コンビニの袋が、審神者の手から心許なく垂れ下がっている。
「あんた、酔いすぎだ」
「えー?そうですか?」
「……その返事が、何よりの証拠だ」
大典太がベンチの上の雪を払い落とす。審神者は小さく会釈をして、座り込んだ。
「つべた」
金曜の夜は日付を変えてもまだ続く。終電後。まだ賑やかな繁華街を逸れたところの冬の公園で、2人はなかなか来ないタクシーを待っていた。
スマホを見る大典太。
「……やっと繋がった。20分、かかるそうだ」
「ん。ありがとう、ございます」
審神者は膝の上に袋を乗せて、雪の上に立ったままの大典太を見上げている。
「……おい、何か……食ったらどうだ?酔いには糖分を取るのがいいと聞くが」
「へへ、肝臓には働いてもらわないとですね」
華金なのにお気の毒に、などと呟きながら、審神者はガサゴソと袋を漁る。
「……肉まん。半分こしましょ」
そう言いながら審神者は肉まんを半分に割る。
「はい、大典太さんの」
……半分なのか、これは。差し出された肉まんは3/5を占める。審神者の片手には、ほぼ肉まんの中身がない残り。"肉なしの肉まん"など、ただの"まん"じゃないか、などと馬鹿みたいなことを思いながら、大典太は審神者に言う。
「……あんたの分、具材が全然入ってないが」
「皮が好きなんです、優しい味だから」
「……わからなくはないが。だが、あんた、もっと滋養をつけるために肉を食え。俺は病魔を払うことはできるが……ならないのが1番だぞ」
「……わかりました」
そういって、大典太はほぼ皮のかけらのような方を審神者から受け取った。ほんの少し、肉まんの暖かさに混ざる、冷えた温度。
大典太は、目線を落とした。こいつはちゃんと、冬を越えられるのだろうか。
「……あつ。ベロやけどしたかも」
「落ち着いて食え」
「雪で冷やそ」
「……落ち着け」
大典太は、指先でつまんでいる皮だけの肉まんを見つめた。ふわふわで、白くて、ちょっとだけ肉の味が移った、白い生地。それを口の中に放り込むようにして、噛んですぐ飲み込んだ。
「……なぁ。あんた、どこまで行く」
「え?」
「タクシー」
「どっかで、テキトーに降ります、よ」
「……適当、じゃなかったら、どうする」
審神者は肉まんをもぐもぐしながら顔を上げる。ほんのわずかだが、妙に苦しげな目で、審神者を見つめる大典太。
その息は、少し白さを増していた。
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