16.業腹
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「安室さん大丈夫かなぁ⋯」
「⋯もう休みはじめて5日だもんね⋯」
「体調が悪いみたいだけど⋯」
「⋯⋯」
ミステリートレインから5日
あれから安室さんはポアロを休み続けていた
「あぁ、安室君なら週明けから仕事に復帰するみたいだよ」
「え!!そうなんですか!?
だって!!よかったね!桜ちゃん」
「え?あ、うん⋯」
マスターのその言葉に梓ちゃんは嬉しそうに手を合わせて私を見たけど
私は曖昧に返事をするしかなかった
「あ、私表の掃除してきますね」
「あぁ、お願いするよ」
カウンターから出て、入口近くに置いてある箒とチリトリを掴み
扉を開けて表へと出る
「⋯ふぅ⋯よし、」
軽く息を吐いて気持ちを切り替える為に掃除をしようとしたら
「にゃあ」
「あっ⋯大尉!!」
植木の影から猫の声が聞こえてそちらを見れば
最近ポアロに来るようになった三毛猫⋯大尉がいた
マスターはポアロによく来るから大尉と名付け
それからすっかり大尉がここに来る事が当たり前になってしまった
「餌をねだりに来たのかな?
ちょっと待っててね〜今持ってくるからね〜」
大尉の顎を撫でればゴロゴロと喉を鳴らして私の手に擦り寄ってくる
「にゃあ〜」
「⋯にゃあ〜」
「にぁお」
「⋯にゃお」
「にゃ〜ん」
「⋯にゃ〜⋯」
「⋯何してるの桜さん」
「うひゃあ!?」
不意に後ろから声をかけられ慌てて振り返れば
そこには呆れたような顔をしているコナン君と蘭ちゃんがいた
「ええええ、えっと⋯学校帰り?」
「うん、コナン君と途中で一緒になって帰ってきたんだけど⋯」
「そしたら桜さんが変な事してるから···」
「お願いだから忘れて下さい」
「でもちょうど良かった!桜さんに伝えたい事があったの!」
「伝えたい事?」
キョトンとして蘭ちゃんを見ると
蘭ちゃんは笑顔で駆け寄ってきて私の手を取った
「この間ベルツリー急行での事件の話したでしょ?
それで次の休みに園子が埋め合わせで伊豆高原の別荘に招待してくれるんだけど一緒に行かない?」
「伊豆高原?」
「⋯って言うか園子からベルツリー急行一緒に行けなかったから
是非とも誘ってきてって言われてるんだけど⋯」
「あー⋯」
⋯まぁ実は私も行ってたんだけどね⋯
にしても伊豆高原の別荘か⋯
しかも鈴木財閥の別荘ならとてもいい所なんだろうなぁ⋯
⋯気分を変えるのにはちょうどいいかもしれない
実は私が昴さんに工藤邸を出ていく事を伝えてから⋯
昴さんとは気まずくなっていた
「⋯⋯私、工藤邸を出ていこうと思います」
「⋯⋯出ていく?」
「⋯はい⋯色々考えたんですけど⋯
あむ⋯バーボンは多分、
赤井さんがいなくなったタイミングで現れた私を疑って⋯探りを入れてきます
しかもこの力の事もあるし⋯
そこで私と昴さんが一緒に居たら⋯きっと昴さんにも探りを入れるはず
だから今離れないと昴さんの身が危な⋯」
「駄目だ」
「え?」
ピシャリと言い放った昴さんに顔を上げれば
そこには目を開いている赤井さんがいた
「すば⋯」
「彼の事だ⋯桜の言う通り探りを入れてくるだろう
だからこそ⋯今1人になるのは危険だ
いざと言う時の為にそばに居た方がいい」
「だからですよ!!私と一緒にいたら貴方が危険な目に⋯」
「⋯どうやらボウヤの忠告をきちんと理解していないようだな」
「え⋯いたっ⋯」
不意に赤井さんに力強く両手を掴まれたと思ったら
駅の壁に背中を押し付けられられて私の手を頭上でいとも簡単に片手で拘束すると
反対の手で私の顎を持ち上げた
「すば⋯るさ⋯」
「キミが何と言おうと⋯この手は離さない
俺の傍を⋯離れるな」
「す⋯」
赤井さんの顔がグッと近くなり
その距離が、あと数センチというところで
「桜ちゃ〜ん!!」
有希子さんの声が聞こえて赤井さんはピタリと動きを止めた
「⋯行くぞ、」
そして私の手を壁から解放してくれたけど
その手は力強く繋がれたまま
有希子さんの声が聞こえた方へ歩き出した
「⋯⋯」
それから赤井さんとは⋯あんまり話ができていない
赤井さんは私の事を心配して言ってくれている
それは本当に分かる
けれど⋯
降谷さんは⋯赤井さんを憎んでる
『降谷零』を知ってる私だから⋯
赤井さんの存在が知られては危険な事
万が一私の事が知られても殺される事は無い事が分かるけれど
けど周りは知らない、そして絶対に言えない
この⋯私と赤井さんの降谷さん⋯バーボンに対しての認識の違いが
今回の原因なんだろうけど⋯
「どうしようもないよな⋯」
「?」
「あ、何でもないよ
伊豆高原か〜⋯いいね、私も行こうかな」
「やった!じゃあ今度の休みに米花駅前に集合ね」
「米花駅?皆一緒に行くならここに集合した方が⋯」
「何か園子とお父さん曰く
桜さんはスペシャルコーチが迎えに行くからって」
「スペシャルコーチ?⋯って誰?」
「さぁ⋯?私も聞いたんだけど詳しく教えてくれなくて⋯」
「え〜⋯初対面の人ならあんまり話せる自信ないんだけどな〜⋯」
「大丈夫だって、桜お姉さん意外とコミュニケーション能力あるし」
「意外とって⋯それ褒めてるのかな?コナン君や
⋯っと⋯そろそろ戻らなくちゃ⋯」
「あ、仕事中だったよね
じゃあ詳しい時間とかはまた後で連絡するね!」
「うんありがと」
蘭ちゃんとコナン君に手を振ってポアロに入る
一度気分をリセットして⋯
もう一度赤井さんに話してみよう
それでも駄目なら⋯
「⋯強行突破するしかないけど⋯」
「ん?どうしたの桜ちゃん」
「あ、いや!そういえば大尉来てたよ梓ちゃん、マスター、」
「あら、そうなの?」
「餌を準備してやろうかね」
「すみませーん、注文いいですか?」
「はーい!!」
お客さんから呼ばれて
手を洗った後伝票を持ってテーブル席に向かう
とにかく⋯少しずつ引越し先とか探していかないとな⋯