紳士
裏庭に見に行ったひまわりは腰の高さで、まだ蕾は固く結ばれていた。
その場に少し留まっても、彼女は現れなかった。
:
「柳生先輩何持ってんすか?」
「ん?これですか。トマトです、プチトマト。切原くんもいりますか?」
「いや、いらないっすけど…」
部室に来る前に寄った園芸部で採れたてだというプチトマトを少しもらった。赤くて少し固いそれはなぜか少し光っていて、宝石みたいだなと思った。
洗ってから一つ食べると、家の食卓に上がるトマトより皮が硬いけれど、不思議と甘かった。
(採れたてだからですかね)なんて考えていたら
「最近、柳生は花部と仲良いのう」
「仁王くん、花部ではなく、園芸部ですよ」
彼は話しかけてきた割に興味なさそうに襟足の毛をいじっている。
「ヒロシ、花とか野菜の話題増えたもんな〜」
と丸井くんがからかうように笑っている。
「そうですか?」
確かに園芸部の活動を知ってから植物に興味を持ったのは事実だ。
「ほぉ、無自覚か。大変じゃのう」
「大変?何がすか?」
「お子ちゃまはわからなくていーの」
などと口々に騒ぐチームメイトの言葉は耳には届いたが、脳には届かなかった。
:
私は自分でも気づいてないほど、園芸部や植物に関心を寄せていたのか。と不思議な気持ちを抱えたままラケットを振る。
ゴルフだけをしていた頃より、テニスを始めてからの方が楽しいことが多いように、植物を知ってからの日々も鮮やかで美しい。
そういう感性が自分にとって、とても良いものだと思う。
そう自覚してから見る花壇はいつもより美しく、
「ひまわり、もうすぐ黄色い花びらが見えるようになりますよ」という彼女の声が涼やかに聞こえた。
この胸の高鳴りは、きっと、ひまわりが咲くことだけが理由ではないと小さく思った。
その場に少し留まっても、彼女は現れなかった。
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「柳生先輩何持ってんすか?」
「ん?これですか。トマトです、プチトマト。切原くんもいりますか?」
「いや、いらないっすけど…」
部室に来る前に寄った園芸部で採れたてだというプチトマトを少しもらった。赤くて少し固いそれはなぜか少し光っていて、宝石みたいだなと思った。
洗ってから一つ食べると、家の食卓に上がるトマトより皮が硬いけれど、不思議と甘かった。
(採れたてだからですかね)なんて考えていたら
「最近、柳生は花部と仲良いのう」
「仁王くん、花部ではなく、園芸部ですよ」
彼は話しかけてきた割に興味なさそうに襟足の毛をいじっている。
「ヒロシ、花とか野菜の話題増えたもんな〜」
と丸井くんがからかうように笑っている。
「そうですか?」
確かに園芸部の活動を知ってから植物に興味を持ったのは事実だ。
「ほぉ、無自覚か。大変じゃのう」
「大変?何がすか?」
「お子ちゃまはわからなくていーの」
などと口々に騒ぐチームメイトの言葉は耳には届いたが、脳には届かなかった。
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私は自分でも気づいてないほど、園芸部や植物に関心を寄せていたのか。と不思議な気持ちを抱えたままラケットを振る。
ゴルフだけをしていた頃より、テニスを始めてからの方が楽しいことが多いように、植物を知ってからの日々も鮮やかで美しい。
そういう感性が自分にとって、とても良いものだと思う。
そう自覚してから見る花壇はいつもより美しく、
「ひまわり、もうすぐ黄色い花びらが見えるようになりますよ」という彼女の声が涼やかに聞こえた。
この胸の高鳴りは、きっと、ひまわりが咲くことだけが理由ではないと小さく思った。
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