10.迷宮の十字路
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「え⋯?京都?」
カウンターに座っている蘭ちゃんにオレンジジュースを出せば
突然蘭ちゃんから京都に行った事はあるかと言われた
「うん、この間お父さんの所に京都のお寺から依頼があって⋯
次の連休に京都に行く事になったの」
「へぇ〜⋯京都かぁ⋯」
京都と言えば思い出すのはあの2人で⋯
まぁ京都じゃなくて本当は大阪だけど⋯
いつか会ってみたいなぁ⋯
「だから桜さん京都に行った事あるかな〜って思って⋯
やっぱり思い出せない?」
「え?んと⋯うーん⋯」
元いた世界で京都は修学旅行で1度行った事があるため、曖昧な返事をすると
蘭ちゃんが顔を輝かせた
「それって行った事があるって事じゃない!?」
「え⋯うーん⋯多分⋯
まぁ詳しくは思い出せないんだけどね〜」
元の世界とこの世界の違いが分からないから下手な事は言えない⋯
そう思って蘭ちゃんにそう言えば
ガシッ!!
「へ⋯」
不意に右手を握られた
「じゃあ一緒に行こうよ!!
京都!!」
「え⋯えぇ!?」
「実際に行ったら色々思い出すかもしれないし⋯ねっ!?」
「で⋯でも私仕事あるし⋯」
「あ⋯そっか⋯そうだよね⋯」
途端にしょんぼりとした蘭ちゃんに密かに萌えていると
「いいじゃないか、行ってくるといいよ」
「マスター!!」
隣でコーヒーをいれていたマスターが微笑みながらそう言った
「で、でもマスターと梓ちゃんに迷惑をかけるわけには⋯」
「迷惑なんて思わないよ
桜ちゃんの記憶が戻る手助けになるなら喜んで協力するさ
梓ちゃんには僕から言っておくし⋯
せっかくの機会だ、行ってきなさい」
「マスター⋯」
その言葉はありがたいけれど罪悪感がひしひしと募っていく
けれどそこまで言ってくれているマスターの言葉を無下にするわけにもいかず
私は渋々頷いた
数日後ーー⋯
「京都だあああああ!!」
「やっぱり京都はあたし達日本人の故郷よね!!」
「よねーっ!!」
「⋯桜さん凄いノリノリ⋯」
私は新幹線で小五郎さんと蘭ちゃん、コナン君と園子ちゃんと一緒に京都に来ていた
京都に来るのは修学旅行ぶりなので正直めちゃくちゃ楽しみで⋯
行きたい所や買いたい物リストを書いた紙を眺めてニヤニヤしていると
小五郎さんから一喝された
「いいか!特別に連れて来てやったんだから
仕事の邪魔すんじゃねーぞ!!」
「「「「はぁい!!」」」」
京都旅行⋯楽しみっ!!
その後、タクシーで依頼人がいる山能寺というお寺に着いて
その建物の中に入るとそこには数名の男の人達がいた
「あぁ!!毛利さん!!」
するとこちらに気づいた僧侶の恰好をした男の人が近づいてきて
小五郎さんと握手をする
「遠いとこ、ようおいでくださいました!
私、お電話を差し上げた竜円です!」
それに続くように数名の男の人がこちらにきて
竜円さんはまず横に居る僧侶の恰好をした髭の生えた優しそうなおじいさんを紹介した
「紹介します、住職の円海です」
円海さんは手を合わせて軽く会釈をした
それを見て私も軽く会釈をする
「こちらの3人はうちの檀家の方達です」
まず最初に紹介されたのは紫色のスーツを来た小太りの男性
「桜正造さん
寺町通で古美術店を経営してはります」
「アンタはんがあの有名な毛利小五郎はんか⋯」
「ん?あぁ〜いやぁそんなに有名っスかぁ!?」
嬉しそうに反応した小五郎さんに思わず苦笑いをした
「お隣が能の水尾流の若き宗家、水尾春太郎さん」
次に紹介されたのは青い着物をきた颯然とした男の人
「そして古書店をやってはる、西条大河さん」
最後に紹介されたのは眼鏡をかけた温厚そうな雰囲気の男性だった
「よろしゅう頼んます」
「まぁ、檀家と言うより剣道仲間ですなぁ⋯」
住職の言葉に小五郎さんが関心した様に5人を見渡した
「ほぉ!!皆さん剣道を⋯それでご住職もかくしゃくとしてらっしゃるんスなぁ⋯
ところでこのお寺には12年に1度だけ開帳される秘仏があるそうですな」
「はい、御本尊の薬師如来様が⋯」
「明明後日から一般公開ですよね?
私達それも楽しみにしてきたんです」
「それはそれは⋯薬師如来様も喜ばれはる事でしょう⋯」
蘭ちゃんに微笑みながらそう言った住職を
何故か竜円さんが何か言いたげに横目で見ていた
「⋯?」
その理由を知ったのは荷物を部屋に置いた後
「何ですって!?御本尊が盗まれたぁ!?」
「はい⋯もう8年前の事になります⋯」
竜円さんが実際に仏像を見せてくれると言われ本堂に行けば
その衝撃の事実を聞かされ、実際にその扉を開いたら
そこにあったのは2体の仏像だった
「向かって右が日光菩薩像で
向かって左が月光菩薩像です⋯
けど、中央に居てはるはずの薬師如来様が賊に⋯
私は直ぐに警察に通報しましょうと言うたんですが⋯
住職に止められまして⋯
『⋯縁があったらまた戻って来ることがあるかもしれん』
⋯と言われてまして⋯」
「んな悠長なぁ⋯」
その後場所を移動して、
客間で竜円さんから今回の依頼内容を改めて聞かされた
「そして8年の歳月が流れ⋯
ほんの5日前、寺の郵便受けにこれが」
「⋯切手は無し⋯差出人の名前も無しか⋯」
竜円さんが小五郎さんに渡したのは何の変哲もない白い封筒
それを開けば2枚の紙が入っていた
「『この絵の謎を解けば
仏像の在り処が判る』」
1枚目にはそう書かれていて⋯
2枚目には⋯
「何だこの絵は!?」
仏像の写真と
雛壇のような物に様々な絵が描かれてある紙
その絵を見た瞬間
「っ⋯」
ズキリと頭が痛くなった
「うーん⋯
何なんだよこの絵は一体⋯」
「1番上の5段目に描かれているのは
セミと天狗と金魚だね⋯」
「その下の4段目にニワトリと⋯ドジョウかしら?」
「黄色いドジョウなんて気持ち悪ーい!」
「この点みたいなのは何だろう⋯?」
「ただのシミでしょ?」
園子ちゃん⋯ただのシミには無理があるんじゃ⋯
にしても⋯さっきから頭の痛みがとれない⋯
これも⋯『知ってる』⋯のかな⋯?
「3段目と2段目の間に⋯スミレと天狗と⋯富士山?」
「ねぇ、横にドングリもあるよ!!」
訳の分からない暗号に蘭ちゃんが少し不安そうに小五郎さんを見つめた
「⋯ねぇ、お父さん
明明後日までに見つけられるの?」
「し、心配すんな!!
こんな絵、俺様にかかりゃ謎でも何でもねぇよ!!」
小五郎さんはそう言いながらも、焦ったように汗を浮かべながら食い入るように絵を見ていた
⋯大丈夫かなぁ⋯
「ねぇ!!仏像探しはプロに任せて、私達は京都見物しようよ!!」
「あぁ、そうしろ、そうしろ!!
オマエ達がいても邪魔なだけだ!!」
「実は和葉ちゃんに連絡してあって
明日京都を案内してもらうことになってるんだ!
⋯ただ、服部君は用事があって来られないんだって⋯」
「和葉ちゃん⋯服部君?」
聞き覚えのある名前に反応すると
蘭ちゃんはその2人の説明をしてくれた
「あ、桜さんは知らないよね
実は大阪に服部平次君って新一と同じ高校生探偵をやってる子がいるの」
「⋯へぇ⋯」
「和葉ちゃんはその幼なじみでね、まぁ蘭と新一君みたいな関係ね」
「ちょ、それどういう意味よっ」
「そのまんまの意味よ」
「なるほど⋯幼なじみでカップルと⋯」
「「ち、違うから!!」」
私の言葉に反応したのは蘭ちゃんとコナン君だった
「⋯って、何でガキンチョまで反応すんのよ」
「え!?いや⋯あはは⋯な、何でもないよ⋯」
さすが夫婦⋯息ぴったりですわ⋯
にしても、そっか⋯和葉ちゃんと観光かぁ⋯
会えるの楽しみだぁ⋯
そんな事を考えてニヤニヤしていると
「もう⋯あ、コナン君も一緒に観光行くでしょ?」
「あ、僕はいいよ⋯近所の子達と川へ釣りに行く約束を⋯」
⋯この子単独で調査するつもりだな⋯
にしても近所の子達と釣りって⋯いくら何でも友達できるの早いって
もうちょっと良い言い訳はなかったのか⋯
「あら、もうお友達が?でも気をつけるのよ?」
「うん!大丈夫だよ!桜お姉さんも一緒に行くから!!」
そのコナン君の言葉にお茶を飲もうとしていた手を止めた
「⋯え、」
ん?おかしいな⋯幻聴かな⋯?
「えぇ!?桜さん一緒に観光行かないの!?」
「え!?いや⋯私は⋯」
園子ちゃんから問い詰めるようにそう言われて
否定しようとしたら横からクイクイと服の袖を引っ張られた
その手の正体はコナン君で⋯
「桜お姉さん僕と一緒に行ってくれるって言ったよね?」
「え!?いやでも⋯」
コナン君から1ミリたりともそんな事を聞いた覚えはない
しかも私は蘭ちゃん達と観光という名のデートをする気まんまんなので拒否しようと思ったら
「桜お姉ちゃん⋯一緒に行ってくれないの⋯?」
「行くに決まってんでしょ!!」
目をうるめて、可愛い声を出したコナン君に
気づいたら全力で首を縦に振っていた