一歩千金
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※角都と出逢って数年後、鬼鮫が暁に加入して直ぐのお話→角都vsナルト後
※ifヒロインちゃん死亡エンド
※短め
「お久し振りです、鬼鮫さん…まさか、こんな形で貴方ともう一度お会いする時が来るとは思ってもいませんでしたよ」
そう言って素顔を隠していた面を外し穏やかに微笑む女は、嘗てともに戦場を駆けていた頃よりもずっと美しく成長していたーーー
「ーーーしかし、驚きましたねぇ…我々には、貴女は任務中に殉職したと聞かされていたのでね」
「成程…任務中に殉死した、と言うのが表向きの体裁でしたか」
「貴女はまだお若かったとは言え、里有数の手練れでしたので真逆とは思っていましたが…その物言いですと、やはり里の上役達が動いていたようですねぇ」
此の度暁に身を寄せる事になった干柿鬼鮫と言う男は十六夜と故郷を共にし、嘗てともに戦場に立っていた同僚だった。所属していた部隊こそ違ってはいたが任務で組む事も多々あり、血継限界の血統故に仲間内からも距離を置かれていた十六夜に対しても鬼鮫はその実力と人間性を認めておりそれなりに交友を深めた仲であった。
「何時かは里に捨てられる日が来ると、父が亡くなった後は覚悟していました…貴方は、こんな私にも随分と良くして下さった。だから、せめて貴方に感謝の気持ちとお別れの言葉は伝えておきたいと思って、自宅で貴方へ宛てた手紙を認めていた時に任務が入って…結局そのまま抜け忍になってしまったので、ずっと貴方にもう一度お会いしたいと願っておりました」
鬼鮫の隣に腰を下ろし、地平を眺めながら十六夜は組んだ両の掌をぎゅっと握り締めた。十六夜と同じ様に太陽の沈み掛けた地平を眺めていた鬼鮫はふっと息を吐くと、その容貌からは想像も付かない様な穏やかな声色で言葉を紡ぐ。
「そう思って頂けていたと言う事をお聞きしただけで十分ですよ…私にとっても貴女は掛け替えの無い友人、でした。血で煙るあの里で、光を見失わず歩み続けていたのは貴女だけだった…あの里も惜しい事をしましたねぇ。これ程の有望株を見す見す手放し、剰え、この様な犯罪者集団に明け渡すとは…」
「買い被り過ぎですよ…でも本当にあの時、角都様にこの命を拾って頂けて良かった。
鬼鮫さん…宜しければまた、お会い出来た際にはこうしてお話に付き合って頂けませんか?」
十六夜がそう口にし、微笑みを浮かべながら鬼鮫を見上げると、鬼鮫もまた口元に微笑みを浮かべて頷く。
「ええ、任務が無い時でしたら幾らでも」
「ありがとうございます」
「十六夜、何時まで油を売っている」
「!今参ります!…では鬼鮫さん、また」
「お気を付けて、」
背後から呼ばれた声に十六夜はパッと表情を明るくすると、鬼鮫に別れの言葉を述べて己の名を呼んだ男の元へと駆けて行く。鬼鮫は並んで歩く二人の後ろ姿を眩し気に見つめる。
「任務だ、ターゲットはお前の古巣の御仲間だ…足手纏いの様ならお前は連れて行かんが?」
「元よりあの里に未練などございません…私の居場所は角都様のお側のみ」
「ならば着いて来い…犬死だけはしてくれるなよ、」
「承知しております。十六夜の命は角都様の御命… 十六夜が死する時は、角都様にこの心の臓を差し出したその時でございますーーー…」
もしもあの時、救いの手を差し伸べたのが己であれば、物語の結末は変わっていたのだろうかーーー
『九尾の人柱力、並びにはたけカカシの手によって角都、角都の部下・十六夜の両名が死亡した。十六夜からお前は同郷で、交友関係があったと聞いていた…他のメンバーは余り接点が無かっただろうが、お前にだけは伝えておく』
角都と飛段が九尾の人柱力を追って火の国へ入った数日後、ペインに直々に呼び出された鬼鮫が受けたのは十六夜の訃報だった。
角都とツーマンセルを組んでいた飛段は奈良家の者によって生き埋めにされ、角都と十六夜の遺体は木ノ葉隠れの里に収容されたとの事。禁術を使役する角都、そして血継限界の血統である十六夜…その遺体は恐らく系統・病理解剖に掛けられる事になろうが、それでも最期の時を共にする事が出来るならばせめてもの救いだとペインは口にしていた。
ーーー鬼鮫は何時の日か隣に並び、共に見つめた景色の見える場所へとやって来た。そして懐を探り、十六夜が亡くなった数日後に己の元へとやって来た十六夜の口寄せ動物である白狼が己に託した手紙を取り出す。宛名のみ書かれた、真白の手紙。
「…こんな物を寄越す余力があったのなら、私の元へ帰って来て欲しかったものですね」
己が里抜けする以前、十六夜が殉職したと聞かされた時、もともとあった里への不信感が更に膨れ上がった。
十六夜は勤勉な忍だった。天賦の才があった訳でも無ければ、況してや霧隠れの里では忌み嫌われる血継限界の血統。決して彼女にとって恵まれた環境ではなかった。それでも彼女は只管に己の技を極め、忍として里の為に命を削っていた。
鬼鮫は、そんな十六夜を人知らず慕っていたのだ。霧隠れの忍でありながら、霧隠れの忍を己の手に掛ける。自身を殺し里の為に尽くし続け行き先を見失った己の足元を、己が定めた道を真っ直ぐに行く彼女は照らしてくれている様だった。
「十六夜さん、貴女は最期の最期で、幸せになれたんでしょうかねぇ…、」
そう呟いた鬼鮫が背後を振り向くと、穏やかに微笑む十六夜の姿が見えた気がした。
※ifヒロインちゃん死亡エンド
※短め
「お久し振りです、鬼鮫さん…まさか、こんな形で貴方ともう一度お会いする時が来るとは思ってもいませんでしたよ」
そう言って素顔を隠していた面を外し穏やかに微笑む女は、嘗てともに戦場を駆けていた頃よりもずっと美しく成長していたーーー
「ーーーしかし、驚きましたねぇ…我々には、貴女は任務中に殉職したと聞かされていたのでね」
「成程…任務中に殉死した、と言うのが表向きの体裁でしたか」
「貴女はまだお若かったとは言え、里有数の手練れでしたので真逆とは思っていましたが…その物言いですと、やはり里の上役達が動いていたようですねぇ」
此の度暁に身を寄せる事になった干柿鬼鮫と言う男は十六夜と故郷を共にし、嘗てともに戦場に立っていた同僚だった。所属していた部隊こそ違ってはいたが任務で組む事も多々あり、血継限界の血統故に仲間内からも距離を置かれていた十六夜に対しても鬼鮫はその実力と人間性を認めておりそれなりに交友を深めた仲であった。
「何時かは里に捨てられる日が来ると、父が亡くなった後は覚悟していました…貴方は、こんな私にも随分と良くして下さった。だから、せめて貴方に感謝の気持ちとお別れの言葉は伝えておきたいと思って、自宅で貴方へ宛てた手紙を認めていた時に任務が入って…結局そのまま抜け忍になってしまったので、ずっと貴方にもう一度お会いしたいと願っておりました」
鬼鮫の隣に腰を下ろし、地平を眺めながら十六夜は組んだ両の掌をぎゅっと握り締めた。十六夜と同じ様に太陽の沈み掛けた地平を眺めていた鬼鮫はふっと息を吐くと、その容貌からは想像も付かない様な穏やかな声色で言葉を紡ぐ。
「そう思って頂けていたと言う事をお聞きしただけで十分ですよ…私にとっても貴女は掛け替えの無い友人、でした。血で煙るあの里で、光を見失わず歩み続けていたのは貴女だけだった…あの里も惜しい事をしましたねぇ。これ程の有望株を見す見す手放し、剰え、この様な犯罪者集団に明け渡すとは…」
「買い被り過ぎですよ…でも本当にあの時、角都様にこの命を拾って頂けて良かった。
鬼鮫さん…宜しければまた、お会い出来た際にはこうしてお話に付き合って頂けませんか?」
十六夜がそう口にし、微笑みを浮かべながら鬼鮫を見上げると、鬼鮫もまた口元に微笑みを浮かべて頷く。
「ええ、任務が無い時でしたら幾らでも」
「ありがとうございます」
「十六夜、何時まで油を売っている」
「!今参ります!…では鬼鮫さん、また」
「お気を付けて、」
背後から呼ばれた声に十六夜はパッと表情を明るくすると、鬼鮫に別れの言葉を述べて己の名を呼んだ男の元へと駆けて行く。鬼鮫は並んで歩く二人の後ろ姿を眩し気に見つめる。
「任務だ、ターゲットはお前の古巣の御仲間だ…足手纏いの様ならお前は連れて行かんが?」
「元よりあの里に未練などございません…私の居場所は角都様のお側のみ」
「ならば着いて来い…犬死だけはしてくれるなよ、」
「承知しております。十六夜の命は角都様の御命… 十六夜が死する時は、角都様にこの心の臓を差し出したその時でございますーーー…」
もしもあの時、救いの手を差し伸べたのが己であれば、物語の結末は変わっていたのだろうかーーー
『九尾の人柱力、並びにはたけカカシの手によって角都、角都の部下・十六夜の両名が死亡した。十六夜からお前は同郷で、交友関係があったと聞いていた…他のメンバーは余り接点が無かっただろうが、お前にだけは伝えておく』
角都と飛段が九尾の人柱力を追って火の国へ入った数日後、ペインに直々に呼び出された鬼鮫が受けたのは十六夜の訃報だった。
角都とツーマンセルを組んでいた飛段は奈良家の者によって生き埋めにされ、角都と十六夜の遺体は木ノ葉隠れの里に収容されたとの事。禁術を使役する角都、そして血継限界の血統である十六夜…その遺体は恐らく系統・病理解剖に掛けられる事になろうが、それでも最期の時を共にする事が出来るならばせめてもの救いだとペインは口にしていた。
ーーー鬼鮫は何時の日か隣に並び、共に見つめた景色の見える場所へとやって来た。そして懐を探り、十六夜が亡くなった数日後に己の元へとやって来た十六夜の口寄せ動物である白狼が己に託した手紙を取り出す。宛名のみ書かれた、真白の手紙。
「…こんな物を寄越す余力があったのなら、私の元へ帰って来て欲しかったものですね」
己が里抜けする以前、十六夜が殉職したと聞かされた時、もともとあった里への不信感が更に膨れ上がった。
十六夜は勤勉な忍だった。天賦の才があった訳でも無ければ、況してや霧隠れの里では忌み嫌われる血継限界の血統。決して彼女にとって恵まれた環境ではなかった。それでも彼女は只管に己の技を極め、忍として里の為に命を削っていた。
鬼鮫は、そんな十六夜を人知らず慕っていたのだ。霧隠れの忍でありながら、霧隠れの忍を己の手に掛ける。自身を殺し里の為に尽くし続け行き先を見失った己の足元を、己が定めた道を真っ直ぐに行く彼女は照らしてくれている様だった。
「十六夜さん、貴女は最期の最期で、幸せになれたんでしょうかねぇ…、」
そう呟いた鬼鮫が背後を振り向くと、穏やかに微笑む十六夜の姿が見えた気がした。