14.透過
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「んんっ〜!桜ちゃんのチーズケーキ美味しいわ〜!
ねっ秀ちゃんっ!」
「ええ、桜さんの作る料理は全て美味しいです」
「よね〜っ今日の夜ご飯はリクエストしちゃおっかな〜
ねっ桜ちゃん!」
「⋯⋯」
「⋯桜ちゃ〜ん···?」
「え!?あ、な、何ですか!?」
「⋯桜ちゃんボーッとしてるけど⋯何かあったの?」
「へっ!?ななな、何でもないですよ!?
ご、ごちそうさまでした!」
食べかけのチーズケーキを口の中に押し込み
お皿を流し台に置く
「あの、私書斎で本読んでますね!!
お皿、置いてて下さい、後で洗うので⋯」
昴さんと有希子さんにそう言って
キッチンを出て書斎へと足を向けた
「⋯桜ちゃんどうしちゃったんだろ⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯駄目だ⋯内容が全く頭に入ってこない⋯」
それから、書斎の椅子に座り小説を読んでいるけれど
ページは全く進まず⋯重いため息をついた
「⋯⋯」
『⋯それは残念ですね⋯
僕は桜さんの事好きですよ⋯?』
あの時はコップが割れたおかげでうやむやになったけど⋯
私⋯
めっちゃ怪しまれてるっ⋯
安室さんが本心であんな事言うなんて
天地がひっくり返っても2000%ありえない
まぁでも⋯
そりゃ怪しすぎるよな⋯私
本来私はこの世界の住人じゃないから
戸籍はもちろん無い
しかもタイミング的に赤井さんが死んだ直後に現れたから⋯
きっと安室さんは⋯
もしかしたら私が赤井さんと何か関係があるんじゃないかって疑うはず⋯
だから私にあんな⋯ハニートラップみたいな事を⋯
『僕は桜さんの事好きですよ⋯?』
「⋯⋯あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
カッと頬が熱くなり、両手で顔を抑え悶絶する
落ち着け自分っ⋯
これは安室さんの策略であって本心じゃないんだぞっ⋯
で、でも⋯耳元であんな声であんな事言われたら⋯
「っっ⋯うがあああああっ!!」
更に悶絶し、背を椅子の背もたれに預けて仰け反っていると
ガタリと椅子の重心が傾き身体が後ろへと傾く
「え、ちょっ⋯ぎゃあっ!!」
気づけば椅子ごと後ろに倒れていて
強打した頭を抑えた
「ったたた⋯」
「⋯⋯白、」
「へ?」
静かだった(?)空間に声が聞こえ
その体勢のまま入口を見ると
「⋯コナン君⋯」
そこにはコナン君が立っていた
てか、白?
白ってな⋯に⋯
「っ!!!!」
コナン君の言った意味が分かり
慌ててスカートで下着を隠し
入口に立っているコナン君をじろりと睨んだ
「⋯⋯見たね、」
「ふ、不可抗力だって」
「⋯前から思ってたけどコナン君ってスケベだよね」
「は、はぁ!?んなわけねぇだろ!!」
そのままの体勢でコナン君をジトリと見つめていると
コナン君が呆れたように近づいてきて、私に手を差し出した
「ったく⋯何やってんだよ、ほら、手」
「⋯⋯元はと言えば⋯」
「⋯え?わっ!?」
その手を掴み、グイッと私の方へ引く
するとその小さな身体は私の上へと倒れてきた
「ちょ、何す⋯」
「元はと言えばコナン君のせいなんだからねっ!!?」
「⋯は?」
「コナン君があ、あんな事言うから⋯」
「あんな事って⋯?」
こ⋯こやつ⋯もうあの出来事忘れてるのかっ
かと言って改めて言うのも⋯
は、恥ずかしい⋯
「ぐっ⋯」
「⋯あ、もしかして安室さんの⋯」
「ぬああああ!!!」
それ以上は言わせないとばかりにコナン君の身体をホールドすると
グエッと声がしてホールドしている手をバンバン叩かれた
「く、苦し⋯って言うからそれどころじゃないんだよ!」
「それどころじゃないって?」
「早くあの事件の資料を探さねぇと!!」
「資料?」
コナン君をそっと離し、体を起こして椅子を元の位置に戻す
するとコナン君は書斎の奥にあるスペース⋯
本ではなくダンボールが置いてあるスペースへと駆けて行った
その後を追いかけてダンボールを漁っているコナン君の隣に屈み込む
「私も手伝おうか?」
「あぁ⋯頼む、10年前の事件の資料があったら俺に見せてくれないか?」
「りょーかいっ」
コナン君に言われた通り、ダンボールを開けて資料を探す
「⋯ところで何でその資料がいるの?」
「実はその10年前に起きた事件とそっくりな事件がおきて⋯
今朝その事件に遭遇した蘭達が、その写真を確認しに来るんだよ」
「達?」
「園子と世良だよ」
「え!?世良ちゃんも来るの!?」
昴さん居るんだけど⋯大丈夫かな⋯
「あぁ⋯それでさっき昴さんと母さんに説明して
母さんにはもう帰って貰ったんだ」
「え、そうなの?」
有希子さん今日泊まる気満々だったから⋯
凄い文句言ってただろうな⋯
思わず苦笑いをしていると
「あっ、桜さんにコナン君、ここに居たんだ」
「蘭ちゃん!!⋯に、園子ちゃん世良ちゃん!」
書斎の扉が開いて蘭ちゃん達が入ってきた
3人に近寄ろうとすると
世良ちゃんが驚いた顔をして近寄ってきた
「ちょ⋯何で桜ちゃんがここに!?」
「あれ?言ってなかったっけ?
私、ここで居候させてもらってるの」
「居候⋯?」
そっか⋯そういえば世良ちゃんには詳しい事話してなかったな⋯
苦笑いして、世良ちゃんに簡単に事の経緯を説明する
「通り魔⋯記憶喪失⋯」
「あはは⋯だから住む場所が無くて困ってたんだけど⋯
ここに居候させて貰える事になって⋯わっ!?」
気づけば世良ちゃんに正面から抱きしめられていた
「桜ちゃん⋯君は1人じゃない⋯ボクは君の味方だ⋯
辛い事とかあったら何でも言ってくれ
何があっても直ぐに駆けつけるからっ⋯」
「世良ちゃん⋯ありがとう⋯」
おずおずとその背中に手を伸ばし
ぎゅっと服を掴む
すると世良ちゃんの私を抱きしめる力が少しだけ強くなった気がした
「あと⋯聞きたい事があるんだけどさ」
「ん?」
「あの昴って人と⋯
恋人関係ではないんだよな!?」
予想外の言葉に目を点にし、声を上げた
「⋯はぁ!?んなわけないないない!」
「そっか⋯よかった⋯」
「?」
世良ちゃん⋯
お兄ちゃんとられると思ったのかな⋯
あれ?でも今の段階じゃ昴さんがお兄ちゃんって分かってないんじゃ⋯
なんでだろ
「イチャイチャしてる所悪いけどさ〜」
「もしかして桜さんも探すの手伝ってくれてたの?」
「あ、うんっ」
「私達も探すの手伝おうか?」
「大丈夫!もう見つかりそうだから⋯
キッチンで紅茶でも飲んでれば?持ってくからさ!」
「私もいるから大丈夫だよっ」
「そ、そーお?
じゃあ待ってるね!」
世良ちゃんは私の頭を撫でた後
蘭ちゃん達と一緒に書斎を出て行った
それを確認して、コナン君がため息をつく
「ったく⋯」
「昴さん大丈夫かな⋯」
「さっき説明はしたから大丈夫だとは思うけど⋯
それより写真探さねぇとな⋯ん?
⋯ねぇ、桜さん」
また資料を探し出そうとしたコナン君が
ふと私を呼んだ
「?どうしたの?」
「これ⋯」
コナン君の隣に行くと、コナン君は何も無い所を触っていて⋯
その時、カードの気配がして声を漏らす
「あれ⋯」
「ここだけ⋯何も無いはずなのに⋯『触れる』んだ
これ、カード?」
「⋯うん、カードの気配がするし⋯このカードも⋯知ってる」
一応チラリと扉を確認してから胸元から夢の鍵を取り出した
「『夢の力を秘めし鍵よ
真の力を我の前に示せ!
契約の元桜が命じる
封印解除(レリーズ)!』
⋯コナン君ちょっと離れててね」
「うん、」
コナン君が離れた事を確認し杖を構える
「『主なき者よ
夢の杖のもと我の力となれ!
固着(セキュア)!』」
結晶の中から出てきたのは
透明なカーテンのようなイラストのカードだった
「透過⋯ルシッド⋯」
「あ!今ので出てきたダンボールの中にあったぜ!資料!」
「え、本当?」
コナン君は中の資料を確認した後書斎を出て行こうとした
けれど着いて行こうとしなかった私に疑問に思ったのか立ち止まる
「桜さん来ないの?」
「⋯あ⋯さっきまで読んでた本、戻してから行くよ」
「そっか、先に行ってるね」
「はーい」
コナン君が出ていき、扉が閉まった後
ため息をつく
手元のカードを見て⋯胸元の鍵を握りしめた
⋯⋯私が知ってるカードは⋯ここまでだ
これから先のカードは⋯何があるか分からない
椅子に腰掛け、背もたれに背を預けて
上を仰ぎ見る
「⋯⋯」
これから先⋯どんなカードが出てくるか分からないから⋯
コナン君や昴さん⋯周りの人達を傷つけないように気をつけなくちゃ⋯
それに⋯
もし⋯安室さんが私について探りを入れてくるなら⋯
今一緒にいたら
赤井さんが危ない⋯
「⋯そろそろ⋯潮時かもしれないな⋯」
この場所があまりにも居心地が良すぎて⋯
甘えていたけれど
ここを⋯出て行く時が来たのかもしれない
けれど⋯
『⋯キミの居場所はここにある』
そう言ってくれた赤井さんの傍を離れるのは⋯
「⋯寂しい、な⋯」
自嘲して本を手に取り、本棚に戻すと
書斎を後にした