12.記録
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ジー⋯
「っ!!」
バッと後ろを振り返ってもそこには何もなくて⋯
けれどカードの気配は微かに感じてジッと音の聞こえた方を見つめる
「桜さんどうかしたの?」
「あ⋯ごめん、なんでもないよ」
今日は世良ちゃんと会う約束の日
せっかくなので蘭ちゃんと園子ちゃんも一緒に出掛けることになり
今は3人、カフェで世良ちゃんを待っている
「来る途中もそうやってたけど⋯何かあるの?」
「あ⋯それは⋯えっと⋯」
多分カードの事だから何とも言えずに口ごもると
「やっほー!」
「世良さんっ」
世良ちゃんがやってきて私の隣に座った
「こんにちは世良ちゃんっ」
「こんにちはっ!桜ちゃんとまた会えて嬉しいな」
「えへへ⋯私も世良ちゃんと会えて嬉しいっ」
「「⋯⋯」」
「あ、これこの間のハンカチ⋯あの時は本当にありがとうね」
「こちらこそわざわざありがとう
⋯って、あれ?この紙袋は⋯」
「あ⋯それほんの気持ちなんだけど⋯
クッキー焼いてきたの
世良ちゃん嫌いじゃなかったら貰ってほしいなって思って⋯
甘いものとか大丈夫?」
「もちろんっ!!桜ちゃんの手作りなら喜んで食べるよっ」
「本当っ!?良かった〜」
「⋯⋯あのー⋯」
「⋯ちょっと2人共」
「「ん?」」
「私達の存在忘れてない?」
「「あ⋯」」
「ご、ごめんなさい⋯」
「いや、別にいいんだけどさ〜」
「桜さんいつの間に世良さんとそんなに仲良くなったの?」
「しかもお互いちゃん付けで呼び合っちゃったりしてさっ」
「そ⋯それは⋯」
「アドレス交換した後からちょくちょく連絡はしていたんだ
それでお互い名前で呼ぼうって話になってね
本当はボクも下の名前で呼んでほしかったんだけど⋯」
「ま⋯真純ちゃんは⋯やっぱまだ照れるな⋯」
少し頬が熱くなるのを感じて笑うと
横から抱きしめられた
「桜ちゃん可愛いな〜っ」
「そんなっ世良ちゃんの方が可愛いくてかっこよくて素敵だよっ」
隣の可愛くて暖かな存在につい頬がだらしなく緩む
ああ⋯私、幸せだ⋯
「⋯まるでカップルみたいね⋯」
「⋯そうね⋯」
「ところで!!さっきの話の続きなんだけど⋯」
「さっき?」
「桜さんの変な行動よ!!」
「あ〜⋯あれか⋯」
「変な行動?」
世良ちゃんは飲み物を飲みながら園子ちゃんにそう聞き返した
うーん⋯あんまり大事にしたくないんだけどなぁ⋯
「それが桜さん来る前から挙動不審で⋯」
「え、私そんな挙動不審だった?」
「時々いきなり後ろを振り向くの
桜さんに聞いても何でもないって言うだけで教えてくれないし⋯」
ジトリと蘭ちゃんから見つめられて
苦笑いをする
「いや⋯本当に大した事じゃないから⋯」
「⋯それってボクにも言えない事?」
「世良ちゃん⋯?」
「ボクは桜ちゃんが困ってるなら力になりたい
それともあの時痴漢を逃がしたような奴じゃ頼りない?」
「そんな訳ないでしょ!!世良ちゃんが頼りない訳ないよっ!!」
その発言に食いつくと
世良ちゃんは私の顎に手を当てて、指の腹で私の頬をスっと撫でた
「じゃあ⋯話してくれるよね⋯?」
「は⋯はいっ⋯」
「桜さん顔蕩けてる⋯」
「なんだろうこの敗北感⋯」
「えっと⋯その⋯最近誰かに見られてる気がするの
いや、見られてるって言うか⋯
何かビデオで撮影する時みたいなジーッって音がたまに聞こえて⋯」
「「「ストーカー!?」」」
「桜ちゃんを怖い目に合わせるなんて⋯許さないっ」
拳をグッと握って目を鋭くさせた世良ちゃんをどうどうと宥める
「いや、まぁ私の勘違いかもしれないし⋯」
「それで何かあったらどうするのよっ」
「大丈夫だって、よく考えてよ?
私にストーカーしようなんて思う物好きいると思う?」
「⋯あのねぇ⋯桜さん自分を卑下するけど⋯」
「桜さん可愛いんだよ!?もっと自覚して!!」
突然蘭ちゃんが机をバンッと叩き立ち上がり
「ぉ⋯ぉぅ⋯」
その勢いに押されて少し仰け反ってしまった
「桜さん優しくて可愛いくて料理もできて⋯
すっっごく素敵な女性なんだからっ」
「いや、その言葉そっくりそのまま蘭ちゃんに返すよ⋯」
「しかも梓さん言ってたよ!?
桜さんが来てから男性客が増えたって!!」
「いやいや〜それは梓ちゃんのファンでしょ〜
私目当てで来る人なんて⋯
あ、梅子ちゃんと田沼のおじいちゃんぐらいかなぁ〜」
「くっ⋯」
「⋯蘭、気持ちは分かるけど負けちゃ駄目よ」
「⋯まぁ桜ちゃん可愛いし
とても24歳には見えないよな」
「世良さんもそう思うでしょ!?」
「うんっ」
「えー⋯」
⋯3人共眼科に行ったほうがいいよ⋯
「それこそストーカーなら蘭のおじ様に頼んだらいいんじゃない?」
「えぇ?⋯お父さん⋯?
お父さん今競馬場に行ってるから直ぐに連絡取れないと思う⋯」
「それかボクが桜ちゃんの護衛してもいいけどねっ」
「え、なにそれ最高⋯じゃなくて、
本当に大丈夫だから⋯」
「そうだ!!それこそあのポアロで働いている安室さんに頼んでみるのはどう?」
「んぐっ!!!?」
飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになり
軽く咳き込む
「ゲホッ、ゴホッ⋯」
「安室さん?」
「誰それ」
「最近ポアロで働きだした探偵さんで
今お父さんの弟子になってるの」
「えぇ!?おじ様の弟子!?」
「へぇ⋯毛利探偵のねぇ⋯」
「ねっ?桜さんっ」
「ウン⋯デモ、アムロサン二ワルイシ⋯」
「そんな事ないって!!早速行こうよ!!」
立ち上がった蘭ちゃんを慌てて止めようとしたら
ふとスマホの着信音が響いた
「あ、ボクだ⋯ちょっと待っててね」
世良ちゃんは私達から離れると電話を取った
「⋯マ?⋯⋯ん
⋯⋯いや⋯」
距離が空いてる為話し声は微かにしか聞こえないけど
⋯なんとなく、その電話の相手が分かってしまった
「えぇ!?わ、分かった!!」
世良ちゃんは通話を切ると申し訳なさそうに私達の方へやってきた
「ご⋯ごめん急用ができちゃって⋯すぐ帰らないと行けないんだ」
「えええ!?」
そう聞いて
1番落胆の声をあげたのは私だった
だって⋯せっかく世良ちゃんと出掛ける事ができると思ったのに⋯
「世良ちゃん⋯」
「ご、ごめんね、桜ちゃん
この埋め合わせはまた今度するから⋯」
「また⋯一緒に出掛けてくれる?」
「もちろんっ」
「やった!!約束ねっ」
「「⋯本当にカップルみたいね」」
それからカフェを出た後、世良ちゃんに手を振って別れ
「さっ!どこに行こうか?」
振り返りながら蘭ちゃん達にそう言えば
ガシリと右手を蘭ちゃんに
左手を園子ちゃんに掴まれた
「⋯⋯え?」
「何言ってるのっ!今からポアロに行くのっ」
「い、いやでも私2人とデートしたい⋯」
「そんなのいつでもできるでしょっ
それに蘭の情報じゃその安室って人イケメンらしいじゃないっ!!
私も会いたいから行きましょ!!」
「え、その⋯いやあああああ!!」
私はそのまま2人に引きずられ
結局ポアロへと行く事になった
「⋯⋯って、訳なんです」
「なるほど⋯ビデオの撮影音ですか⋯」
現在、ポアロのカウンターに座りアムサンドを食べながら
蘭ちゃん達が安室さんに相談するのを他人事のように聞いてきた
しかしアムサンド本当に美味い⋯
「だから桜さんのストーカーがいるんじゃないかって心配になって⋯
それで安室さんに相談にきたんです」
「ほら、桜さん可愛いでしょ?」
「確かにそうですね⋯」
「っ!!」
ガリっ
「〜〜っ⋯」
園子ちゃんの言葉に同意をした安室さんに動揺して
思わず舌も一緒に噛んでしまい悶絶する
いっ⋯痛い⋯
いやいやいや、待て、自分、落ち着け
安室さんは優しいから私を傷つけないように同意しただけだ
そうだ、そうだ、
勘違いするな、桜
決してドキッとしたりしてないから!
これはちょっとした動悸だから!
「うーん⋯それにしても気になりますね⋯」
「え?」
「皆さんも動画を撮る事があると思いますけど
携帯電話はもちろん
最近のビデオ撮影では撮影時の音は殆ど出ないんですよ」
「あ⋯そう言われれば確かに⋯」
「昔のビデオは結構音がするものもありましたが⋯
仮に桜さんをストーカーするとして
何故音が出るようなビデオで撮影するのかが不思議でして⋯」
「確かに⋯普通バレたくないから音が出ないビデオで撮影するよね?」
「それかよっぽどお金がなくて古いビデオしかないとか⋯?」
「⋯桜さん、
その音が聞こえる時はどんな時とか覚えていますか?」
安室さんにそう聞かれ、飲んでいたコーヒーを一旦ソーサーに置いた
「いや⋯あの⋯音が聞こえるのは不定期で⋯
買い物していた時だったり、こうやって人と話して⋯⋯っ!!」
その時、今まで微かだったカードの気配がハッキリと感じられて
思わずガタリと椅子から立ち上がった
「桜さん?」
「どうしたの?」
「あ⋯いや⋯」
皆の視線を感じハッとなって言い訳を考えていると
「っ!!」
その気配が
動きだした
「ご、ごめん!!私急用ができた!!」
置いていたサコッシュを引っ掴み
慌ててポアロを出る
「⋯こっちっ⋯」
走って気配の方を辿ると気配は路地裏の方からしていて
「いた!!」
路地裏に入ってすぐ、キラキラとしたモノがそこにあり
胸元から夢の鍵を取り出した
「『夢の力を秘めし鍵よ
真の力を我の前に示せ!
契約の元桜が命じる
封印解除(レリーズ)!』」
杖を握りしめ
キラキラ光っているモノに杖を向ける
「『主なき者よ
夢の杖のもと我の力となれ!
固着(セキュア)!』」
するとそのキラキラしたモノが結晶となり
それが弾けて中からカードがでてきた
そのカードにはビデオの様なイラストが描かれていて⋯
「記録⋯レコード⋯」
やっぱりこのカードだったんだ⋯
少しだけ⋯ほんの少しだけカードじゃない可能性を考えていた為
ホッと安堵のため息をついてカードをバッグに入れたら
「⋯桜さん、」
「ひゃっ!?」
いきなり後ろから声をかけられて
慌てて振り返れば
「あ⋯安室、さん⋯」
そこには安室さんが立っていた
「なな、なんでここに⋯」
「桜さんが心配でしたので着いてきたんです」
「そ⋯そう、ですか⋯でも早くポアロに戻らないと⋯
い、今マスター1人ですよ?」
「それはそうですが⋯1つ聞いてもいいですか?」
真剣な顔をした安室さんにゴクリと息を呑む
ま⋯まさか⋯今の⋯
見られてた⋯?
「⋯その手に持ってる杖は何ですか?」
「⋯え?」
安室さんの視線を辿っていけば
それは夢の杖で⋯
ああああっ!!戻すの忘れてたぁぁぁっ!!
「こ⋯これは⋯その⋯えっと⋯」
やばい、どうしよう、どうしよう⋯
落ち着け、落ち着くんだ桜
安室さんがこの杖について聞いてきたって事は⋯
多分、封印する所は見てないはず
見ていたらもっと今の出来事は何だって聞いてくるだろうし⋯
だとしたら上手く誤魔化せばなんとかなる⋯かもっ⋯
「こ、これは⋯私の好きなアニメに出てくる⋯杖で⋯」
「⋯桜さんそういう趣味があるんですね」
ぐっ⋯いい歳してアニメの杖持ってるなんて⋯
は、恥ずかしい⋯
けど否定したら怪しくなっちゃう⋯
「アハハ⋯お恥ずかしながら⋯」
苦笑いすると安室さんは一瞬少し考えるような仕草をした後微笑んだ
「⋯でも桜さんに何もなくて良かったです」
「あはは⋯蘭ちゃんも園子ちゃんも心配性で⋯
私なんかストーカーする人いないでしょうに⋯」
「そんな事ありませんよ」
「⋯え」
ふと安室さんの顔を見ると
彼はニコリと笑いながら言った
「桜さんは可愛いんですから⋯
もっと気をつけた方がいいですよ」
「っ⋯⋯」
その言葉にカッと顔が熱くなる
「ではそろそろ戻りましょうか?
蘭さん達も心配してますよ」
「い⋯や⋯あの⋯私っ、本当に用事あるんで!!
さ、さよならっ!!」
こっちに近づいてこようとした安室さんから後ずさって距離をとり
そのまま走って路地裏を駆け抜けた
「うわあああっ⋯なんだ、なんだ、今のっ⋯」
心臓がバクバクと鳴り
走っている途中で杖を鍵に戻し、そのまま胸元を握りしめる
安室さん不意打ちであんな事言うのやめてほしい⋯
これじゃこっちの心臓が持たない
ある程度走った所で壁に手をついて息を整える
「⋯はぁ⋯」
安室さんの事を思い出した今
安室さんは名探偵コナンに出てくる登場人物の中で
一番好きな『キャラクター』だった人
今はもうなるべく『キャラクター』としては見ないように気をつけてるけど⋯
でも元々ファンだったし⋯
そりゃそんな憧れの人にあんな事言われたら誰だって照れるよな⋯
そう思ってパタパタと手で熱くなった顔を扇いだ
それから蘭ちゃんから鬼電があって
2人から怒られたのは言うまでもない⋯