008
ぬるい海が足首まで満ちていた。
僕は黒い花束を抱いていて、
遠くにぼんやりとした光が見えていた。
その光は、海に浮かぶ海月のようにも思えたし、
遠くに忘れた街のような気もした。
陽は昇らない、
月は満ちたまま、流れる星は海へは降らない。
抱いている花束は、誰かに渡すためのもの。
抱いていた花束は、誰かにもらったもの。
海に沈めても、波間に放っても、
いつのまにか抱いている。
「わたしを忘れて」
そう言って泣くくせに、目の前から消えないのは何故
「わたしは忘れた」
そう言って、僕の腕に収まるのは何故
「わたしを忘れた?」
君はそう言って、
薄く笑ってワンピースの裾を濡らした
僕はすぐに君を抱きしめなければと思った。
でも、腕の中に在るのは今も君でなく黒い花束なのだ。
僕は海へは沈めない。
鱗の皮膚も、内側にあるフローターも、スクリューも
君に出会うずっとずっと前に治すことを辞めたのに、
いつまでも壊れてはくれない。
忘れることも、ともに沈むことも出来ずに
もうずっとここに立っている。
ぬるい海は膝を濡らす事はなく、遠くの光も消えず
朝日も昇らない。月も欠けたりはしない。
「わたしを忘れないで」
僕が聞き逃した声を拾う前に
君の濡らしたワンピースに流星が触れた。
僕は黒い花束を抱いていて、
遠くにぼんやりとした光が見えていた。
その光は、海に浮かぶ海月のようにも思えたし、
遠くに忘れた街のような気もした。
陽は昇らない、
月は満ちたまま、流れる星は海へは降らない。
抱いている花束は、誰かに渡すためのもの。
抱いていた花束は、誰かにもらったもの。
海に沈めても、波間に放っても、
いつのまにか抱いている。
「わたしを忘れて」
そう言って泣くくせに、目の前から消えないのは何故
「わたしは忘れた」
そう言って、僕の腕に収まるのは何故
「わたしを忘れた?」
君はそう言って、
薄く笑ってワンピースの裾を濡らした
僕はすぐに君を抱きしめなければと思った。
でも、腕の中に在るのは今も君でなく黒い花束なのだ。
僕は海へは沈めない。
鱗の皮膚も、内側にあるフローターも、スクリューも
君に出会うずっとずっと前に治すことを辞めたのに、
いつまでも壊れてはくれない。
忘れることも、ともに沈むことも出来ずに
もうずっとここに立っている。
ぬるい海は膝を濡らす事はなく、遠くの光も消えず
朝日も昇らない。月も欠けたりはしない。
「わたしを忘れないで」
僕が聞き逃した声を拾う前に
君の濡らしたワンピースに流星が触れた。
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