紳士
いつのまにか見上げなければいけないほど背の高くなったひまわりを見上げる。
それでもまだ蕾で、黄色い花びらは見えなかった。
:
夏休みに入り、三連覇に向けて部活が熱が帯びて行く、
全員が一つの目標に向かうことの心強さと責任が信じられないほどの推進力を生む。
空は雲一つなく晴れていて、遠くで蝉が鳴いていた。
休憩中、タオルを頭にかけた仁王くんが
「今日は花、見に行かんのか」とこちらも見ずに話しかけてくる。言葉だけでは感情が読めない。
いつも休憩時間に抜け出して、花を見に行っていることをからかっているのか、ただ素直に質問なのか…
答えを探して黙っていたら、続けて
「さっき花部見かけたぜよ」とやっぱり感情の読めない声。
「水やりでしょうかね」と答えて、コートに戻る。
背後で仁王くんが「プリ」と呟いた。
:
毎日見上げていたひまわりは太陽に向かって咲く。
蕾が徐々に変化して、黄色い花びらが広がってゆく。
私も、自分の想いをはっきりと自覚する。
通りがかったフラワーショップに並ぶ小さなひまわりが目に入る。気づいた時には店内にいて、一輪だけラッピングしてもらう。
誰かに花を贈りたいと思ったのは初めてだった。
真っ直ぐに裏庭に向かう、肩のラインで切り揃えられた髪が風に揺れていて、綺麗な絵を見ているようだった。
声をかけると振り向いて微笑む彼女。
「これを、受け取ってくれますか?切り花は、好みに合うかわからないですけど…」
歯切れが悪くなってしまう、人を好きになるとはこう言うことなのか。こんなにも緊張して、常に相手のことを考えてしまう。
差し出した一輪のひまわりを彼女はふわりと受け取る。
「好きですよ」
真っ直ぐに私を見る2つの目は、吸い込まれそうなほど力強く、胸に抱えるひまわりが鮮やかだった。
「知ってますか、ひまわりの花言葉」
彼女がホースで水を撒きながら話す声は穏やかで、夏の日差しに溶けて耳に心地よい。
質問に私が答える前に彼女が続ける、
「元気、憧れ、あなただけを見つめる」
そう言う彼女の横顔を、私はいつまでも忘れないと思う。
この校舎裏はいつも通り2人だけだった。
見上げた視線の先で満開のひまわりだけが、それを知っていた。
それでもまだ蕾で、黄色い花びらは見えなかった。
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夏休みに入り、三連覇に向けて部活が熱が帯びて行く、
全員が一つの目標に向かうことの心強さと責任が信じられないほどの推進力を生む。
空は雲一つなく晴れていて、遠くで蝉が鳴いていた。
休憩中、タオルを頭にかけた仁王くんが
「今日は花、見に行かんのか」とこちらも見ずに話しかけてくる。言葉だけでは感情が読めない。
いつも休憩時間に抜け出して、花を見に行っていることをからかっているのか、ただ素直に質問なのか…
答えを探して黙っていたら、続けて
「さっき花部見かけたぜよ」とやっぱり感情の読めない声。
「水やりでしょうかね」と答えて、コートに戻る。
背後で仁王くんが「プリ」と呟いた。
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毎日見上げていたひまわりは太陽に向かって咲く。
蕾が徐々に変化して、黄色い花びらが広がってゆく。
私も、自分の想いをはっきりと自覚する。
通りがかったフラワーショップに並ぶ小さなひまわりが目に入る。気づいた時には店内にいて、一輪だけラッピングしてもらう。
誰かに花を贈りたいと思ったのは初めてだった。
真っ直ぐに裏庭に向かう、肩のラインで切り揃えられた髪が風に揺れていて、綺麗な絵を見ているようだった。
声をかけると振り向いて微笑む彼女。
「これを、受け取ってくれますか?切り花は、好みに合うかわからないですけど…」
歯切れが悪くなってしまう、人を好きになるとはこう言うことなのか。こんなにも緊張して、常に相手のことを考えてしまう。
差し出した一輪のひまわりを彼女はふわりと受け取る。
「好きですよ」
真っ直ぐに私を見る2つの目は、吸い込まれそうなほど力強く、胸に抱えるひまわりが鮮やかだった。
「知ってますか、ひまわりの花言葉」
彼女がホースで水を撒きながら話す声は穏やかで、夏の日差しに溶けて耳に心地よい。
質問に私が答える前に彼女が続ける、
「元気、憧れ、あなただけを見つめる」
そう言う彼女の横顔を、私はいつまでも忘れないと思う。
この校舎裏はいつも通り2人だけだった。
見上げた視線の先で満開のひまわりだけが、それを知っていた。
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