に向けられた怒りと拒絶の目
それも、そうだよね⋯
自分の知らない人が自分の過去を知っていているなんて⋯
そんなの気持ち悪いし、嫌な気持ちになるだろう⋯
まして、それがとても大切な人との思い出なら⋯尚更、
「わかっていた⋯はずなのに⋯
⋯痛い、な⋯」
ズキズキと痛む胸元を握りしめ、何度目かのため息をつく
それに⋯
私はあの時⋯言ってはいけない事を言ってしまった⋯
『⋯もし、私がもっと早くに来ていたら⋯
あの人達を助ける事ができたのかな⋯』
⋯そんな事⋯誰よりも思っているのはあの人だ
それを彼等と会った事のない私なんかが言ってしまった
「私っ⋯本当⋯バカだな⋯」
その時コロコロと私の足元にサッカーボールが転がってきて、それを持ち上げるとコナン君の声が聞こえた
「桜さーん!灰原にパスしてくれー!!」
その声に前を見るとそこにはジトっと私を見つめる哀ちゃんが立っていて⋯
そうだ⋯それとはまた別に、今重大な事がもう1つある
「あ⋯哀ちゃ〜ん⋯パ、パス⋯」
プイッと私から顔を背けた哀ちゃん
⋯そう⋯黙って引越しした事に怒った哀ちゃんは
私と口を聞いてくれなくなってしまった⋯
「あうっ⋯ぅぅ⋯
哀ちゃんが私と喋ってくれないぃぃぃっ⋯」
サッカーボールをパスせずに胸に抱えて、手で顔を覆うと
呆れた顔のコナン君と、それに続いて歩美ちゃんと光彦君と元太君が近寄ってきた
「桜さんボール⋯」
「ぅぁぁぁぁぁ⋯」
「⋯⋯」
「哀ちゃん桜お姉さんとケンカしてるの?」
「姉ちゃん灰原のおやつでも食べたのか?」
「元太君!灰原さんと桜お姉さんがそんな事でケンカする訳ないでしょう!」
「⋯⋯おい、灰原、そろそろ桜さんと口聞いてやれよ
じゃないとこうなった桜さんめんどくさいから⋯」
「おいこらコナン君、どういう意味かな?」
「い·や!」
そう言ってついに私に背を向けた哀ちゃん
⋯そんなに昴さんが嫌なのか⋯
まぁでも、組織から狙われてる哀ちゃんが怪しんでいる人が隣人で⋯
博士が居ない時は1人になっちゃうから⋯不安、だよね⋯
それに哀ちゃんからしてみれば
私、哀ちゃんの事守るって言ったのに
危険視してる人を1人にさせるなんて、無責任だよね⋯
少しだけ戸惑った後
哀ちゃんのセーターの背中をギュッと掴む
「⋯哀ちゃん、黙って引越ししちゃってごめんね?」
「⋯⋯」
「哀ちゃんの事考えたら⋯ちゃんと言っておくべきだったよね⋯
不安にさせてごめんなさい⋯」
「⋯⋯」
「でも昴さん本当にいい人だから⋯
仲良くしてくれたら嬉しいなぁ⋯って⋯」
「⋯⋯」
「だから⋯その⋯」
ぐっ⋯と何と言っていいか分からずに口ごもると
チラリと私の方を振り返った哀ちゃん
哀ちゃんとずっとこのままなんて絶対嫌だと思い、気づいたら涙目になっていて
その目をジッと見た
「⋯哀ちゃん⋯お願い⋯」
「ぅっ⋯⋯はぁ⋯もういいわよ⋯」
「え!?本当!?」
「っ⋯これ以上ウジウジされてもめんどくさいだけだから⋯」
「あ⋯哀ちゃんっ⋯」
パッと笑顔になると、哀ちゃんは腕を組んでまたプイッと顔を背けてしまった
「でもねぇっ⋯!私が怒ってる理由は全っ然合ってないからっ」
「え?」
「⋯貴方、私があの人と2人きりになるかもしれないって
その事に対して怒ってるって思ってるでしょ」
「え?そうじゃないの⋯?」
「違うわよ、バカ、」
「えぇっ!?な、何?!」
理由が分からずオロオロしていると
私の手放したサッカーボールをリフティングしながらコナン君が話の間に入ってきた
「あぁ⋯それなら⋯
灰原のやつ寂しかったんだろ?
桜さんが自分に何も言わないで出ていった事が」
「なっ⋯」
「そ⋯それって⋯あ、哀ちゃんっ⋯」
バッと哀ちゃんの顔を見れば微かに頬を赤く染めていて⋯
私とバッチリ目が合った後、勢いよく顔を逸らされた
「あ⋯哀ちゃん⋯
大好きいぃぃぃぃぃっ!!!!」
思わずその小さな身体に抱きつき頬ずりすると
哀ちゃんは私の頬を手で抑えて遠ざけようとしていた
「ちょ!!ひっつかないで!!」
「これからは何かする度!!いの一番に哀ちゃんに報告するねっ!!」
「迷惑だからやめなさい!!」
哀ちゃんは照れ屋さんだなぁっ!!
「⋯えっと⋯解決したんですか?」
「じゃねーの?」
「歩美、哀ちゃんも桜お姉さんも大好きだから
2人が笑ってると嬉しいなっ」
「まぁ⋯仲直りした所でサッカーの続きやるか!」
「桜お姉さんもやろうよ!!」
「やるやる〜っ」
それから私も皆と一緒にサッカーをしたけれど
すぐに息切れしたのは言うまでもない⋯