004

ぬるい風に頬を撫でられ目が覚めた
窓の向こうはもうずっと茶色い平原だった。
遠くに岩が見えるが、あれらも近くで見たら山と形容する方が正しいくらい大きいんだろう。

「起きたか?」
身じろぎをした私に父が声をかける。
さっきの風は父が煙草を吸うために窓を少し開けたせいだった。

「あとどれくらい?」
別に興味も無かったが口からついた。

「もうすぐ着く、イワンが待ってる。」
後部座席で荷物が揺れる。

私にとっての家族は血のつながった父と、
距離の近い9人の他人で。

10年ぶりにその他人と一緒に暮らすことになった。
4歳の私は何も知らず、彼らの優しさを浴びていた。
いつのまにか離れて生きていたけれど、

(またこうして同じ時を過ごすんだ。)

私にとっては10年ぶり、たった4年の生活だったが
父や彼らにとっては途方もなく長く、終わらない生活の中の一瞬、そして瞬間なんだろう。

(人生ってそういうことの連続なのかも。)

生まれた時に双子のように、その後はずっと弟のように、今も赤ん坊のイワン。
私が生まれてからずっと年齢の変わらない父、
成長する私、老いる博士。

彼らと同じ時を感じる事は容易では無いけれど、
緊張と少しの楽しみを緩く抱きしめて、
未だ見ぬ我が家へ帰る、とある夏の日。

煙草の匂いと、揺れる荷物。
窓をめいっぱい開けて砂っぽい風を肺に溜める。
運転席の父が笑ったのを背中に感じる。

(わたし、いま少し楽しみかも。)
なんて、少し汗ばむ体に花が咲く。
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